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30歳から税理士を目指すのは遅い?資格を活かして転職できる?

ヒュープロ編集部 川辺
30歳から税理士を目指すのは遅い?資格を活かして転職できる?

高校や大学に通ううちから税理士を目指す方が多い中で、30歳以上から税理士を目指して勉強しようとするのは遅いと感じるかもしれません。また、もし試験に合格したとしても未経験から転職できるのか、不安に感じるでしょう。
今回はそんな年齢と税理士資格、および資格を活かした転職との関係について、解説します。

30代未経験でも税理士になれる?

結論から申し上げますと、30代でも税理士になることは可能です。むしろ、30代以上で税理士になる人はたくさんいるのが実情です。2023年の税理士試験結果を見ても、受験者のうち63.7%が30代以上であり、5科目到達者にいたっては78.8%</span>もの方が30代以上でした。もちろんこの中には実務経験がある方も多いですが、税理士は未経験でも年齢に関係なく取得できる資格であるということは間違いないでしょう。

税理士になるために必要なこと

ここで、税理士になるために満たすべき条件について確認していきましょう。

① 税理士試験に合格する

当然ではありますが、まずは税理士試験に合格する必要があります。
税理士試験に合格するには、税理士試験科目を5科目取得する、もしくは免除されることが条件となります。

税理士試験科目を5科目取得する

税理士試験に合格するには、11科目ある税理士試験科目のうち、5科目を取得する必要があります。ただし科目合格制をとっているので、1科目ずつ受験してもよいことになっています。

一部もしくは全科目を免除される

税理士試験は基本的に上記の通り5科目の合格が必要ですが、一部科目もしくは全科目の受験が免除されるケースがあります。
具体的には、大学院の単位取得により税法科目であれば2科目・会計学科目であれば1科目の免除が認められる「学位取得による科目免除」、弁護士もしくは公認会計士を持っていると全科目の試験が免除される「特定資格取得による免除」、国税従事者として働くと一部もしくは全ての科目が免除になる「国税従事による科目免除」があります。

② 実務経験

税理士になるためには、税理士試験の合格と併せて2年間の実務経験をしなければなりません。実務経験をするタイミングに関しては合格の前でも問題ないため、試験合格時に既に2年間の実務経験をしている場合は、次でご紹介する登録さえすれば税理士になることができます。
「実務経験」について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

③ 税理士登録

税理士試験合格および2年の実務経験をしたら、税理士登録の申請書類を各地域の税理士会に提出する必要があります。
申請が受理され日本税理士会連合会の税理士名簿に登録されれば、税理士を名乗ることができます。

少しでも早く税理士になりたいなら、未経験を歓迎してくれる場所に!

実務と勉強の両立が必須なら、あなたの試験勉強を後押ししてくれる優良事務所への転職にこだわりましょう。30代のあなたは、少しでも早く税理士事務所での実務経験をスタートしたいと考えると思います。しかし、実務が忙しすぎて試験勉強が進まない…という本末転倒な状況にだけはならないよう、注意してください。

未経験を歓迎してくれる税理士事務所とはどんなところでしょうか?
未経験だから採用したいというようなことはないと思いますが、未経験でも歓迎したいと思わせたら勝ちです。未経験でも採用したいと思わせるには様々な方法がありますが、未経験を歓迎してくれる場所として前提条件とあるのは、最低限の日商簿記2級や税理士科目を1つでも合格し資格を所有しておくことです。また、ほとんどの求人が、Excelのスキルを必要としています。

よって、環境を一方的に求めるより、まず、自身の所有資格をたくさん増やしておくことで、未経験でも選択肢がかなり広がってきます。また、既に未経験者を雇っている税理士事務所もおすすめです。実際に未経験者がいれば、「教えてもらう環境」が整えているといえるので、歓迎されやすいでしょう。

