株式投資をする際や企業がこれから株式公開をしたいと思った時によく聞かれる言葉として「資本構成」というものがあります。どのような資本構成の企業に投資すればよいのか、また、証券会社から「将来上場に際して、どのような資本構成にしますか」という質問が来ることがあります。
特に自社の資本構成をどのようにするかによって、株式を発行すべきかどうかや銀行から借入をするかどうかが決まるため、経営をするにあたって知っておかねばならない単語となります。
そこで、今回は資本構成の意味やどのような資本構成が最適か等を現役公認会計士が解説していきます。
資本構成とは、読んで字のごとく資本の構成となります。資本とは、純資産を言うこともありますが、ここでいう資本というのは「調達したお金」という意味です。その中には、自己資本と他人資本の二つの言葉があります。
自己資本とは、自分で調達した金銭を言います。自己というのは株主すなわち企業の所有者のことを言います。例えば、会社設立や増資の際に株主から金銭を払い込まれることによって得られた資金を言います。また、継続して利益を計上することによって会社に蓄えられたものも自己資本となります。
一方で、配当の支払や損失計上によって外部に資金が流出すると、自己資本の減少要因となります。
また、他人資本とは、株主や過去の利益から蓄積されたもの以外から調達された資金を言います。金融機関からの借入や、企業が発行する社債などの他に、通常の支払金である買掛金等の負債を総称して言います。
これらの自己資本と他人資本の構成比率を、「資本構成」と呼びます。
資本構成を考えるのに、最もわかりやすいのが自己資本比率です。自己資本比率は、自己資本を総資本で除したものとなります。どのくらい自己資本比率があれば良いかというのは様々ですが、30%以上あればある程度の自己資本があると言えるため、目安にすると良いでしょう。これが50%を超えるような会社であれば、めったに潰れることはないと考えられます。上場企業でも50%を超えるような企業は少ないと言えるでしょう。
では、自己資本が高ければ高いほど良いのかというと、それは内容によります。極端に自己資本比率が高いと、安全性は高いと言えますが、資本が有効活用されていないということになります。また、配当が少ないことで自己資本比率が高まっている場合は株主軽視の傾向にあるとされてしまいます。また、他人資本は借入等の利息が発生することがあり、その分税金が減る効果も期待できます。
よって、最適な資本構成は一概には言えず、その企業や株主が何を目指しているかによって最適な資本構成は異なると言えます。
有名な経済学者が提唱した、モジリアーニ・ミラーの第1命題と呼ばれるものがあります。これは、「完全な資本市場では、資本構成は企業価値には影響を与えない」というものです。これは、同一の内容の企業であれば、資本構成によって企業価値が変わらないということを言っています。
例えば、企業の活動を自己資本で賄っても、将来の配当や税金などを総合すると、借入を増やしている場合と株価は変わらない、というものです。
しかしながら、現在の株価算定の実務では、資本構成によっては企業価値が異なることがあります。これは、株価算定をする際に「類似企業比較方式」というものがあり、比較対象としている会社と評価対象の会社とで金利に差がある場合、有利子負債の比率によって最終的に求められる企業価値が異なってきます。
また、モジリアーニ・ミラーは完全な資本市場を前提としていますが、実務においては法人税や倒産リスク等が加味される為、資本構成によって企業価値が異なる結果となります。
資本構成は、信用機関における格付けにも影響を与えます。信用機関には、帝国データバンク等があり、日本全国の企業を格付けすることで、これから新規企業と取引しようとしている会社に対して、その相手企業の格付けを知らせ、与信管理に役立ててもらうビジネスを展開しています。この格付けが低くなると、せっかく新規で良い取引が発生しそうであっても相手企業に格付けの低さを理由に取引が行われない可能性があります。
そこで、格付けを上げることによって、スムーズな取引を行うことが必要となります。
一般に、自己資本比率が高ければ高いほど格付けは高いものとなります。これは、新規取引先に大事なのは収益性よりも、売掛金が適切に回収できるかどうかや、安定して材料を供給してくれるかどうかだからです。相手先企業がいくら高収益率だったとしても取引企業には関係がないのです。
また、同じ資本構成であっても業種によって格付けが異なります。製造業のほうが自己資本比率は低くなる傾向は先ほどお話した通りですが、同じ製造業でも業界によって異なります。例えば、輸出企業であれば為替相場に大きく影響を受けるため、自己資本比率が高い方がよくなりますが、日本国内のみで活動している場合は為替リスクが低い為、自己資本比率は相対的に低くても良いものとなります。
最速転職ヒュープロは「経理・財務に強い転職情報サイト」です。優良求人数3,000件以上で、大学と共同開発の独自アルゴリズムによる数万件のデータに基づく『最速転職診断』機能も充実です。ご転職や今後のキャリアについてお悩みの方は、是非お気軽にご相談ください。
経理・財務の転職に強い!『最速転職HUPRO(ヒュープロ)』の詳細はこちらから