年、「○○ホールディングス」、「○○フィナンシャルホールディングス」という名前の企業を耳にする機会が多くなっているのではないでしょうか?こうした企業は持株会社と呼ばれ、持株会社は実際に事業を行なうのではなく、傘下の企業を子会社として管理しています。持株会社が子会社をまとめて管理することによって、企業グループ全体の経営を効率化できるなどのメリットがありますが、グループ全体の管理コストがかさむようになるなどのデメリットも存在します。この記事では、持株会社とはなにかについて説明し、その後、持株会社のメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
持株会社とは、子会社の株式を保有して傘下企業の経営を支配する会社のことを言います。基本的に、投資目的で株式を保有しているのではなく、事業を支配する目的で株式を保有している会社です。持株会社はホールディングスとも呼ばれます。
他の会社の株式を多数保有することによって、株式を発行している会社の事業活動を支配することを主な目的とした会社なので、従来、独占禁止法によって禁止されていましたが、1997年の法改正によって可能な組織形態となりました。
現在の独占禁止法では、「子会社の株式の取得価額(…中略…)の合計額の当該会社の総資産の額に対する割合が100分の50を超える会社」を持株会社と定義しています。かつての財閥は持株会社の典型例で、第2次世界大戦集結までは、財閥傘下の企業の株式を保有して組織を形成していましたが、過度に資本が一つの企業に集中することによる弊害があったために、戦後の経済民主化政策によって解体されました。1997年の法改正以降、2019年9月時点で日本の上場企業の1割超が持株会社となっています。
持株会社には、自分の会社でも事業活動しながら、子会社の株式を保有して支配する事業持株会社と、株式だけの保有を目的として、子会社からの配当で収益を得る純粋持株会社があります。支配する会社を親会社、支配される会社は子会社と呼ばれます。企業が持株会社に移行する理由としては2つの理由が考えられます。
1つ目の理由は、経営統合型の持株会社化と呼ばれるもので、グローバル化の時代を生き抜くうえで不可欠となりつつある組織再編を目的とした手段として持株会社化するというケースです。持株会社化した方が、M&A による組織再編よりも簡単で、組織面や人事面における摩擦が少ないというメリットを挙げることができます。
企業が持株会社に移行する2つ目の理由は、内部組織再編型の持株会社化と呼ばれるもので、既存の企業グループを戦略的グループマネジメントと事業マネジメントに分離して、企業グループ内の経営効率化を図ることを目的とした手段として持株会社化するというケースです。
持株会社は、グループ企業内外に対して、グループ企業全体の経営責任を負う会社となっています。そのためグループ傘下にある各企業、各事業について経営資源を客観的に評価し、グループ全体を最適化するという観点に立って事業戦略や経営資源の再配分方針を明確にしていきます。したがって、持株会社は、グループ各社が力を発揮しやすい環境を整えるのが基本的な役目です。以下では、そんな持株会社のメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
企業を持株会社化する最大のメリットは、効率的なグループ経営が可能になるということです。持株会社は、経営戦略の決定などのグループ全体の舵取りを行う機能を持株会社(親会社)が行なうことになるので、事業を行っている会社は、経営資源を事業に集中することができます。戦略を決定する企業と事業を行なう企業を分けることで効率的なグループ企業経営ができるようになるだけではなく、業務の責任と権限を明確にすることができます。
持株会社のメリットについてはこちらのコラムでも詳しく紹介しています。
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一方、持株会社化する最大のデメリットは、グループ維持のための管理コストがかさみやすいということです。一つ一つの会社間におけるバックオフィス業務が重複しがちです。たとえば、同じグループ会社のなかに、経理部が複数ある場合、それぞれの企業で経理業務を行なうことになるため、管理ためのコストがかさんでしまうというデメリットがあります。このデメリットを解消するためには、持株会社化を解消するしかないため、管理コストの増大は、持株会社化に伴う限界として位置づけられます。
一つの企業を持株会社とすることによって、傘下の企業がそれぞれの事業に集中できるようになります。これによって、グループ企業全体の経営を効率化できることが、持株会社化する最大のメリットです。しかしながら、持株会社化する場合、バックオフィス業務が肥大化するため、その管理コストがかさむようになるというデメリットがあります。そのため、持株会社化する場合には、グループ会社を管理するためのコストを補って余りあるだけのグループ全体の効率化が可能であるかを考えることが重要です。