インタレストカバレッジレシオは、企業の安全性をはかるときに重要な指標です。インタレストカバレッジレシオは、金融費用の支払い能力を判断するための指標で、銀行の融資判断や社債の格付けに用いられています。この比率が高いほど、利息の支払い能力が高く、3倍程度であれば利息の支払い能力に不安がないと言われます。今回この記事では、インタレストカバレッジレシオについてその意義からわかりやすく解説していきます。
企業の安全性を評価するにあたっては、*負債の返済可能性*がきわめて重要であるので、負債の残高を中心に資産や資本との関係を分析するのが普通です。
そこで用いられるのは、決算日という特定の時点における資産・負債・資本の残高を1表にまとめた貸借対照表です。この意味で、負債の残高を中心に資産や資本との関係の分析は、ストック項目にもとづくいわば静的な安全性の指標です。しかし、静的な指標は、安全性を評価するための有効な指標ではあるものの、大きな限界があります。
1つの重要な限界は、企業の債務返済能力を評価するうえで、収入・支出というフロー項目の大きさやタイミングが決定的に重要であるにもかかわらず、それがほとんど考慮されず、もっぱら特定時点での資産や負債の残高のみに基づいて判断が行われていることです。
たとえば、流動資産が流動負債を大きく上回っている場合には、流動比率が良好であると判断されるであろうが、流動負債の返済時点が流動資産の換金時点より常に先行するのであれば、資金繰りが逼迫して企業の安全性が脅かされる恐れがあります。したがって、特定時点のストック数値にもとづく静的な指標には限界があり、この限界は収入・支出などのフロー数値を用いた「動的」な指標によって補完しなければなりません。
貸借対照表の項目を使う静的な指標のもう1つの限界は、現実の企業が経営活動の結果として獲得する収益によって、利息を支払ったり債務の返済を行なうにもかかわらず、特定時点で保有する資産を処分して負債の支払いに充当することが仮定されていることです。
しかし、債務の返済能力は、資産保有量の多い少ないだけではなく、企業の収益性そのものにも大きく依存しているのが現実の姿です。したがって、安全性は貸借対照表にあらわれた財務構造のみならず、損益計算書に集約された収益・費用などのフロー項目とも関連付けて総合的に評価しなければなりません。
こうしたストック数値に基づく指標の限界を踏まえ、フロー数値に基づく指標として開発されたのがインタレストカバレッジレシオです。以下では、インタレストカバレッジレシオについて詳しく解説していきます。
インタレストカバレッジレシオとは、借入金の返済能力を評価するとき、まずは利息が期日通りに支払われることが重要な問題であるので、利息を支払うのに十分な利益が獲得できているか否かを判断することを目的として、利益の金額を利息の金額で割って計算する指標です。
インタレストカバレッジレシオは、次のように計算します。
この計算式が示すように、比率の分母は当期の費用として発生する利息関係のフロー項目であり、分子には当期中の営業利益に受取利息・配当金などの金融収益を加算した事業利益が用いられます。これは損益計算書の構造を考えればわかるように、営業利益と金融収益の合計から、金融費用が支払わなれなければならないことを考慮したものです。
インタレストカバレッジレシオが1を超えると、利子控除後の利益はプラス値であると考えることができるものの、1を割ると金融費用が事業利益を上回って損失が計上され、その状態が続くと倒産の危険性が高まります。一般的な傾向として、企業の支払い能力の水位や他企業との比較は、貸借対照表の静態的な比率でみるよりも、インタレストカバレッジレシオで観察する方が、変化や差異がよりいっそう明白になります。
インタレストカバレッジレシオという動的な財務指標は、企業の支払能力に変化が生じた場合に、流動比率や負債比率などの静的な指標よりも、より一層迅速かつ明白にそれを把握して警告を発してくれます。したがって、インタレストカバレッジレシオは、企業の財務的な安全性の評価に不可欠な役割を果たす重要な財務指標です。
インタレストカバレッジレシオは企業の支払い能力をはかるときに重要な指標です。インタレストカバレッジレシオがマイナスである場合には、企業の支払い能力にかなり問題があることになるので、計算の結果マイナスになる場合には、その企業は倒産の危機になるということができます。企業の安全性をはかるためにも、インタレストカバレッジレシオをきちんと理解しておくことが重要です。