士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

ベンチャーキャピタル投資の会計処理とは?ファンドの出資はどう扱う?

HUPRO 編集部
ベンチャーキャピタル投資の会計処理とは?ファンドの出資はどう扱う?

ベンチャーキャピタル(Venture Capital:VC)は、ベンチャー企業などの未上場企業に対して出資を行う機関のことです。投資先の成長支援を行い、その上場や売却によって資金回収を行います。本記事では、ベンチャーキャピタルの概要や、そのほとんどのファンドが採用している投資事業有限責任組合の会計処理について解説いたします。

最速転職ヒュープロは「経理・財務に強い転職情報サイト」です。優良求人数3,000件以上で、大学と共同開発の独自アルゴリズムによる数万件のデータに基づく『最速転職診断』機能も充実です。ご転職や今後のキャリアについてお悩みの方は、是非お気軽にご相談ください。
経理・財務の転職に強い!『最速転職HUPRO(ヒュープロ)』の詳細はこちらから

ベンチャーキャピタルとは

ベンチャーキャピタルというのは、本来は、成長性が見込まれる未上場企業であるベンチャー企業(VB)に、投資された資金そのものを指す言葉です。しかし、日本においてベンチャーキャピタルというのは、ベンチャーキャピタル投資を行う企業を差すのが一般的な言葉となっています。

その種類としては、金融機関の関連会社である金融機関系ベンチャーキャピタルのほかに、独立系ベンチャーキャピタル、事業会社がベンチャー企業への投資を行うCVC(Corporate Venture Capital)、さらに、大学発ベンチャー企業への支援を行う大学ベンチャーキャピタルなどがあります。

ベンチャーキャピタルによる企業投資は、エクイティ(株式、転換社債、ワラント債など)投資、あるいはそれに準じる形で行われ、ファンドを組成する際は「投資事業有限責任組合」というスキームを使うのが一般的です。

投資事業有限責任組合(LPS)とは

投資事業有限責任組合(Investment Limited Partnership:以下LPS)は、ファンドの業務を行う無限責任組合員(GP)と出資額までの責任を負う有限責任組合員(LP)で組合員で構成されます。従来の投資事業組合は、全員がGPで無限責任を負っていたため、出資のリスクが非常に高かったのですが、ベンチャー企業への資金供給を円滑にし、新たな産業の発展を促進するために新しくLPSという制度が作られたわけです。

LPSにおけるGPは、無限責任なので組合が債務を負った場合、出資額以上に弁済義務があります。(法人の場合は法人の財産までがその範囲となり、株主や役職員までは責任の範囲には入りません)個人の場合は文字通り無限責任となります。

有限責任組合員は、自分の出資額までが責任範囲とリスクは少ないのですが、ファンドの運営には関与できません。実際のベンチャーキャピタル運営については、投資育成会社などベンチャーファンドの管理、運営を専門に行うプロが必要です。

そこで、実務を行う個人の責任を有限にするために、以下の方法を取ることがあります。

・GPを法人としてLPSを設立する
・個人で有限責任事業組合(LLP)を組織して、そのLLPをGPとしてLPSを設立する

ベンチャーキャピタルの会計処理について

それでは、ベンチャーキャピタルが取ることが多い投資事業有限責任組合(以下LPS)の会計処理について説明します。
LPSは、法人格を持たないことから、パススルー税制の適用を受けることができ、法人税の課税がありません。このため、ファンドが利益を上げて獲得した所得に対しては課税されず、出資者に利益を配分する際にはじめて課税を受けます。

しかし、注意しておきたいのが、LPSは「投資事業有限責任組合契約に関する法律」により、会計監査人監査の監査対象(第八条2項)であることです。
つまり、解散するまでは毎事業年度において、法人と同様に事業年度の貸借対照表、損益計算書などの財務諸表等を作成したうえで、公認会計士または監査法人の監査を受ける必要があります。

しかし、ベンチャーキャピタルにおける会計処理には、通常の会計業務とは異なる独自の会計基準があります。代表的な物を以下に記述します。

株式の評価額

通常の会社が保有する有価証券については、市場価格のあるものに限定されていますが、LPSの保有株式は未上場の場合、時価というものを判定することがとても困難です。
この場合の判定については2つの方法があります。

①「中小企業等投資事業有限責任組合会計規則第7条」によって、各組合の契約に定める評価基準に沿って時価評価を行う方法
②時価を求めることが困難であれば、会計処理上では評価益を計上せず、取得原価で評価することを定めることができます。もし時価が取得価額を上回っていたとしても、評価益の計上をせず、取得価額で評価します。

組合員側の出資割合に応じた取込処理

出資者の出資割合に応じて、組合の財産の持ち分・損益についての取込を行う会計処理が必要です。こちらも3つの方法があります。

①純額方式:貸借対照表・損益計算書とも出資割合に応じて持ち分を相当額を純額(収益から費用などを引いた金額)で計上
②損益帰属方式:貸借対照表は純額で計上し、損益計算書は損益項目の持ち分相当額を計上
③完全認識方式:貸借対照表・損益計算書とも出資割合に応じて持ち分を相当額を計上

このように、ベンチャーキャピタルにおいては、企業と同じような財務諸表を作成するにあたって、通常の会計処理とは異なる基準を確認しつつ進める会計処理が多く存在します。
しかし、LPSの管理部門において経理業務のための専従者を抱えるということは困難なので、会計事務所に経理業務をアウトソーシングすることも良く行われています。

▶︎ 士業・管理部門でスピード内定|最速転職HUPRO はこちら

士業・管理部門に特化!専門エージェントにキャリアについてご相談を希望の方はこちら:最速転職HUPRO無料AI転職診断
空き時間にスマホで自分にあった求人を探したい方はこちら:最速転職HUPRO
まずは LINE@ でキャリアや求人について簡単なご相談を希望の方はこちら:LINE@最速転職サポート窓口

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事