難関資格の一つとされる税理士試験。大変難しいというのは、科目ごとの平均合格率が10%台であることからも容易に想像できるでしょう。また、科目合格制度というものがあり1つずつ合格したら5年?など色々な考えがよぎります。そこで、今回は税理士試験に最短で合格するには何年かかるのか?という視点で現役公認会計士が解説します。
税理士試験に最短で受かるには、まず税理士試験の概要を知る必要があります。税理士試験は様々な科目に合格しなければなりませんが、そもそも受験資格が存在します。
一番わかりやすいのは大学や短大等を卒業し、法律学または経済学を1科目以上履修した場合です。法学部や経済学部等を卒業していれば基本的には受験資格があります。また、3年生以上で法律学または経済学を履修し、62単位以上取得している人も対象となります。
では大学を卒業しなければ受験資格がないかというと、一定の資格試験に合格すれば受験資格が付与されます。日商簿記1級に合格するか、全経簿記試験検定上級に合格することで付与されます。また、会計に関する実務に2年以上従事したり、金融機関にて2年以上従事したり、税理士・弁護士・公認会計士業務の補助として2年間従事したりすると受験資格が付与されます。
税理士試験に最短で合格するためには、先ほどの受験資格が付与されていることを前提とします。付与されていない場合の最短は日商簿記1級もしくは全経上級試験に合格することが最短となりますが、ここではそれを除いたスタートと考えます。
まず、試験は1年に一度しかないため何科目受験するかをあらかじめ決めておく必要があります。一般的に同時に勉強すると効率の良い簿記論と財務諸表論を1年で合格するように持っていくことが基本となるでしょう。両者同時に合格できたのであれば、所得税もしくは法人税のような重い科目の勉強に専念することになるでしょう。晴れて合格できれば残り2科目は酒税など軽い科目にしてしまうか、一つは相続税や消費税など重い科目で残り一つを軽い科目にしてしまうかというところでしょうか。
これらをストレートに合格すれば、3年半程度で税理士試験に合格できるといえます。中には2年で全科目合格するというつわものもいますが、現実的には3年半程度で最短といえるでしょう。
先ほどのお話を聞くと、「早くて3年半もかかるなら受験やめようかな」という声も聞こえてきそうです。では税理士の人はみな5科目合格して登録しているのでしょうか。実は、大学院に入って科目を免除してもらっていることも多いのです。会計系の大学院に通い、税法に関する論文を書き、税法2科目免除してもらえれば残りは会計系2科目、税法1科目となります。うまく大学院の勉強と組み合わせれば、大学院に通う2年間のうちに簿記と財務諸表論に合格し、税法1科目合格すれば最短の2年間というのは達成できます。ただし、大学院でも論文を書くのにはとても時間を要するため、税理士試験に専念できるわけではないので、どちらかというと試験に合格できなかった時のための保険として考えている人も多いようです。
ここまでお話ししていてもやはり試験勉強は短いに越したことはありません。税理士試験のうち簿記論というのは日商簿記1級にプラスアルファされたくらいの内容ですので、事前に簿記1級を持っている人であればそこまで苦にはならないでしょう。その場合は簿記と財務諸表論に加えて簡単な税法も同時に受けられるかもしれません。ここで簡単な税法というのは、国税徴収法というようなマニアックな法律となります。例えば相続税法などでは450時間程は勉強時間が必要と言われているのに対して、国税徴収法は150時間程度と、圧倒的にボリュームが少ない科目なのです。もちろん、将来的に使いづらい科目ですので、税理士試験に最短で合格するのだと割り切ってしまうかどうかがポイントとなります。
これらの組み合わせで行けば最短合格の2年というのもあり得るかもしれませんが、それでも効率よくトップ10%に入るような勉強方法が必要であることは忘れてはいけません。
最短で税理士に合格するには、科目選びやその順序が大事となってきます。簿記も知らずに法人税法を勉強していてもチンプンカンプンとなってしまうでしょう。また、大学院に行く時間や費用も選択肢として入れられるのであれば受験する科目と組み合わせて考えることで最短のコースが作れるはずです。
しかし、どのコースを辿ったとしても、働きながらの受験では最短コースはほぼ難しいと考えてよいでしょう。どうしても早く税理士資格を取得したいのであれば会社を辞めて、受験勉強や大学院に行くなど環境を整えることがひとまず大事となってきます。