税理士事務所への転職をめざすにあたって、「税理士事務所はやめとけ」と言われることもあるかもしれません。その理由の根底には、様々なマイナス面のイメージや懸念点があるようです。今回は、そんな「税理士事務所はやめとけ」と言われる理由や、ブラックな職場の特徴、税理士事務所で働く魅力などについて解説します。
「税理士事務所はやめとけ」と言われる代表的な理由として、以下が挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
どうしても税理士事務所には、ブラックな働き方をしているというイメージがついて回ります。その大きな要因として、繁忙期が激務になりやすいことがあります。
税理士業界は、日本企業の多くが決算月としている3月の前後で業務量が増える傾向にあり、その時期を繁忙期と呼びます。この時期、場合によっては残業時間が80時間になったり、休日返上で仕事をしなければならないケースもあるため、税理士事務所で働くと疲弊してしまうというイメージがついてしまっています。
税理士事務所の平均年収が、あからさまに低いというデータはありません。それでも「給料が安い」から「やめとけ」と言われるのをしばしば見かけます。
そのように言う人は、仕事の専門性や難易度に対して給料が見合ってないと感じているようです。実際、税理士事務所では税務に関する幅広い知識が必要な業務が多く、税務書類の作成や税務相談などといった税理士の独占業務を担当するためには、国家資格の中でも難易度の高い税理士資格を取得しなければなりません。
それなりの勉強や経験を積んでも年収が他の職種よりも大きく高いわけではないという点で、税理士事務所で働くのに否定的な意見もあるのです。
税理士事務所で働くにあたって、多くの人が「税理士を取って、いずれは独立したい」というプランを持っています。独立して税理士事務所を開業すれば「経営者」となることができるものの、その分リスクも伴います。雇われて給料をもらうのと違って、自身の経営手腕が稼ぎに直結するからです。うまくいかなければ、せっかく勉強して税理士になったのに、生活がギリギリできる程度の収入になることもあり得るのです。
このようなリスクを背負うくらいなら、そもそも税理士事務所で働くのから「やめとけ」と主張する人もいらっしゃいます。
税理士事務所は一般的に、税理士が1人で代表を務めている事務所のことを指します。このような事務所の9割ほどが従業員10名未満の零細事務所であるとされています。
そんな零細事務所では所長の決裁権が非常に強く、ワンマン気質の所長も少なくありません。また、従業員とうまくコミュニケーションが取れないと、少ない人数の中で孤立してしまいやすくなります。
このような職場環境に対しても、あまり良いイメージを持たない人が一定数いらっしゃるようです。
「税理士事務所はやめとけ」と言われる理由の一つに、ブラックなイメージがあることを挙げました。実際、一般的に「ブラック」と呼ばれる働き方の税理士事務所は、全く無いというわけではありません。ここではブラックかどうか見極めるポイントとして、そのような事務所の特徴をご紹介していきます。
ブラックかどうかについて、残業時間を見て判断するというのはある意味王道の手段といえるでしょう。ただし、税理士事務所の残業時間を確認するにあたって、いくつか注意すべき点があります。
一つ目はみなし残業についてです。士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロに掲載されている税理士事務所の求人の多くが、残業代について「みなし残業」として支払うと記載されています。「みなし残業」はある一定の残業代を、それより働かなくてもそれ以上働いても支給する制度です。
「みなし残業」であること自体は業界内では珍しくないのですが、その残業代が何時間分なのか、そして実際の残業時間はどのくらいなのかは、ブラックかどうかを判断できるポイントです。例えば、みなし残業代が20時間分の事務所で実際は40時間働いている場合は、ブラックであると判断できます。
残業時間が求人票に記載されている場合、通常は「月平均の残業時間」が書かれているでしょう。ただこの数字では必ずしもブラックかどうか判断できません。なぜなら、激務になる繁忙期の単月の残業時間が分からないからです。
例えば、1月~4月の残業が60時間で他の月が15時間だとすると、月平均残業時間は30時間と表記されます。この数字を「そこまで多くない」と感じても、中身は月ごとに大きな差があるというケースもあるのです。
つまり、繫忙期の残業時間が何時間かこそが、ブラックかどうかを判断する重要なポイントなのです。
離職率が高いことは、その事務所がブラックであるということの裏返しといえます。
離職率が高いのは、職場環境に不平不満があり辞める人が多いことだけでなく、常に従業員が不足して一人当たりの業務量が多いことが想定されるからです。
税理士事務所は複数回の転職を経験した方も多いため、多少離職率が高くても問題ないですが、30%以上の場合はブラックな事務所の可能性を考えた方がよいでしょう。
