税理士は、税の専門家として納税者が自らの所得を計算し、納税額を算出する申告納税制度の推進の役割を担う専門家です。そんな税理士を名乗るために、税理士試験に合格するのはもちろんですが、他にもいくつかの手順を踏む必要があります。本記事では、税理士になるまでの流れについて、分かりやすくご紹介します。
ご説明したように、税理士試験に合格するだけで直ちに税理士を名乗ることはできません。具体的には以下のような流れを踏む必要があります。
税理士試験の受験資格は、2023年(令和5年)の第73回試験から緩和されました。
高校生や大学1・2年生の場合は日商簿記1級を所持していなければならない等の受験資格がありましたが、簿記論および財務諸表論は誰でも受験可能、税法科目は法律・経済分野以外を履修した大学生や卒業生でも受験ができるようになったのが、大きな変更点と言えます。
受験資格については、「学識」「資格」「職歴」の3つに大きく分けられ、どれか一つでも該当すればクリアしたことになります。
それぞれの受験資格については後述します。
受験資格を満たした上で、税理士試験の合格を目指します。
税理士試験の難易度は高く、合格するのに4,000時間ほどの勉強が必要とされています。合格率も決して高い数字ではありませんので、万全の準備をして試験に臨まなくてはなりません。
税理士試験の難易度についても後述します。
税理士試験に合格したからと言って、ただちに税理士を名乗れるわけではありません。税理士として登録するための要件である「2年間の実務経験」をしなくてはならないのです。ただし、試験合格前に実務経験をしている場合についても対象です。
税理士試験合格および2年の実務経験をしたら、税理士登録の申請書類を各地域の税理士会に提出する必要があります。
申請が受理され日本税理士会連合会の税理士名簿に登録されれば、税理士を名乗ることができます。
先述したように、税理士試験の受験資格は学識・資格・職歴によるものがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
学識による受験資格には、以下が該当します。①~⑤のいずれかを充たせば、税理士試験を受験できます。
資格による受験資格には、以下が該当します。
特に日商簿記検定1級については、税理士試験の必須科目である簿記論の試験範囲と重複する部分もあるため、資格取得による受験資格取得をする人が多いです。
職歴による受験資格には、以下が該当します。
税理士試験の受験資格について、注意点や緩和された要因などについては、以下の記事にて詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
令和7年度(第75回)税理士試験は下記の日程により実施予定です。
日程は変更になる可能性もございますので、詳しくは国税庁 税理士試験の受験案内をご確認ください。
試験実施官報公告 | 令和7年4月4日(金) |
試験申込受付開始日 | 令和7年4月21日(月) |
試験申込受付締切 | 令和7年5月9日(金) |
試験実施 | 令和7年8月5日(火)~令和7年8月7日(木) |
合格発表 | 令和7年11月28日(金) |
税理士試験は難関国家試験の一つとされることもあるなど、決して簡単に合格できるとはいえない試験です。先述したように合格には4,000時間の勉強が必要とされており、仕事をせずに勉強に専念したとしても1年での合格はかなり難しいとされています。
また、独学で勉強を進めるのもあまり現実的ではなく、数十万~100万円程度の費用をかけて専門学校や資格学校・通信講座を利用して合格を目指すのが一般的です。
さらに試験の合格率を見てみましょう。
2024年の結果をみてみると、5科目合格を意味する官報合格者は578人で、受験者全体の約1.6%、一部科目合格者を含めると5,762人で約16.6%でした。
このことからも、合格までの道のりが険しく長いことがお分かりいただけるかと思います。
税理士試験の難易度について、以下の記事も併せてご参照ください。
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税理士試験の勉強時間について
税理士試験の勉強方法について
2023年税理士試験の結果について
税理士登録の実務経験については、租税に関する事務又は会計に関する事務で政令で定めるものと規定されています。
租税に関する事務とは、税務官公署における事務のほか、その他の官公署及び会社等における税務に関する事務をいいます。
一方、会計に関する事務とは、貸借対照表勘定及び損益勘定を設けて計理する会計に関する事務(特別な判断を要しない機械的事務を除く)と定められており(税理士法施行令第1条の3)、簿記の原則にしたがって、会計帳簿等を記録し、その会計記録に基づいて決算を行い、財務諸表等を作成する過程において簿記会計に関する知識を必要とする事務と規定されています。
具体的には、以下のような業務が該当すると定義されています。
なお実務経験は必ずしも正社員でないとカウントされないわけではなく、アルバイトなどの就業形態でも満たすことができます。
