減価償却累計額とは、減価償却費の累計額を意味しています。したがって、減価償却累計額について理解するためには、まず減価償却について理解しなければなりません。そこでこの記事では、減価償却について詳しく解説した上で、減価償却累計額は何かについてわかりやすく解説していきます。
建物や機会といった有形固定資産は、生産活動や販売・管理活動に利用され、売上収益の獲得に貢献しています。そのため、有形固定資産の取得原価は、その資産の利用を通じて達成された各年度の売上収益と対応づけるために、各年度にわたって費用として配分されなければなりません。
有形固定資産は、経済活動で利用したとしても、使用に伴って物理的な数量が減少することはありません。しかし、外見上は変わらないとしても、使用によって価値が徐々に減少し、当初の見積もりが正しい限りにおいて、その価値は使用可能期間(耐用年数)が経過した時点で、僅かな評価額(これを残存価額と言います)にまで低下しています。
使用に伴って資産の価値が徐々に低下する事実を適切に描写するには、取得原価から残存価額を控除した差額を、耐用年数にわたって費用として配分する必要があります。取得原価のこのような配分を減価償却と言います。
すなわち、減価償却とは、有形固定資産の取得原価を、その耐用年数にわたって一定の体系的な方法で費用として配分するとともに、資産の貸借対照表価額を同額だけ減少させていく会計手続きを言います。この手続きは、毎期継続して規則的に行われることから、とくに正規の減価償却とも呼ばれています。
減価償却は、資産から価値を減少させることであるので次のように仕訳を行ないます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | ×××× | 有形固定資産(車、建物、土地等) | ×××× |
借方に計上されている減価償却費は、それが工場の機械や建物に関するものであれば、製造経費に含められて製品の製造原価に集計され、最終的には売上原価の一部として、売上高に対応付けられます。
他方、営業所や本社の有形固定資産に関する減価償却費は、損益計算書の販売費および一般管理費の1項目として計上されることになります。
端的に言えば、減価償却を行なう目的は、有形固定資産の取得原価を、当該資産の利用期間に配分することを通じて、各期間の利益を適切に算定することにあります。
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減価償却は、有形固定資産の取得原価から残存価額を控除した減価償却総額を、耐用年数や利用度を基準とした一定の体系的な方法で、各期に減価償却費として配分する手続きです。したがって、実際に計算を行なうためには、(a)取得原価(b)残存価額(c)耐用年数や利用度のような原価配分の基準、および(d)減価償却の方法の4つが具体的に特定されていなければなりません。
取得原価、残存価額、耐用年数については上で簡単に説明しましたので、減価償却の方法について説明します。減価償却の代表的な方法としては、定額法、定率法、級数法、生産高比例法といった方法があります。それぞれの詳細な計算方法については、企業会計原則・注解20に書かれていますので、必要に応じて参照してください。
減価償却の会計処理は、期末における決算整理の一環として実施されますが、その仕訳の方法には、直接法と間接法があります。直接法は、減価償却を行なう額だけ有形固定資産の取得原価を直接的に減少させていく方法で、次のように仕訳を行ないます。
直接法の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | ×××× | 有形固定資産(車、建物、土地等) | ×××× |
したがって、有形固定資産勘定の残高が、未償却の残高を表すことになります。
これに対して、間接法では、減価償却額を減価償却累計額勘定に計上します。
間接法の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | ×××× | 減価償却累計額 | ×××× |
したがって、有形固定資産勘定は取得原価のまま維持され、毎年の減価償却額が減価償却累計額勘定に加算されていくので、未償却残高は、有形固定資産勘定の金額から減価償却累計額の金額を控除して算定されることになります。貸借対照表の作成には、減価償却累計額を把握する必要があるので、減価償却の仕訳は間接法によることが望ましいと言えます。
減価償却累計額は、減価償却費を毎年のように積み上げてきた結果算定される結果です。取得原価から減価償却累計額を控除することによって、その期に当該資産の価値がどれだけ残っているのかを確認することができます。たとえば、取得原価が100、減価償却累計額が60であるとすると、当該資産の価値は40であることがわかります。
このように、減価償却累計額は、取得原価と対比することによってはじめて意味のある数字となります。したがって、減価償却累計額について理解するためには、減価償却累計額が減価償却費はこれまでどれだけ計上したかを示す値であることをきちんとおさえておくことが大切です。
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