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30代未経験で税理士を目指す際のポイント

税務の経験が無い30代でも税理士になれるとはいえ、もちろん簡単には合格できません。ここでは合格するために押さえておくべきポイントについて紹介していきます。

知識が無い場合はいきなり税理士を目指さない

税理士試験科目の中で、ほとんどの方が最初に簿記論財務諸表論の取得を目指しますが、税務や会計に関する知識が無い場合は、まずはより基本的な知識を求められる資格を取得するのがよいでしょう。特にオススメなのは、日商簿記2級です。これを税理士になるという目標に向かうには遠回りと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、簿記の知識を持っておくことで、関連した税理士試験科目である簿記論や財務諸表論の勉強時間を減らすことに繋がるので、決してそんなことは無いのです。

複数年にかけての合格スケジュールを考える

先ほどご紹介したように、税理士試験は科目合格制を取り入れているため、1年で全科目を取得する必要はありません。そのため、2~3年程度で合格するスケジュールを立てるのがオススメです。全科目合格には4,000~5,000時間程度の勉強時間が必要ですので、月単位、年単位、1日単位と逆算してスケジュールを組むのがよいでしょう。

独学はやめておく

そうはいっても30代から勉強を始めていき、気づけば40代…という事態は避けるべきです。もちろん40代で税理士になる方はいらっしゃるものの、その多くが経験者です。未経験から40代で税理士になった場合、転職先を探すとなるとかなり選択肢が限られてしまうからです。

そうならないためにも、独学ではなく通信講座の受講や専門学校への通学がオススメです。もちろん費用はかかりますが、最適なスケジュールで勉強ができ、苦手分野の克服などもしやすいことなどがその理由です。計画通りに合格を勝ち取るために、最適な勉強法を選択しましょう。

30代で税理士になった時の年収

税理士の平均年収は約700万円ほどとされていますが、30代の税理士が転職する場合の初年度の年収は、400万円程度が現実的と言えます。資格と同程度に重視されている実務経験が無い場合は、どんなに高年収だとしても未経験では500万円ほどが限界と考えられます。
ただしその後は、自分の実績やキャリアによって高年収を実現することが可能なので、転職の際は初任給ではなく、中長期的なキャリアプランを踏まえて職場を選ぶと良いでしょう。

税理士のキャリアの選択肢

税理士を取得すると幅広いキャリアが選択できると先ほどお伝えしました。では具体的にどんな働き方ができるのでしょうか?代表的な職場を紹介します。

会計事務所(税理士事務所や税理士法人)

税理士の就職先の選択肢はある程度多いものの、多くの税理士が会計事務所に就職します。働く人が多いということは、それだけ会計事務所に就職するメリットがあるというわけですので、そのメリットを見ていきましょう。

知識を最大限に活用してキャリアアップできる

税理士資格を取るまでに習得した知識を最も活用できるのは会計事務所といえます。クライアントから依頼された税務業務や税務コンサルを数十件担当するケースもあるのですが、他の職場ではここまでの経験を積めるところはありません。
よって税理士としての自身のスキルアップやキャリアアップを最大限に実現できるのが、会計事務所といえます。

さらに、BIG4など規模の大きな税理士法人への就職は、よりメリットが大きいといえます。その理由は、規模が大きい事務所ほど、多種多様な仕事が数多く依頼されるからです。そのため、海外税務やM&A案件など、小規模な会計事務所では経験しづらい仕事内容も経験することができるはずです。したがって、税理士資格取得後は多くの人が、自分のキャリアのためにも規模の大きな税理士法人への就職を希望するわけです。

独立開業を目指すのに有利になる

会計事務所を就職先とするメリットの一つに、豊富な業務経験を積んでいる先輩税理士との人脈を築くことができる点があります。税理士にとって人脈作りは非常に重要な意味を持つことになります。特に独立開業の際、この人脈は重要な役割を果たすのです。
さらに、個人経営など小規模な税理士事務所であれば事務所経営のノウハウなども学ぶことができ、税理士として必要となる知識だけではなく、事務所経営の知識も身につけることができます

