他の国家資格と比べて難易度が低いと言われているキャリアコンサルタント、実際の難易度はどのくらいなのでしょうか?必要な勉強時間から、勉強方法、試験の概要や合格率まで解説しています。また、独学の合格は可能なのか、メリット・デメリットを挙げて紹介しています!
キャリアコンサルタントとは2016年4月施行の職業能力開発促進法において国家資格と定められている資格で、2025年5月末での資格者数は82,052人となっています。キャリアコンサルティングとは「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」と定義されています。
キャリアコンサルタントの主な仕事は、個人のキャリア形成に関する相談に乗ることです。
「自分に合う仕事がなかなか見つからない」
「自分らしく働くためにはどうすればよいのか」
「子育て後の仕事の復帰について相談したい」
など、相談者のキャリア形成についての様々な相談に乗ります。
また、近年では個人の相談に乗ることだけにとどまらず、研修講師やファシリテーター、組織内キャリア形成制度の設計や運用など、活動の幅が広がってきています。
キャリアコンサルタントの資格を活かせる職業は多くあります。具体的には、企業の人事、人材派遣・紹介会社、学校のキャリアセンター、ハローワークや自治体の就労支援窓口などが挙げられます。また、独立してフリーランスのキャリアコンサルタントとして活動する場合は、企業等と年間契約を結ぶケースが見られます。
キャリアコンサルタント試験合格のために必要な勉強時間はおよそ200時間と言われています。1日2時間勉強すると仮定すると、約3ヶ月かかる計算になります。
3ヶ月と聞くと、簡単に資格が取れると思えますが、毎日2時間勉強するのは簡単なことではありません。毎日2時間とはいかなくても日々勉強を続けることが合格の鍵になるでしょう。
キャリアコンサルタントの資格を取得するために、必要な勉強時間はおよそ200時間といわれていますが、他の国家資格の取得に必要な勉強時間はどのくらいなのでしょうか?人気資格と呼ばれる国家資格に必要な勉強時間を紹介していきましょう。
資格 | 勉強時間 |
---|---|
宅地建物取引士 | 約300時間~500時間 |
ファイナンシャル・プランニング技能士2級 | 約300時間 |
日商簿記2級 | 約250~350時間 |
司法書士 | 約3,000時間 |
公務員採用試験(一般職・教養試験) | 約500時間 |
こちらが人気国家資格の取得に必要な勉強時間のおおよその目安です。
ほとんどの資格が300時間から500時間必要となっており、司法書士は約3000時間と非常に多くの勉強時間が必要となります。これらからキャリアコンサルタントの資格の難易度は他の国家資格と比べて低いことが分かります。
キャリアコンサルタント試験は、次のいずれかの要件を満たした方が受験できます。
・厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者
・労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に 関し3年以上の経験を有する者
・技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した者
・上記の項目と同等以上の能力を有する者
試験科目は次の通りです。
・職業能力開発促進法その他関係法令に関する科目
・キャリアコンサルティングの理論に関する科目
・キャリアコンサルティングの実務に関する科目
・キャリアコンサルティングの社会的意義に関する科目
・キャリアコンサルタントの倫理と行動に関する科目
キャリアコンサルタント試験は、厚生労働大臣が登録した次の登録試験機関が行います。
▸「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会」
▸「特定非営利活動法人日本キャリア開発協会」
令和7年度(2025年度)
特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会
【学科学科試験・実技試験(論学述】)
実施回 | 試験日 |
---|---|
第29回 | 令和7年7月6日(日) |
第30回 | 令和7年11月2日(日) | 第31回 | 令和8年3月1日(日) |
【実技試験(面接)】
実施回 | 試験日 |
---|---|
第29回 | 令和7年7月11日(金)、12日(土)、13日(日)、19日(土)、20日(日)、21日(月) |
第30回 | 令和7年11月8日(土)、9日(日)、15日(土)、16日(日)、22日(土)、23日(日) | 第31回 | 令和8年3月7日(土)、8日(日)、13日(金)、14日(土)、15日(日)、20日(金)、21日(土)、22日(日) |
特定非営利活動法人日本キャリア開発協会
【学科試験・実技試験(論述)】
実施回 | 試験日 |
---|---|
第29回 | 令和7年7月6日(日) |
第30回 | 令和7年11月2日(日) | 第31回 | 令和8年3月1日(日) |
【実技試験(面接)】
実施回 | 試験日 |
---|---|
第29回 | 令和7年7月12日(土)、13日(日)、19日(土)、20日(日) |
第30回 | 令和7年11月8日(土)、9日(日)、15日(土)、16日(日) | 第31回 | 令和8年3月7日(土)、8日(日)、14日(土)、15日(日) |
先ほど、キャリアコンサルタントの資格は他の国家資格と比べて難易度が低いと紹介しましたが、実際にキャリアコンサルタント試験の難易度はどのくらいなのでしょうか?
