監査法人のアドバイザリーは、年収水準が比較的高いことで注目されています。本記事では、役職別・法人別にアドバイザリー職の年収相場を詳しく解説し、キャリア形成や転職を考える上での参考になる情報をお届けします。
監査法人のアドバイザリー部門とは、企業の経営課題やリスクに対して、監査とは別の立場から専門的なコンサルティングを行う部門です。M&A支援や内部統制、ITリスク、事業再生など幅広い分野で企業をサポートし、高度な専門性と実務力が求められるプロフェッショナル集団です。
監査法人のアドバイザリーの平均年収は、法人規模・職位・分野によって幅がありますが、全体平均としては約700万〜900万円程度が一般的です。
監査法人内の監査部門と比較すると、アドバイザリー部門の方が平均的に年収が高い傾向があります。監査法人のアドバイザリー部門の年収は、全国平均で約780万円、東京平均で約810万円とされています。
PwC、デロイト トーマツ、KPMG、EYといったBig4監査法人のアドバイザリー部門では職位や経験年数、担当する業務内容によって大きく変動します。
・入社1年目から3年目のスタッフレベル
年収500万円から700万円程度が相場となっています。基本給が400万円から550万円、賞与やインセンティブが100万円から150万円という構成が一般的です。この段階では基礎的なアドバイザリースキルを身につけながら、様々なプロジェクトに参画して経験を積んでいきます。
・3年目から5年目のシニアアスタッフ
年収は700万円から950万円のレンジとなります。基本給550万円から750万円に加えて、成果に応じた賞与・インセンティブが150万円から200万円支給されます。この職級では、小規模なプロジェクトのリードを任されることが多く、クライアントとの直接的なやり取りも増えてきます。
・5年目から8年目のマネージャー
年収は950万円から1,300万円まで大幅に上昇します。基本給750万円から1,000万円、賞与・インセンティブ200万円から300万円という水準で、チームマネジメントや大型案件の責任者としての役割が期待されます。
・8年目から12年目のシニアマネージャー
年収1,300万円から1,800万円となり、基本給1,000万円から1,400万円、賞与・インセンティブ300万円から400万円が支給されます。この段階では、複数のプロジェクトを統括し、新規クライアント開拓にも積極的に関与することが求められます。
・12年目以降のディレクターやパートナーレベル
年収は1,800万円から3,000万円以上となり、一部のトップパートナーでは5,000万円を超える場合もあります。基本給1,400万円から2,000万円に加えて、利益配分として400万円から1,000万円以上が支給される仕組みとなっています。
太陽有限責任監査法人や東陽監査法人などの中堅監査法人では、Big4と比較して10%から20%程度低い水準となっています。スタッフレベルで450万円から600万円、シニアスタッフで600万円から800万円、マネージャーで800万円から1,100万円、シニアマネージャーで1,100万円から1,500万円程度が相場となっています。ただし、中堅監査法人では比較的早期から重要な役割を担うことができ、キャリア形成の観点では魅力的な選択肢となる場合があります。
監査法人アドバイザリーとして年収アップを目指すなら、報酬水準の高い監査法人への転職や配属先の見直しが有効です。上記でも述べた通り、BIG4などの大手法人では、専門性の高いプロジェクトや国際案件に携わる機会が多く、高年収につながる傾向があります。特にM&Aやデジタル領域に強い法人では高い評価を得やすく、実力次第で年収1,000万円超も現実的です。スキルと実績を武器に、より高い収入を狙える環境を選ぶことが重要です。
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上記でも述べた通り監査法人では、スタッフからシニアスタッフ、マネージャー、パートナーへと昇進するにつれて、年収が大幅に増加します。昇進には、経験年数だけでなく、リーダーシップ、専門知識、成果などが評価されます。マネージャー以上の役職になると、年収1,000万円を超えることも珍しくありません。
アドバイザリーでは専門性が収入に直結します。財務デューデリジェンス(FDD)や企業価値評価(バリュエーション)、サイバーセキュリティ・IT統制のような高単価領域で強みを持つと評価され収入アップに繋がります。つまり、特定分野のスペシャリストになると、引き抜きや独立のチャンスも出てきます。
スキルアップは年収アップへの直接的な評価ポイントです。公認会計士・USCPA(昇進や高難度業務への関与に有利)やTOEIC(800点以上)、Excel・Power BI・Tableauなどのデータ分析スキルなどは年収アップに繋がる代表的な資格です。
監査法人アドバイザリーの業務内容は、企業の経営課題やリスクに対するコンサルティング業務が中心です。監査業務とは異なり、課題解決に向けた助言・実行支援を提供する役割を担っています。主な業務は以下の通りです。
・財務デューデリジェンス(買収対象企業の調査)
・企業価値評価(バリュエーション)
