国家試験の中でも難関資格として知られ、取得後は一般的に高給取りとして知られる公認会計士。しかしその退職金は一般企業と比べてどうなのでしょうか?本記事では、公認会計士の退職金について様々な局面から迫ってみました。
退職金制度というのは、企業が従業員に対して退職の際に支給するものですが、どのような組織に所属しているのかによって、退職金の扱いは大きく変わってきます。それは一概に公認会計士だからというよりも、所属先の職金制度の有無や支給方法の違いによるものです。
そのため、監査法人・一般企業・外資系企業に分けてその傾向を見ていきます。
また、公認会計士企業年金についても取り上げます。
公認会計士の主な業務は会計監査です。そのため監査法人は公認会計士の代表的な就職先でもありますが、巷にある「公認会計士は年収の割に退職金が少ない」というイメージは主にこの監査法人での待遇にあります。
監査法人の退職金の算定は、月額給与の60~70%(平均的な給付率は、自己都合の場合6割程度、会社都合の場合で7割程度)×働いた年数という金額になるのが一般的です。
例えば月額30万円の基本給のスタッフで3年、40万円のシニアスタッフとして4年務めて退職した場合は
30万円×70%×3年+40万円×70%×4年=175万円
といったような具合です。このあたりはあまり一般企業と変わりませんね。
監査法人はスタッフからはじまり、マネージャーなど上位の職種になるともちろん給与が上がっていきますが、退職金規定にはボーナスやインセンティブなどの変動賞与が含まれません。そのため、退職金を重視するのであれば、見るべきところは年収よりも基本給です。
また、公認会計士の場合、同じ職位に大体10〜15年間以上とどまってしまうと、その職位での退職金が積みあがらなくなる制度があります。
少し極端な例とはなりますが、先程の例に挙げた公認会計士がその後も勤務をし続けたとしましょう。ただ、シニアスタッフ以降は思うように昇格することができないまま25年間勤務し続けたとします。あくまでも仮定ですが、分かりやすくお伝えするために、ここでは同じ役職に15年以上居た場合は、15年を越えた給付率は0%になってしまうとしましょう。そうすると、退職金の計算式は、
30万円×3年×70%+40万円×15年×70%+40万円×10年×0%
となります。そのため、長く勤務する場合は着実に昇進して、最終的にパートナーにならない限りは、大きな差が出てしまうのです。
パートナーは経営者サイドなので、いったん退職して退職金を受け取り、さらにパートナー退任後に退職金をもらえるので、退職金の総額が大幅にアップします。
数年で監査法人を退職するのであれば、退職金の金額については気にするほど安いということはありませんが、長く勤務すると、同じ年数を務めた同期であっても職位によって大きく差ができてしまう可能性があるのです。
3年以上勤務している場合は、公認会計士企業年金(後述)を併せてもらうこともできます。
公認会計士の就職先として次に多いのは一般企業です。一般企業の場合は、その規模によって退職金制度が変わってきますが、正社員として入社した場合は一般社員と同様の待遇を受けることになります。
大企業であれば、企業の制度にもよりますが、勤続35年以上で2000万円を超えることがあります。
しかし、近年は高齢化による企業年金の原資が圧迫されつつある現状で、退職金制度自体の見直しが行われているところも多くあります。
また、ベンチャー企業へ転職するケースにおいてはそもそも退職金制度がないという企業もありますので、退職金を重視する場合は、勤務先の退職金規定を確認しておくことが必要です。
公認会計士の転職先として最近人気が高いのは、外資系の企業です。投資銀行やコンサルティング会社など、実力次第では破格の年収を得ることもできます。
そんな外資系企業の退職金事情はどうなのでしょうか。例えば確定拠出年金制度(401k)によって、毎年の給与の5%を拠出し、退職金として備えるなど、給与の一定割合を退職金として積み立てるプランが多いです。
もともとの給与水準が高いことから、5年勤務でも500万円程度あったりするなど、ある程度まとまった金額が支給される場合も。
しかしこれも、やはり企業によって退職金制度は大きく異なるので、気になる方は入社前にしっかりと確認しておくことが必要でしょう。
勤務形態による退職金制度の違いを見てきましたが、日本の一般的な企業に就職した場合と、監査法人に就職した場合とでは、退職金の制度や金額に大きな差があります。
そこで、日本公認会計士協会を母体とした公認会計士のための年金制度として生まれたのが、「公認会計士企業年金基金」です。
公認会計士事務所および監査法人などの加入事業所の事業主と、加入者とで運営されています。公認会計士企業年金基金では全額を事業主が負担し、加入者の負担がないのが特徴ですが、基金に加入して3年未満の場合は給付がありません。
そのため、監査法人に就職したけれど2年で退職したというようなケースでは支給対象外です。しかし、再び加入事業者となっている公認会計士事務所などに就職して、基金に再加入すれば、脱退時の勘定残高を引き継ぐことができます。10年以上の加入していれば、退職時60歳未満の場合は、脱退一時金としてもらうか、老齢給付金として60歳もしくは65歳から受け取るかどちらかを選ぶことができます。
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公認会計士の場合、監査法人で勤務をしたケースの退職金の考え方は少し特殊なものとなります。スムーズに昇進し続けなければ、対処金がそれほどもらえないということがあるのです。一方、一般企業では他の正社員と同じような基準で退職金が支払われますし、外資系企業においてはもっとまとまった退職金が支払われるケースもあります。
また監査法人や外資系企業の退職金が少なかったり、ベンチャー企業の退職金がなかったりしても、そもそもの年収が高いところに就職したり、IPOで多額の利益を得たりすることも公認会計士であれば夢ではありません。勤務先の福利厚生や退職金制度の充実ももちろん大事ですが、進む高齢化や企業年金原資の減少に伴い、退職金制度についても大きく見直しを迫られている組織は多くあります。普段から貯金や投資に勤めて自らの退職時に備えておくことも必要と言えるでしょう。