したがって、会計事務所への就職は、将来的に自分で開業したいと考えている人に多くのメリットがあると言えます。税理士の仕事では、相手との信頼関係を欠くことはできません。そのため、税理士同士の人脈づくりやクライアントとの関係構築は将来的に大切なことです。

一般企業の管理部門への就職

一般企業の経理部や税務部に就職する税理士も多くいます。そもそも一定数の人が、一般企業で働きながら時間をかけて税理士試験に合格しています。経理部や税務部に所属していながらキャリアアップのために税理士の資格をとるという人も少なからずいます。

企業は当然税金を納めなければなりませんから、企業内に税理士がいれば、税金額を正確に計算することができるなどのメリットがあります。ですので企業としても、会計や税務の専門知識を身につけている人材は常にほしいと考えているわけです。実際、外部の税理士と顧問契約を結ぶと、会社にとってはその費用が大きな負担となってしまうため、社内で税務手続きを済ませたいと考えています。

企業税法の規定は毎年変わるので、それをフォローアップするのは大変です。だから、企業内に税理士試験合格者がいれば、効率よく法改正に対応することが可能となりますし、外部の税理士に高い費用を払うよりも節約して質の高い成果を得ることができます。
したがって、企業内においても税理士が重宝されているというわけです。税金の金額はある程度は見積もりの部分もあるので、税務上有利な計算方法を適用することで、合法的に税金額を引き下げることもできます。企業によっては資格手当などが用意されていることもあるので、一般企業へ就職した税理士は年収も比較的高くなる傾向にあります。

コンサルティングファーム

税理士という名前を聞くと、多くの方は、税務申告や税務相談などといった業務を請け負う人をイメージするのではないでしょうか。しかし、実際には、税理士の仕事はもっと多用な働き方ができる仕事です。
近年では、税理士業務もグローバルな対応が求められるようになっています。従来の税理士は、税務申告や税務相談などといったコンプライアンス業務を重視して活動を行ってきました。これらの業務は、過去の企業活動に関連して発生した税金を対象とします。それに対して近年の税理士にはコンサルティング業務が求められるようになっています。
したがって、グローバルな税務に対応することができる税理士には一定の需要が存在しています。そのため税理士の中には、税務に関する専門的な知識を活かすために、コンサルティングファームに就職する人もいます。

M&AアドバイザリーやM&A仲介会社

M&AアドバイザリーやM&A仲介会社は、M&A(企業の買収や合併)における売り手企業や買い手企業に対して、M&A業務のサポートを行います。M&A業界は税理士との関わりが薄いように感じるかもしれませんが、会計や税務の専門的な知識やアドバイスを必要とする業務も多く、ニーズの高い業界なのです。詳しくは下記の関連記事をご覧ください。

〈関連記事〉

独立開業

企業や事務所に就職せず、税理士として独立して会計事務所を開業するのも選択肢の一つです。
クライアントに対する業務は会計事務所に就職す場合と変わらないものの、事務所の経営方針の決定人員の採用など、代表税理士として経営マネジメント業務も追加で行う必要があります。
ただし、うまく事務所を軌道に乗せれば、自身の手腕次第で年収を上げられるという魅力もあります。

結局大手?転職先によるメリット・デメリットの比較

結局大手のほうがいいんじゃない?と小規模税理士法人への転職を不安に思う方もいるかもしれません。これから両方のメリット・デメリットについてご紹介していきますので自分に合ったほうを選択して、転職に活かしてみてください!

