税理士は国家資格の中でも難易度が高いため、それだけ高い年収が実現できるというイメージが強いでしょう。しかし、実際にどのくらいの年収なのかはあまり知られていません。また、ひとえに税理士といっても経験や働き方、働く職場によってその年収は変動します。今回はそんな税理士の年収を、様々な角度から徹底解説します。
まずは税理士の平均年収を見てみましょう。
厚生労働省が出している賃金構造基本統計調査によると、2023年の税理士の平均年収は約856万円で、給与取得者の全体の平均年収が460万円であることを踏まえると、高めの年収であることが分かります。
多くの税理士が平均より高い年収を得ていることが推測される一方で、上記の金額はあくまで「平均」の年収であることに注意しましょう。特に税理士は様々な要素が年収を左右する職業なので、1,000万円以上の年収を稼ぐ人もいれば、500万円程度の年収の人も存在するというわけです。
次の章以降で詳しく解説していきます。
ここでは年代別の年収がどの程度が見ていきます。
20代税理士の年収は460万円ほどとされています。
給与取得者全体の平均年収と同等ということになりますが、これは20代は税理士になりたてだったり、税務の仕事の経験が浅い人が多いことによるものです。詳しくは後述しますが、税理士の年収は経験年数が多いほど上がるため、どうしても20代の平均年収はそこまで高くはならないのです。
30代税理士の年収は650万円程度です。
30代になると税理士事務所などでの経験をある程度積んだ税理士の割合も増えるため、年収も20代に比べて200万円ほど上昇しています。30代はライフイベントが起きやすい時期であることもあり、転職することで年収を上げたり、逆に働きやすさを優先して年収を下げての転職をするという人もいらっしゃいます。
40代税理士の年収は850万円ほどです。
30代は他の事務所や起業への転職が多い年代ではありますが、40代以上は独立開業する税理士の割合も高まります。どこで働くか、またどこかで働くのではなく自身で独立するかによっても年収は変わりますので、ここも後ほど詳しく見ていきましょう。
50代以上だと、900万円以上の年収が実現しやすくなります。
大手の税理士法人ではポジションもかなり高くなり、中小規模の税理士法人ではパートナー税理士になる人も多いため、比例して年収も上がりやすいのです。
なお、税理士の仕事に定年はありません。もちろん企業や事務所によっては定年を設けている場合もあるかもしれませんが、仕事自体は永続的に受け持つことができるのです。
次に経験年数別の税理士の年収を解説します。
先ほど触れたように、税理士の年収は業務経験の年数に比例して上がっていきます。
公認会計士を含めた税理士の経験年数別の年収は以下の通りでした。
経験年数 | 所定内給与 | 賞与など | 平均年収 |
---|---|---|---|
無し | 32万円 | 23万円 | 407万円 |
1年~4年 | 36万円 | 103万円 | 535万円 |
5年~9年 | 33万円 | 96万円 | 492万円 |
10年~14年 | 41万円 | 130万円 | 622万円 |
15年以上 | 65万円 | 273万円 | 1,053万円 |
完璧な正比例になっていないとはいえ、比較的着実に年収が上がっているのが分かります。
男女別でも税理士の年収に差があるのが現実です。
具体的には、男性税理士の平均年収は738万円、女性税理士の平均年収は556万円でした。
性別によって大きな年収差があるように感じた方も多いと思いますが、これは必ずしも税理士業界で女性が出世しにくいからというわけではありません。
女性税理士の方が年収が低い理由の一つが、独立開業する税理士の中で圧倒的に男性の割合が高いことです。独立開業はリスクがあるものの、自身の力量次第で大きく年収を伸ばすことができます。ただし、場合によっては税理士事務所などで働く税理士よりもかなりハードワークになりかねないため、ライフイベントが発生しがちな女性は独立しないことが多いのです。
また、女性税理士は業務委託やパートとして働くことで、子育てや介護の時間を確保するケースも多くあります。そのような税理士は業務に見合った報酬は得られている一方で、見え方としてはフルで働いている税理士よりも年収が少ないことになります。
このように決して男性の方が稼ぎやすい業界というわけではなく、むしろ女性も自身にあった働き方ができる業界だからこそこの差が生まれているといえるのです。
税理士はどこで働くのかによっても、年収が変わります。
税理士の代表的な勤務先である会計事務所と一般企業(管理部門)、そして独立した場合の年収について見ていきましょう。
会計事務所で働く場合、税理士の年収相場は700万円程度です。ただし、大手の税理士法人で働くか、中小規模の会計事務所で働くかによっても年収は大きく左右されます。
大手税理士法人の場合は役職によって年収が変動することが一般的であり、税理士有資格者の各役職での平均年収はおおよそ以下の通りです。
役職 | 平均年収 |
---|---|
スタッフ | 550万円 |
シニアスタッフ | 700万円 |
マネージャー | 1,000万円 |
パートナー | 1,500万円 |
新卒や未経験からの転職の場合はスタッフからのスタートになりますが、役職を着実に上げていけば年収1,000万円も十分に実現可能です。ただBIG4をはじめとした大手の税理士法人では長期的に働く人が多いため、いわゆる「上が詰まっている」状態になりやすく、マネージャーやパートナーになるまで時間がかかる場合もあるようです。