令和7年3月に行われた「第28回キャリアコンサルタント試験」の結果から見ていきたいと思います。
試験種別結果
申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|---|
学科試験 | 6,812人 | 6,298人 | 4,310人 | 68.4% |
実技試験 | 6.321人 | 5.969人 | 4.040人 | 67.7% |
平均点
学科(100点満点) | 実技(150点満点) | |
---|---|---|
平均点 | 73.1点 | 92.2点 |
これらから分かるように、キャリアコンサルタント試験は合格率が「学科試験」・「実技試験」ともに65%を超えており、他の国家資格と比べて難易度が低いことが分かります。
また、学科試験、実技試験どちらか1科目のみ合格した場合は、次回の受験の際に持ち越せるため、1回の受験で両方合格する必要がないことも難易度を下げている要因と考えられます。
キャリアコンサルタント試験を受験した人のほとんどは、厚生労働省が認定する養成講習の課程を修了した人です。独学受験となる実務経験者枠で受験した人の数は、学科試験・実技試験ともに全体の約10%となっています。詳細は以下の通りです。
第28回キャリアコンサルタント試験の受験者数
受験資格 | 学科試験 | 実務試験 |
---|---|---|
【1】養成講習修了者 | 5,650人 | 5,310人 |
【2】実務経験者 | 645人 | 628人 |
【3】技能検定の片方合格者 | 3人 | 31人 |
独学の合格率は、養成講習修了者と比較して低い傾向にあります。第28回キャリアコンサルタント試験での、独学の合格率は学科試験で約60%、実技試験で約59%です。比べて、養成講習修了者の合格率は学科試験で約69%、実技試験で約69%です。このように、独学の合格率は、養成講習受講者よりも約10%低いと言えます。
キャリアコンサルタント試験は独学よりも養成講習を修了した人の方が合格率が高いことが分かりました。しかし、独学で受験することのメリットもあります。この章では、独学で受験するメリットとデメリットについて紹介していきたいと思います。
独学で受験する最も大きなメリットの一つは、「キャリアコンサルト養成講座の受講料がかからない」ことです。
養成講座の受講料は、一般的に30~40万円と非常に高額です。専門実践教育訓練給付金という制度を利用すれば50~70%の受講料が返ってきますが、それでも10~20万円の負担は必要になります。
この高額な受講料が不要になることは大きなメリットと言えるでしょう。
キャリアコンサルタント養成講座は3~6カ月間の受講期間が必要です。そのため、仕事や学校で忙しい人は受講が難しいといった懸念点があります。しかし、独学の場合は自分のペースで学習することができ忙しい人でも、国家試験に挑戦しやすいと言えるでしょう。
前半でも紹介した通り、独学での受験は養成講習修了者に比べて、合格率が低いという結果が出ています。より高い合格率を求めるのであれば、養成講習を受講してみるべきといえます。
キャリアコンサルタントは目の前にいるクライアントの相談に応じて助言や指導を行う専門家です。実技試験では、試験会場にいる相談者と対話を重ねているうちに、態度や姿勢、面接が展開しているかなどが測られています。
独学の場合、講師や共に学ぶ仲間がいません。そのため、面接の練習機会がなかったり、少ないといった問題点があります。そのため、養成講習団体などが行う対策講座を受けてみるのも一つの方法です。
キャリアコンサルタント養成講習は150時間相当のカリキュラムがあります。150時間相当の学習を独学でするためには、スケジュールを立てて学習する必要があります。スケジュールを立てて、計画通り実行することは非常に大変です。独学で学習する場合、スケジュール管理をするという固い意思が必要と言えるでしょう。
学科試験の勉強は、参考書や問題集を活用してみましょう。
学科試験は、心理学やカウンセリングの専門知識が多いため、初めて学ぶ方は何から始めればいいか分からないと思います。
まずは、参考書に目を通してみましょう。そして、重要なテーマごとにまとめ、自身で分かりやすくまとめると、学習した内容が定着していきます。
また、興味のある分野や、理解しやすい分野から始めるのも良いでしょう。毎日コツコツと続けることが知識の定着に繋がります。
参考書や問題集で知識が定着してきたら、過去問を解いてみましょう。
試験実施機関であるキャリアコンサルティング協議会と日本キャリア開発協会のサイトでは、過去に行われた直近3回分の試験が公開されています。また、試験実施機関公式の過去問集もあるため、過去のキャリアコンサルタント試験の出題傾向を把握した対策ができます。試験の傾向をつかむことは非常に重要です。過去問を繰り返し解き、試験の傾向をつかみましょう。
過去問を繰り返し解き、傾向をつかむことができたら、模擬試験を解いてみましょう。模擬試験は参考書に付属されている場合が多く、本試験を分析した内容になっているため、取り組んでおくとよいでしょう。
模擬試験を解く際は、実際の試験時間の100分を測って取り組みましょう。実際の時間を測ることで、時間配分を確認することができ、本番の試験で時間配分を誤ってしまうことを防ぐことができます。
面接試験の対策にも参考書を活用することができます。実技試験対策用の参考書を活用し、面接試験のポイントをつかみましょう。回答パターンを複数準備しておくと、安心して面接に取り組むことができます。
面接試験の対策としてYouTubeなどの動画共有サービスの利用があります。
動画共有サービスには、面接試験の対策を実演付きで解説してくれている動画があります。現役のキャリアコンサルタントの方が挙げている動画もあるため、参考になるでしょう。空き時間や移動時間で視聴することをおすすめします。
キャリアコンサルタントの資格は他の国家試験に比べて難易度が低いため、必要な勉強時間も200時間と比較的短い時間で取得できる国家資格です。そのため、独学での合格もできると言えます。しかし、独学の人の合格率は、養成講習を受講した人に比べ低く、正しい勉強方法で学習する必要があると言えます。確実にキャリアコンサルタントの資格を取得したい方や、お金や時間に余裕がある方は独学よりも養成講習を受講するべきと言えるでしょう。