実務経験について、より詳細に確認されたい方は、以下の記事もご参照ください。
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税理士を目指すなら、税務や会計の専門知識を深く学べる大学を選ぶことが重要です。以下の5つの大学は、税理士試験の科目免除制度が利用できたり、会計・税務に特化したカリキュラムが充実していることで知られています。
慶應義塾大学の商学部では、会計学や税務に関する高度な知識を学べるカリキュラムが整っています。また、OB・OGネットワークが強く、大手税理士法人や会計事務所への就職にも有利です。
早稲田大学の商学部や社会科学部では、税法や会計学を体系的に学べます。また、税理士試験の一部科目免除が可能な大学院もあり、税理士を目指す学生にとって魅力的な選択肢です。
明治大学は、会計・税務分野に力を入れており、特に商学部では公認会計士や税理士を目指す学生向けの講座が充実しています。税理士試験の科目免除ができる大学院も併設されています。
中央大学は、法律と会計の両方に強みを持つ大学で、税務に関する知識を深めるには最適です。商学部では、会計士・税理士を目指す学生向けの専門プログラムが用意されています。
専修大学は、会計教育に力を入れており、税理士試験の合格者を多数輩出しています。特に、税理士試験の科目免除が受けられる大学院があるため、スムーズに資格取得を目指せます。
税理士を目指すなら、会計・税務の教育が充実している大学を選ぶことが重要です。さらに、大学院での科目免除制度を活用することで、効率よく資格取得を目指せます。自分の学びたい分野や将来のキャリアプランに合わせて、最適な大学を選びましょう。
よく「高卒だと税理士になれないのではないか」と考えている方がいらっしゃいますが、決してそんなことはありません。なぜなら、受験資格は学歴(学識)以外で満たすことができるからです。
また合格率で見ても、2023年試験の一部科目平均合格率が21.7%であったのに対して、高卒(旧中卒も含む)の合格率は23.8%でした。このことから、決して高卒から税理士を目指すのが無謀ではないといえます。
詳しくは下記記事をご確認ください。
結論から申し上げると主婦でも税理士になることは可能です。
税理士の資格取得には特別な学歴や年齢の制限がないので、主婦の方でも十分に目指すことができます。
税理士は主婦にとって魅力的な資格の一つです!
隙間時間で少しずつ勉強を進めていき、子育てや家事と両立しながら資格取得を目指しましょう。
主婦が税理士を目指すメリットは下記になります。
開業すれば自分の好きな働き方を選択できるようになり、在宅ワークも可能です。子育てしながらでも働くことができます。
一度取得すれば、結婚・出産後でもキャリアを築ける。
企業や会計事務所でパート勤務しながら経験を積める。
独立すれば高収入も可能。パートでも時給が高め。
税理士は主婦でもなれるものの、育休中などに受ける場合などは特に周囲からの協力なども必要不可欠になります。そこで税理士を目指す際に押さえておくと良いポイントをお伝えします。
独学・オンライン講座・専門学校などを活用しながら勉強
試験勉強には時間がかかるため、家族と相談してサポートを受ける
パートやアルバイトで会計事務所での経験を積むと、試験合格後にスムーズに仕事を始められる
社会人として働きながら税理士を目指すことは可能ですが、難易度は高いです。税理士試験は合格率が低く、膨大な勉強時間が必要になるため、計画的に取り組む必要があります。
税理士試験は「簿記論」「財務諸表論」「税法科目(3科目)」の計5科目に合格する必要があります。1年に1~2科目ずつ合格し、数年かけて合格を目指すことが一般的です。科目合格の有効期限はないので、働きながらでも自分のタイミングで5科目合格を目指すことができます。
合格には一般的に、4,000時間の勉強が必要と言われています。1科目あたり300時間~500時間ほどかかる目安です。仕事と両立していくには、早朝や通勤時間、終業後、休日を活用して計画的に学習することが重要です。
独学も可能ではありますが、商学部・経済学部・法学部とは違う学科を卒業されていて、税法や簿記・会計・経営学などの前提知識がない状態であれば、資格学校(TAC、大原、LEC)などを利用することが一般的です。税理士試験は専門的な内容が多いため、一度も税理士関連の勉強に触れたことがない方であれば、資格学校などに通った方がが合格率が上がるでしょう。
また、通信講座であれば、時間と場所に縛られないので、おすすめです。
実務経験も積めるため、合格後にスムーズに税理士登録できる。
経理の経験を活かしながら勉強できるが、税理士登録には別途2年以上の実務経験が必要。
社会人として勤務しながら税理士を目指すことは可能ですが、時間の確保や職場の理解、学習計画が重要です。特に、長期戦になる覚悟 を持ち、計画的に1科目ずつ合格していくのが現実的な戦略です。
詳しくは下記記事をご確認ください。