中小規模の会計事務所は従業員数が少ないこともあり、大手のように細かく役職が区切られていることはあまりなく、600万円程度の年収が相場です。担当するクライアントの件数やできる業務の幅などによって年収を上げることはできますが、大手の方が年収が高いというのは傾向としてあります。ただし、大手に比べて認知度が低いため、比較的採用されやすいです。
企業内税理士の年収は平均で600万円ほど、役職が付けば1,000万円以上です。
上場企業などの大手で働くかベンチャー企業で働くかによって業務内容は変わるものの、年収についてはそこまで差はないでしょう。企業内税理士は会計事務所とはまた違った仕事になるので、転職を検討する場合は年収だけでなく仕事への適性があるでしょう。
企業内税理士の年収については、以下の記事で詳しく解説してますので、併せてご覧ください。
独立開業した税理士の平均年収は3,000万円ほどと言われており、税理士の中でも高年収を実現しやすい働き方です。独立開業している税理士の中で、法人化して複数の事務所を持つなどしている場合は、より高い年収を稼いでいます。
一方で、開業したばかりだったり上手く経営を軌道に乗せることができない場合は、300万円などかなり低めの年収になってしまうことも避けられません。高い年収を実現できる一方で相場よりかなり低くなってしまうリスクもある、いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」な働き方だと言えるでしょう。
税理士の独立については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
ここまで税理士の年収について解説してきましたが、年収アップを目指すにはどうすれば良いのでしょうか?以下の3つについて、それぞれ解説します。
どの職種でもいえることですが、所属する職場で実績や信頼を得ることで、担当できる仕事を増やしたり役職を上げてもらうことで、高年収を実現することは可能でしょう。特に税理士業界では経験年数や経験スキルが市場価値に大きく影響しますので、基本的には長く働くほど年収アップしやすくなるでしょう。
勤務税理士として働く場合、いかに税理士としての実績が豊富だったとしても、その勤務先の給与体系に準拠して金額が決まります。そのため、上限なく年収を上げていきたければ、独立開業するのも選択肢です。ご紹介したように、最も高年収を実現しやすいのは開業税理士であり、自分で自分の年収を決めることができるので、会社の基準などによる制約を受けません。
しかし、勤務税理士と違うのが仕事や年収の安定性です。良くも悪くも、年収は自身の力量次第である開業税理士と違い、勤務税理士の年収は短期的に増減するリスクは少ないのです。
安定している勤務税理士として働きたいが年収アップさせたいという方は、より高年収が見込める職場に転職するのもオススメです。
ご紹介したように働き方や企業規模によっても年収は左右されるため、大手税理士法人などへの転職を成功させることで、年収を上げるのも有効な手段といえます。
年収アップのための転職をしようとした場合、BIG4などは非常に人気が高いのでなかなか内定に至らないというケースは少なくありません。また、希望の年収を実現するために重要な年収交渉も自分で行うのは抵抗があるという方も多いでしょう。
そこで、年収アップの転職を成功させるために、士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロをぜひご活用ください。年収交渉はもちろん、希望の求人で内定を獲得するための書類添削や面接対策を実施させていただき、有利な転職活動へと導きます。
是非ご登録から、お待ちしております。
今回は税理士の年収について、様々な観点から解説しました。
税理士の年収がどのような要素で左右され、具体的にどのくらいの金額がもらえるのか、ある程度お分かりいただけたのではないでしょうか?
本記事の最後に、税理士の年収についてよく頂くご質問とその回答をまとめました。
結論、BIG4税理士法人でマネージャークラスになったり、開業税理士として高い実績を上げることで、年収2,000万円の実現は可能です。ただし税理士の中でもかなり限られた存在です。
【参考記事】
ある程度の相関性はあるものの、絶対に忙しくなるというわけでもありません。同じ業務内容でも、ご紹介したように給与体系や企業規模によって年収が変わりますので、業務内容に見合った年収かについては、しっかりチェックしましょう。
給与所得者平均に比べて税理士の年収は高いながらも、「税理士の年収は低い」という意見は一定数存在します。それは、資格の取得難易度や実施している業務内容の高度さに対して金額が見合っていない等の理由によるものようで、実際には生活に困らない年収をしっかりと稼げている税理士がほとんどです。
【参考記事】
税理士として保有している5科目の内訳によって、年収が大きく変わることは無いでしょう。
ただし科目は税理士の得意分野ということもできるため、その科目を活かした仕事をすることで実績を上げ、評価されることで年収を上げられる可能性はあります。
ただ少なくとも、転職活動においては年収を左右する要素にはなりにくいです。
税理士の生涯年収は3.7億円ほどと言われています。この金額も働き方などによって変わることに加え、いつ税理士になったかによっても変わってきます。