「財務」というワードはよく聞くのに、実務で何をしているのかわからない!という方や、これから財務を目指している方、ちょうど財務部に異動したという方に向けて、会計・経理から資金管理、財務分析まで、財務の全業務を徹底解説!財務に興味がある方には必見の完全ガイドです。
財務とは、企業や組織の予算管理や資金繰り・資金調達などを行う仕事のことです。
企業の経営ビジョンに基づいて長期的な財務戦略を策定します。
その財務戦略に基づいて収支を管理し、不足分は資金調達や株式・社債発行、コスト削減などで補填・対応し、余剰分は適切に投資・運用・管理します。
財務の業務は、期間ごとに「短期業務」「中期業務」「長期業務」に分けて考えることができます。
こちらの記事で、それぞれの業務を詳しく解説していきます。
短期業務とは、1日~数週間のサイクルで発生する日常的な業務を指しています。企業や組織のキャッシュフロー(資金繰り)を安定させるために、日々の予算管理や支払い業務、金融機関との折衝などを行います。
以下でそれぞれの業務を解説していきます。
企業や組織の資金を適切の管理し、適正なキャッシュを維持・確保できるように調整します。
特に月末月初は、未入金が発生していないか、確認が必要になります。
・企業の複数の銀行口座の残高を確認
・主要銀行の預金口座間で資金を移動(例:売上金が入る口座→支払い用口座へ移動)
・金利の高い口座へ一時的な資金移動を実施(資金効率の最適化)
・銀行のネットバンキングや財務システムで入金状況をリアルタイム確認
・未入金(売掛金)のチェック → 回収遅延の有無を確認し、必要に応じて営業や経理と連携
・大口取引先からの支払い確認(取引条件通りに入金されているか)
・主要な支払い予定(人件費、仕入れ費、家賃など)を再確認し、残高不足を防止
・1日~1週間単位での資金繰り表を作成し、資金の流れを可視化
・毎朝、最新の入出金データを反映し、計画との差異を分析
・予測キャッシュフローを基に、資金の不足や余剰をチェック
・短期借入が必要かどうかの判断(銀行との調整)
支払い漏れがないように処理を行い、企業や組織の信用を維持します。支払い遅延が何度も発生してしまうと、取引停止に繋がることがあります。
・取引先(仕入れ先)への支払いスケジュールを確認
・支払い期限に応じた資金確保(必要なら銀行借入を検討)
・振込処理を実施し、支払い完了を確認
・支払いエラーが発生した場合、即座に対応
・従業員の経費精算の確認・振込
・毎月の給与振込スケジュールに沿った資金手配
・社会保険料・税金(法人税、消費税など)の納付手続き
資金不足を回避するため、金融機関との連携を密に行います。
・当座貸越(銀行の短期融資枠)の利用判断
・借入金の金利・返済スケジュールの確認
・必要に応じて追加融資の相談・交渉
・大口の支払いが発生する前に、適切な資金配分を実施
・定期預金の解約や運用資金の引き出し
・金融機関と定期的なミーティングを実施し、最新の金利動向を確認
・借入契約に関する書類の更新(必要に応じて)
企業の売上が確実に現金化されるように、売掛金の回収を徹底します。
・取引先ごとの売掛金リストを更新
・入金予定日を確認し、遅延がないかチェック
・期限を過ぎた未入金案件をリストアップ
・営業部門と連携し、取引先に督促(メール・電話)
・必要に応じて取引先との支払い条件の再交渉
財務データを整理し、経営陣に提供します。
・日々のキャッシュフローサマリーを作成し、経営陣へ報告
・予実(予算 vs 実績)を比較し、差異分析
・短期的な資金繰りリスクを特定(例:資金不足が見込まれる場合)
・金融市場の動向をチェックし、急な資金調達が必要になるリスクを事前に検討
予期せぬ事態に迅速に対応します。
・緊急の支払い発生時の資金調達(例:予想外の設備修理費)
・予期せぬ入金遅延による資金ショート回避策の検討
・各部署からの支払い・予算に関する問い合わせ対応
・経営陣や営業チームからの財務データ提供要請
中期業務とは、数ヶ月から数年単位で計画・実行される財務業務を指します。企業や組織の成長を支える資金調達や財務戦略の策定、リスク管理などが含まれます。
以下でそれぞれの業務を解説していきます。
・銀行からの借入(長期借入・短期借入)を計画・実行