未経験(30代前半)から大手税理士法人へ

はじめに、未経験から大手税理士法人を選ぶメリットやデメリットについて説明します。

メリット デメリット
キャリアが詰める 業務の幅が狭い
給与が高い ワークライフバランスを取りにくい

未経験でBIG4を筆頭に大手税理士法人に就職するメリットとして、キャリアアップや給与の高さが挙げられます。反対にデメリットとしては、大手税理士法人ですと、事務所のような個別単位ではなく、チーム単位で行うため担当する業務の幅が狭くなります。また、大手であるために業務の量は多いのでワークライフバランスがとりにくい傾向があります。またいざ働き始めても、税理士資格を取得しておらず、資格勉強と並行するのはかなり難しいでしょう。それに加え、税理士資格を取っていない方が未経験でBIG4などの大手企業を受けるとなるとかなり難易度は高いです。

未経験(30代前半)から小規模税理士法人へ

次は、未経験から小規模税理士法人に転職する際のメリットとデメリットについて説明していきます。

メリット デメリット
大手に比べ採用難易度は低い 業績が不安定になる可能性も
業務の幅が広くなる 高度な財務は担当できない

未経験で小規模な税理士法人を選ぶメリットとしては、大手税理士法人よりも採用されやすく、税理士としての第一歩を踏み出しやすいことです。税理士は、資格だけでなく経験が一番重要であるため、30代後半で未経験者だと経験という観点で採用されない可能性がかなり高いです。よって、今後のキャリアを考えると、未経験のまま大手を狙い続けるよりも、小規模の税理士法人で一日も早く税理士の経験を積んだほうが賢明です。あとは就職後に、税理士試験の勉強をして資格の取得を目指すことも可能です。デメリットとしては、小規模な税理士法人では中小企業が主なクライアントとなり、高度な税務は担当できない可能性があります。

前述したとおり、結局大手のほうがいいの?と疑問に思う方もいるかもしれません。ここでは税理士という仕事の業務のバラエティーを楽しみたいといった方や、転職活動そこまで苦労したない方などは転職においては大手向きではないことがわかります。

他の未経験者と差をつけるためには?

税理士試験科目を2科目程度取得しておく

未経験者の場合、実務経験がないので、資格でアピールする必要があります。一般的には日商簿記2級の取得が最低ラインです。また、日商簿記2級だけでなく、税理士試験科目を取得しておくとさらに重要となります。

この税理士試験科目に関しては「何科目くらい取得しておけばいいのだろう?」という疑問があるかと思いますが、まずは2科目程度を取得しておくと評価されます。取得する科目についてですが、税理士試験の受験生が一般的に最初に取得する簿記論と財務諸表論でOKです。

ただし、税理士試験科目を取得している未経験者のほとんどが簿記論や財務諸表論を取得していますので、差別化するために国税三法(法人税法、所得税法、相続税法)や消費税法を取得しておくという方法もあります。

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アルバイトで良いので実務経験を積んでおく

「未経験者」の定義は様々ですが、アルバイトでの勤務経験があると、「未経験者」と「経験者」の間の評価になる場合があります。もちろん「アルバイトなんて正社員としての経験に比べたら全然ダメだよ」と言う人もいますが、少なくとも「アルバイトすらしていない状態」よりは良い評価になるのは確かです。

例えば、税理士試験の受験生には、1年か2年の間、仕事をせずに試験勉強に専念する人もいますが、この場合、試験に合格していれば「資格」はプラスとなりますが、実務経験は「ゼロ」のままです。つまり、税理士試験科目に合格しても「未経験」であることには変わりありません。ただ、もしこの期間に週に2日でも良いのでアルバイトで会計事務所で働いていたとしたら、資格だけでなく実務経験もわずかながらプラスになります。

また、アルバイトであれば日商簿記2級程度を取得していれば比較的簡単に採用してもらえる会計事務所も多いので、正社員へのステップとして経験を積むにはオススメの選択肢でもあります。

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この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINE編集部の川辺です。転職エージェントとして多くのご登録者様からご相談をいただく際に伺った転職に際しての悩みや不安、疑問を解消する記事をご覧いただけるよう、日々奮闘中です!士業や管理部門、FASなどの業界に就職・転職をご検討されている方は、ぜひ業界特化の転職エージェントである、「ヒュープロ」をご活用ください!
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