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確定申告の疑問|荷造運賃とは?どんなものが経費になるの?

公認会計士 大国光大
確定申告の疑問|荷造運賃とは?どんなものが経費になるの?

年に一度確定申告が必要な人は沢山いらっしゃいます。そんな中、毎年多くの方が悩むのが、「勘定科目において、荷造運賃ってどんなものが該当するのか?」という勘定科目の使い方です。実際、会計事務所においてもスタッフが上司に聞くことも多い勘定科目です。今回は、どのようなものが荷造運賃として計上され、どのような点に留意すべきかを現役公認会計士が解説します。

荷造運賃とは?確定申告時の勘定科目

まず、荷造運賃というのは、「荷造や運送にかかる費用」を言います。簡単に言えば、「物品を運ぶために必要な諸費用」ということです。
それでは、どのようなものが荷造運賃となるのでしょうか。荷造りをするための費用と運送するための費用に分けて解説します。

荷造するための費用

商品を梱包、包装するための資材

単純に販売するための包装ではなく、運送するための包装となります。よって、宅配業者の指定包装用紙等がこれにあたります。

搬送するための箱

段ボール箱や通い箱等が該当します。あくまで搬送用のものなので、先方に届いた際には破棄されてしまうような箱や、返却される箱が該当します。

搬送用に箱の中に入れられる緩衝材等

商品を傷つけないようにするために混入される発泡スチロールや気泡の入ったシートが該当します。これらについても、配送後先方で破棄されてしまうような性質のものが該当します。

ガムテープ、ビニールテープ

先述の段ボール等に合わせて、商品が箱から出ないようにするためのガムテープ・ビニールテープは荷造運賃となります。

発送費用

宅配便、郵便料金

商品を発送するために宅配便や郵便を使った場合は、荷造運賃に含まれます。

運送業者へ支払う運賃

商品をトラックなどで運んでもらう場合は、該当する金額が荷造運賃となります。

確定申告で荷造運賃と間違えやすい科目

荷造運賃と混同しやすい科目としては、通信費が挙げられます。荷造運賃は、商品・製品を運ぶために支払われたものですが、通信費はあくまで情報のやり取りや商品発送前の電話、FAX等にかかる費用となります。よって、電話代、プロバイダ料金等は通信費となります。
また、消耗品費も荷造運賃と混同しやすい科目となります。例えば、先ほど例にあがっていたガムテープやビニールテープは商品等発送の為に使われる場合は荷造運賃となりますが、事務所にて他用途に使われる場合は消耗品勘定を使うことが多いです。これは、ガムテープなどでも何かの補修に使うなど、商品搬送のために使われないことが理由となります。

では、両方の用途に使うためにガムテープ等を購入した場合はどうなるでしょうか。明らかに荷造の用途のために購入し、たまにそれ以外の為に使う場合は、荷造運賃とします。反対に、消耗品としての性質が強く、荷造にはほぼ使わない場合は消耗品費として計上します。一方で、用途が半分半分で金額に重要性がある場合は、購入したガムテープ類について月単位で半分ずつ荷造運賃と消耗品費で計上することがあります。

荷造運賃に関する税務上の取扱いについて

荷造運賃については、税務上取扱いに留意すべき事項があります。それは、商品や原材料を仕入れるために支払われた荷造運賃は、仕入高に含める必要があります。例えば、仕入先からの納品書に、商品そのものの値段とは別に、運送料と記載されているような場合です。
これは、例えば商品をたくさん仕入れて一つも売れなかった場合は、期末仕訳で全て在庫に計上され、利益を圧迫することはありません。でも、荷造運賃がそのまま費用とされてしまうと、全く販売活動が行われていないのに赤字になったり、不当に税金が安くなったりする可能性があるためです。この処理を間違えると、税務署としては在庫に計上すべき荷造運賃について、否認を要求する場合があります。
一方で、販売のための荷造運賃は販売費及び一般管理費に計上します。これは、商品の価値を上昇させるものではないし、販売されなければ当該荷造運賃は発生しないためです。

確定申告で、荷造運賃であったものを荷造運賃ではなくした場合等の留意事項

今まで荷造運賃としていたものを他の科目としたり、他の科目を荷造運賃としたりした場合、どのようなことに留意すべきでしょうか。
勘定科目の内訳は税務署に提出しなければなりません。税務署が税務調査に行くかどうかを決める際、「特定の支出項目が多額に増減しているかどうか」が挙げられます。よって、荷造運賃が突然増減している場合は税務調査対象になりやすい可能性がありますので、その点も踏まえて留意が必要です。ただし、万が一税務調査対象となったとしても、より一般的な勘定科目にした旨を説明すれば、基本的には問題ありません。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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