・借入条件(金利、返済期間、担保条件など)の交渉
・返済スケジュールの管理・見直し
・コベナンツ(財務制限条項)の遵守状況のチェック
・資本市場での社債発行の検討(公募債・私募債)
・発行条件(金利、償還期限、発行額)の決定
・格付け機関との調整・交渉
・新株発行による資金調達の検討
・投資家(機関投資家、VC)との交渉
・株式市場の動向を分析し、最適なタイミングで発行
企業の財務状況を分析し、将来の成長に向けた財務戦略を立案します。
・自己資本比率と負債比率の最適化(財務レバレッジの管理)
・配当方針の決定(配当利回り、配当性向の検討)
・株主還元策(自社株買い、特別配当など)の検討
・設備投資のROI(投資利益率)分析
・M&A(企業買収)の財務的な検討
・事業ポートフォリオの最適化(成長事業への資源配分)
財務リスクを把握し、適切にコントロールすることで企業の安定性を高めます。
・海外取引に伴う為替変動リスクの分析
・為替ヘッジ(為替予約・デリバティブ取引)の活用
・借入金の金利動向をチェックし、固定・変動金利の最適化
・金利スワップなどのヘッジ手法の活用
・取引先の信用評価(財務状況の分析、信用調査会社の活用)
・貸倒リスクの最小化(信用保険の活用)
企業の業績を予測し、計画と実績のズレを分析・修正します。
・売上・利益・コストの予算目標を設定
・部門ごとの予算配分の決定
・予算と資金計画の整合性チェック
・実績データを基に予算との差異を分析
・予算未達・超過の要因を特定し、修正対応
・財務KPI(ROE、ROA、EBITDA)のモニタリング
企業の財務状況を適切に開示し、投資家や金融機関と良好な関係を築きます。
・投資家向け決算説明会の資料作成・発表
・株主・アナリストとの定期的なミーティング
・株式市場の動向分析
・銀行との定期的な打ち合わせ(融資枠の見直し)
・格付け機関との連携(企業の信用格付け向上策の検討)
長期業務は、企業の持続的な成長や競争力強化を目的とした財務戦略の立案・実行が中心となります。期間の目安は3年以上で、IPO(株式上場)、M&A(企業買収・合併)、グローバル財務戦略、長期資本政策の策定などが含まれます。
以下でそれぞれの業務を解説していきます。
企業の成長に合わせて、自己資本と負債のバランスを最適化し、財務の安定性と資本効率の向上を図る業務です。
・自己資本比率、負債比率(D/Eレシオ)を分析・最適化
・借入金の長期化(短期借入→長期借入への転換)
・資金調達手段(社債発行・増資・銀行融資)の長期的な計画立案
・配当方針の策定(安定配当・成長配当・特別配当の選択)
・自社株買いの実施による株主還元策の検討
・株主構成の見直し(安定株主・機関投資家対応)
株式上場を目指し、資本市場からの資金調達力を強化する業務です。
・証券会社・監査法人との折衝・協議
・株式公開に向けた財務・会計体制の整備
・内部統制(J-SOX対応)の強化
・目論見書・投資家向けプレゼン資料の作成
・上場審査対応(証券取引所・監査法人のチェック)
・上場後の安定株主対策
企業の成長を加速させるため、M&Aや事業再編の財務面での意思決定を支援します。
・買収候補企業の選定と財務分析
・買収資金の調達計画(銀行融資・社債発行・増資)
・M&Aによる財務シナジーの試算
・買収契約の締結とデューデリジェンスの実施
・PMI(Post Merger Integration)による統合プロセス管理
・買収後の業績モニタリング
海外展開を進める企業にとって、国際的な財務戦略の立案とリスク管理が必要になります。
・海外現地法人の財務・資金繰りのモニタリング
・送金スキームの最適化(タックスヘイブン対策)
・グローバルキャッシュマネジメント(CMS)
・移転価格税制(Transfer Pricing)への対応
・タックスプランニング(最適な税務戦略の策定)
・BEPS(税源浸食と利益移転)規制対応
企業の持続的成長を実現するために、長期的な視点で投資戦略を策定し、資本配分を最適化します。
・設備投資の資金計画とROI(投資利益率)分析
・研究開発(R&D)への投資戦略の立案
・収益性の低い事業の売却・撤退戦略の立案
・新規事業・成長分野への資本配分の最適化
