登録済税理士の人数は年々増加しています。そうかと思えば、税理士試験の合格者数は年々減少しているのです。「合格者数は減少しているのに税理士の数は増加している」というのは一体どのような人数の推移の仕方をしているためなのでしょうか。また税理士といえば個人事務所が一般的でしたが、最近では「税理士法人」も増加しています。ここでは税理士の人数の推移からわかることについて少し分析していきます。
数年前より税理士の受験料が上がりました。これも税制改正の一つとして取り上げられていたので人によっては「それが税制改正と関係がるのか」と感じた人もいるのではないでしょうか。その細かい話はさておき、受験料が上がった理由は「受験者数の減少」です。合格者の減少というよりも、受験者の減少の方が顕著なのです。受験料も立派な国の財政資金として役立てられます。つまり先の先にはこの受験料も立派な国の予算の一つとして組み込まれているのです。
そのような税理士試験ですから受験者そのものが減少すれば、受験料は上昇します。少子化時代ですので受験者数は減少に向かって推移すると予測するのは非常に妥当な判断です。ではなぜその中で、年々税理士の人数は増加しているのかを次に分析してみます。
税理士試験の受験者数が減少しているにもかかわらず、税理士の数が増加しているというのは何か不思議なものを感じます。では一体どういう推移の仕方をしているのでしょうか。
まず税理士もほかならぬ「高齢化社会」を迎えていることが要因の一つです。高齢化社会になり健康的な生活を送る高齢者が増え、その中で年金問題を抱える中で、試験に合格し税理士として登録する方が多く、その現象は結果的に税理士が増加の方向へと推移している結果と言えます。ではそのような増加傾向にある中でどのような生き残り策を講じているのでしょうか。
税理士の人数が増加傾向にある中で、生き残りをかけて多くの策を講じています。例えば法人化が顕著な例です。個人の事務所で経営するよりも法人化が増加の一途をたどっています。個人事務所は支店を持つことができないため商圏を広げることが難しいのが現状です。しかし法人化すれば、支店を持つことができます。支店を持つことができればおのずと商圏を広げることができます。商圏を広げれば、多種多様な業種への対応が必要となりますが、決まった枠の中で関与先の取り合いや現状維持を図るよりも顧客獲得においては有利です。
また、多くの支店を持ち多くの社員を確保することで一度に多くの顧客に対応することもできます。これは法人でなければ出来ないことであり、税理士が生き残りを策としている手法です。
必ずしも規模が大きければいい、というわけではありません。しかし個人で仕事を進めるよりも売上高を増加させることもでき、将来的には自分自身の給与も増加出来る可能性があると言えます。
ではここで、受験者数が減少し合格者数も減少している税理士試験が「難関」と言われている理由について簡単に解説します。
大手の専門学校へ通えば決まって「上位3割に入っていること」が合格の条件と言われます。
また、税理士試験は受験資格が必要で、それを満たしてはじめて受験のスタートラインに立てます。税理士試験は必須科目2科目と選択科目3科目の合計5科目に合格してはじめて「官報合格」となります。更に税理士事務所での実務経験が2年なければ登録できません。登録できなければ「税理士」として仕事をすることができません。この登録のためには、既に税理士となって活躍している先生からの承認が必要です。
5科目を一度に合格するのは試験に専念していてもほぼ皆無と言われています。早くて2年、長ければ10年以上かけて合格する人も珍しくありません。その上さらに登録のための実務経験。もちろんこれは、受験しながら2年間の実務経験を積むもよし、合格してから2年間の実務経験を積むもよし、いつまでに合格という期間が限定されているわけではありません。実務経験が積めれば問題ないのです。
「登録税理士の人数が増加傾向にあり、受験者数が減少している」というこの人数の推移からわかることは、税理士業界も「少子高齢化」の波が押し寄せてきているということです。受験者数の減少は少子化を表し、登録税理士の増加は高齢化を表しています。登録税理士の増加は、同時にパイの奪い合いになる可能性も予測されます。
税理士業界も生き残りをかけた戦略が必要なのです。昔のように「税理士は独立して自分の事務所をもって価値がある」という時代は終わりを告げようとしており、業界特化型事務所や、コンサルティング型事務所など、その分様々なバリエーションでユニークな事務所が増え、税理士事務所の在り方が大きく変わろうとしています。