・PMI(買収後統合)支援
・スキーム設計・取引交渉サポート
・J-SOX対応・内部統制の整備・評価
・内部監査体制の構築支援
・不正リスクの評価・モニタリング
・コンプライアンス体制の強化支援
・システム導入・業務プロセスの最適化支援
・IT統制・ITガバナンスの評価と改善
・サイバーセキュリティ体制の構築支援
・データ活用戦略・ITリスク管理
・収益構造の分析と改善策の提案
・コスト削減・業務効率化支援
・資金繰り・財務リストラクチャリング支援
・経営戦略の再構築
企業の財務状況を分析しM&Aや経営改善の提案を行うため、財務諸表の読解・会計基準の理解が必須です。公認会計士、USCPA、簿記2級以上の資格があると有利です。
複雑な課題を整理・分析し、根拠ある提案につなげる力が求められます。ロジカルシンキングやデータ分析に基づいた提案スキルは、クライアント対応の現場で不可欠です。
チーム内での協働、クライアントとの折衝、進行管理などプロジェクトを動かす力が重要です。特にマネージャー職以上では、調整力やリーダーシップが強く問われます。
監査法人アドバイザリー部門における標準的なキャリアパスは、経験年数に応じて段階的に進行していきます。入社から3年目までは基礎的なアドバイザリースキルの習得期間となり、様々なプロジェクトに参画して業界知識と実務経験を積み重ねます。3年目から5年目にかけては専門分野の確立が重要となり、小規模案件のリードを任されるようになります。
5年目から8年目でマネージャーに昇進すると、チームマネジメントが主要な役割となります。部下の指導育成や複数プロジェクトの統括を行いながら、クライアントとの関係構築にも注力する必要があります。8年目から12年目のシニアマネージャー期間では、大型案件の責任者として全体を統括し、新規クライアント開拓にも積極的に関与することが期待されます。
12年目以降はパートナートラックに入り、事業開発の責任を担うようになります。この段階では、個人の専門性だけでなく、組織運営や事業戦略の立案能力が重要となります。昇進を早めるためには、案件成果の最大化、営業への積極的な貢献、特定分野でのエキスパート地位の確立、後輩指導とチーム成果の向上、業界団体での活動や論文執筆などの社外活動が効果的です。
メリットとして、まず業務の多様性が挙げられます。アドバイザリー業務では、上記でも述べた通り、財務DD(デューデリジェンス)、バリュエーション、企業再生、内部統制構築、IT導入支援など、幅広い専門分野に携わることができます。これにより、専門性を深めながら、経営コンサルティングスキルも同時に習得することが可能です。
監査法人のアドバイザリー業務は、M&A支援や内部統制、ITコンサルなどの高単価プロジェクトが多く、 成果や実力がそのまま年収に反映されやすい構造です。マネージャー以上では年収1,000万円超も珍しくありません。またキャリアパスが明確で、昇進するごとに年収が大きく跳ね上がることから、若いうちから高収入を目指せることが大きな魅力です。
監査法人でアドバイザリー経験を積むことで、外資系戦略コンサルティングファーム、投資銀行、PEファンド、事業会社のCFOなど、多様なキャリアパスが開かれます。特に近年は、ESG投資やデジタル変革など新しい分野でのアドバイザリーニーズが高まっており、先駆者として専門性を確立できれば市場価値が大幅に向上します。
BIG4をはじめとする監査法人アドバイザリー部門には、多分野にプロフェッショナルが多数在籍しています。高難度の案件対応や、多国籍なチームとの協働、若いうちからのプロジェクトリーダーの経験などの実績を通じて論理的思考・提案力・リーダーシップを磨いていけます。
コンサルティングファームのような自由度に加えて、監査法人は法定監査業務による安定収入がある点が特徴です。 また、監査法人のブランド力はクライアントからの信頼が厚く、「BIG4出身」である場合は市場価値が高くなり、転職の際にも活かせます。また、業務の標準化、品質管理が徹底されている点からも、監査法人ならではの安定感と信用力が強みと言えます。
アドバイザリー業務はプロジェクト型で納期が明確に決まっており、タイトなスケジュールで動くことが多いです。 特にM&Aのクロージング直前、年度末・四半期末の評価業務集中時のような時期は、残業や休日出勤が増えることもあります。つまり、ワークライフバランスを重視する方にとってはデメリットと言えます。
監査法人のアドバイザリー業務は、専門性を活かして高い年収を実現できる魅力的なキャリアパスです。Big4監査法人では新卒入社から10年程度で年収1,000万円超を目指すことが現実的であり、その後のキャリア次第では2,000万円から3,000万円以上の年収も十分に可能です。ただし、このような高年収を実現するためには、継続的なスキルアップと専門性の深化が不可欠となります。
転職を検討される際は、単純な年収比較だけでなく、キャリアの長期的な成長性、ワークライフバランス、専門性の市場価値なども総合的に評価することが重要です。監査法人アドバイザリーは確かに高年収が期待できる職種ですが、激務であることも事実であり、自身のライフスタイルや価値観と照らし合わせて判断する必要があります。