財務職は、企業の資金管理や財務戦略を担う役割ですが、日々の業務(短期業務)と年間を通じた業務(中期・長期業務)の両方をバランスよく行います。
企業の財務部門の業務は、会社の規模感(例えば、非上場・上場・上場準備)などによって異なります。特に、資金調達・財務報告・投資家対応などに違いが出てきます。
以下では、それぞれの1日のスケジュールと、年間のスケジュールを解説していきます。企業の決算期によって、年間スケジュールなどは前後しますので、一例としてご確認ください。
非上場企業の財務業務の特徴としては、基本的に資金調達手段としては銀行融資となり、経営者とも直接連携が取りやすいことが特徴です。投資家対応がない企業が多いため、メイン業務は資金管理や借入交渉となります。
8:00~9:00 | 出社・銀行口座の確認、資金繰りチェック |
9:00~11:00 | 入出金処理(銀行振込・支払処理)、資金管理表の更新 |
11:00~12:00 | 銀行との打ち合わせ(融資相談・金利交渉) |
12:00~13:00 | ランチ休憩 |
13:00~14:00 | 資金調達計画の検討(借入・社債発行) |
14:00~16:00 | 経営層向け財務報告資料の作成 |
16:00~17:00 | 投資計画のシミュレーション(設備投資・事業投資) |
17:00~18:00 | 翌日の準備・退社 |
1~3月 | 年度決算対応、銀行との融資交渉、新年度の資金計画策定 |
4~6月 | 設備投資計画の実行、資金繰りの見直し |
7~9月 | 半期決算の対応、記入機関との金利交渉 |
10~12月 | 来年度の財務戦略策定、借入枠の見直し |
上場企業の財務業務の特徴としては、株式市場を活用した資金調達が可能になります。投資家・株主対応が必ずついてきますので、IR資料の作成などの業務も入ってきます。また、四半期ごとの決算報告が義務化されているため、年間スケジュールも濃くなっています。
8:00~9:00 | 株価・市場投稿の確認、為替リスクのチェック |
9:00~11:00 | 入出金処理、資金繰りチェック、ヘッジ取引 |
11:00~12:00 | 投資家向け財務データの整理・IR対応資料作成 |
12:00~13:00 | ランチ休憩 |
13:00~14:00 | CFO・経営人向けの財務報告資料作成 |
14:00~16:00 | 社債発行やM&Aの資金計画の検討 |
16:00~17:00 | 証券会社・機関投資家とのミーティング |
17:00~18:00 | 翌日の準備・退社 |
1~3月 | 期末決算対応、配当政策の決定、投資家向け説明会 |
4~6月 | 株主総会の準備・開催、設備投資計画の実行 |
7~9月 | 中間決算対応、資本政策の見直し、M&A検討 |
10~12月 | 予算策定、財務戦略の策定、新規資金調達の計画 |
上場準備企業の財務業務の特徴としては、IPO(新規株式公開)のために財務管理体制を強化していくフェーズです。証券会社や監査法人との連携が増えていきます。
8:00~9:00 | 出社・銀行口座の確認、資金管理表の更新 |
9:00~11:00 | IPO準備資料の作成(財務諸表の整理・監査法人対応) |
11:00~12:00 | 証券会社との打ち合わせ |
12:00~13:00 | ランチ休憩 |
13:00~14:00 | 内部統制強化(J-SOX対応のチェックリスト整理) |
14:00~16:00 | 財務戦略の策定(資本政策・株式発行計画) |
16:00~17:00 | CFO・経営陣とのミーティング(IPO準備進捗報告) |
17:00~18:00 | 翌日の準備・退社 |
1~3月 | 監査法人対応、IPO審査用財務諸表の作成 |
4~6月 | 証券取引所との上場審査対応、J-SOX準備 |
7~8月 | 目論見書作成、投資家向けロードショー準備 |
9~12月 | 上場手続きの最終調整、証券会社との連携 |
財務職は、日々の資金管理(短期)から成長戦略(長期)まで幅広い業務を担当します。経理・会計業務などから財務への転職を目指したいという方や、レベルをあげて上場企業や上場準備企業にチャレンジしたい方は、財務職の転職に詳しい株式会社ヒュープロへぜひご相談ください!