先述したように、税理士事務所の代表先生にワンマン気質があることも珍しくありません。ワンマン気質のある人にカリスマ性を感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、ブラックでない事務所に入りたいのであればそのような事務所は避けるべきでしょう。
ただし、外から見える数字で「ワンマンかどうか」は判断しづらいです。そのため、実際に面接する中で人柄や性格を見ていくと良いでしょう。なお面接で判断するにあたっては、オンラインではなく対面面接をするのがオススメです。実際に職場内の雰囲気や代表との相性を確かめるには、生の現場に行くのが一番だからです。
ご紹介したように、税理士事務所の仕事は専門性や難易度が高いため、未経験から働くにあたっては、それなりの教育環境が無いと仕事ができるようになりません。
求人票で教育環境についての記載が無い税理士事務所では、未経験でも仕事を振られ、いわゆる「習うより慣れよ」のスタイルである可能性があります。教育研修や研修制度を取り入れるかは、代表の方針や人手の充足状況などによって変わりますが、求人票もしくは事務所のホームページで把握することができます。
税理士事務所には税理士試験の受験生が多く在籍しているため、試験前に集中して勉強できるよう、試験休暇として一週間ほど休める事務所が多いです。
逆に、そのような制度が無い事務所は注意が必要です。これは税理士試験の合格を目指していないとしても同じです。なぜなら福利厚生が充実していないということは、他の労働環境も充実していない可能性も示唆するからです。例えば年間休日が少なかったり、年末年始以外の長期休暇が取れない、などの環境がありえます。
「税理士事務所はやめとけ」と言われることがあるものの、実際に多くの人が働いているのも事実です。もちろん、それは相応の魅力やメリットを感じる人が多いからでしょう。ここでは、そんな税理士事務所で働くメリットをご紹介します。
先述した税理士の独占業務は、税制度がある限り必要とされ続けます。また、仕事がAIに取って代わられるとの意見もありますが、実際は近未来的になくなるような仕事ではないでしょう。税理士の仕事の将来性については、以下の記事で詳しく解説しています。
税理士を目指すのであれば、税理士事務所は最も適した就業先といえます。実務を通じてスキルを習得できるほか、資格取得を応援する事務所も多く、スクールへの通学時間に配慮した働き方ができることもあります。
税理士事務所はクライアントにサービスを提供するにあたって、やりがいを感じる機会が多いです。具体的には、以下のようなやりがいを感じることができるでしょう。
税理士のやりがいについては以下の記事でより詳しく解説してますので、あわせてご覧ください。
魅力やメリットではありませんが、実際にブラックといわれるような税理士事務所はそこまで多くはありません。近年の働き方改革の推進などもあり、ホワイトな税理士事務所が増えています。逆にブラックな環境のままでは売り手市場の税理士業界では採用ができないため、ホワイト化が進んでいるのです。
ですので、数少ないブラックな税理士事務所さえ避けることができれば、魅力の多い仕事を充実の環境で行うことができるのです。
では、ホワイトな税理士事務所に転職するにはどうすればいいのでしょうか?
ご紹介した5つの特徴のいずれかがある事務所はブラックな可能性がありますので、避けておくことが無難でしょう。ただし、採用にマイナスの影響を与えかねない数字や環境については、求人票にわざわざ書かないことも考えられます。繁忙期の残業時間も離職率も、求人票に必ず書かなければならない項目では無いため、むしろ書かれていないケースが多いでしょう。
そのような部分を懸念点として、面接時に質問すれば解決するかもしれません。しかし、働き方に関する質問などを過度にすると「働き方さえよければどの事務所でもいいのではないか」など、無駄な疑念を抱かれて合格が出ない可能性もあります。ホワイトな税理士事務所でそのような結果になってしまうのはもったいないですよね。
そうならないためにオススメなのが、転職エージェントの利用です。転職エージェントは求人票に記載されていない企業情報も詳細に把握しているため、リアルな情報を採用側に直接質問せずとも得ることができます。
特に税理士事務所への転職には、士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロをご活用ください。業界特化のため、選考通過率の高い面接対策や書類添削も実施でき、面接の日程調整や年収交渉など、自分では面倒と思える部分も対応してくれます。まずはご相談から、お待ちしております。
今回は「税理士事務所はやめとけ」と言われる理由や、ブラックな事務所の特徴について解説しました。「ブラック」な事務所はまだ存在するものの、働き方改革などを受けてその数は大きく減少しています。魅力が多く、ホワイトな環境が増えている税理士事務所への転職に、ぜひ挑戦してみてください!