税理士資格を取得すると様々なキャリアパスが開けます。独立して自分の事務所を構える道、会計事務所や税理士法人でキャリアを積む道、企業の経理や財務部門で働く道など、選択肢は豊富です。それぞれの働き方にはメリット・デメリットがあり、自分のライフスタイルやキャリアプランに合った道を選ぶことが大切です。
税理士資格を取得すると、自ら税理士事務所を開業することができます。独立の最大の魅力は、自分の裁量で仕事ができる点にあります。勤務税理士の場合、業務内容や収入が所属する事務所の方針に左右されますが、独立すればすべて自分で決定できるため、やりがいも大きいでしょう。
また、成功すれば高収入を得られる可能性もあります。特に近年は、クラウド会計ソフトやオンライン税務サービスを活用したIT税理士の需要が高まっており、うまくマーケティングをすれば全国のクライアントとつながることができます。
しかし、独立にはリスクも伴います。顧客を獲得するためには営業力が求められ、事務所の運営やスタッフの管理といった業務も発生します。また、開業にはある程度の資金が必要になるため、初期費用の準備や事業計画の策定が重要です。そのため、まずは税理士法人や会計事務所で経験を積み、ある程度の顧客基盤を作ってから独立するケースが一般的です。
詳しくは下記記事をご確認ください。
税理士資格を取得した後、多くの人が会計事務所や税理士法人で働き続ける道を選びます。特に、経験が浅い段階では、実務を通じてスキルを磨くことが重要です。税務申告や会計監査だけでなく、顧客とのコミュニケーション能力も求められるため、現場での経験が欠かせません。
税理士法人に勤務する場合、安定した収入を得ながらキャリアアップできるのがメリットです。大手税理士法人であれば、相続や国際税務など専門性の高い分野に携わることも可能です。将来的には、パートナー(共同経営者)として事務所の経営に関わる道もあります。
ただし、勤務税理士として働く場合、繁忙期の業務量が多くなることは避けられません。特に、確定申告や決算期には長時間労働が発生することが多く、ワークライフバランスの確保が課題となるケースもあります。そのため、事務所の方針や働き方を事前に確認し、自分に合った職場を選ぶことが大切です。
税理士資格を活かして、一般企業の経理・財務部門で働く道もあります。企業内税理士としての役割は、税務申告や決算業務だけでなく、節税対策や税務戦略の立案にも及びます。特に、大手企業や上場企業では、税務に精通した専門家が求められるため、税理士の資格が大きな武器になります。
企業勤務のメリットは、安定した給与や福利厚生を得られる点にあります。税理士事務所や会計事務所と比べると、業務の繁忙期が一定であり、ワークライフバランスを取りやすい傾向があります。また、企業によっては、財務部門からCFO(最高財務責任者)などの経営層へのキャリアアップも可能です。
一方で、企業内税理士として働く場合、一般的な税理士業務の範囲が限定されることがあります。法人税や消費税に関する業務が中心となるため、個人事業主や相続税関連の業務には関わる機会が少なくなります。そのため、将来的に独立を考えている場合は、企業内税理士の経験だけでは不十分となる可能性もあります。
税理士資格を活かして、コンサルティングファームに転職する道もあります。特に、国際税務やM&A税務の分野では、高度な専門知識を持つ税理士の需要が高まっています。大手コンサルティングファーム(PwC、EY、Deloitte、KPMGなど)では、税務アドバイザリー業務を担当し、国内外の企業に対して戦略的な税務提案を行うことが求められます。
コンサルティングファームで働くメリットは、高収入が期待できる点にあります。一般的な会計事務所や企業の経理職と比べると、給与水準が高く、実力次第では年収1,000万円以上も可能です。
ただし、コンサルタント職はハードワークになることが多く、プロジェクトごとに長時間労働が発生することもあります。また、高度な専門知識や英語力が求められるため、一定のスキルアップが必要です。
近年では、税理士としての知識を活かし、副業や情報発信を行う人も増えています。たとえば、資格学校の講師として受験生の指導を行ったり、税務関連の書籍やブログを執筆したりすることで、収入を得ることが可能です。YouTubeやSNSを活用して税務に関する情報を発信し、知名度を高める税理士も増えています。
副業のメリットは、自由な働き方ができる点にあります。本業と並行して収益を得られるため、リスクを抑えながらキャリアの幅を広げることができます。一方で、収益化には時間がかかることも多いため、根気よく取り組む姿勢が求められます。
税理士の仕事は、単なる税務申告や会計処理だけではなく、経営支援や節税提案、相続問題の解決など、幅広い分野で活躍できる点が魅力的です。また、税理士はクライアントの人生や事業に大きく関わる職業であり、その影響力と責任感がやりがいを生む要因となります。
税理士は、企業や個人に対して税務アドバイスを提供するだけでなく、経営の課題解決や効率化、事業承継の支援を行います。例えば、中小企業の経営者にとって、税理士のアドバイスが経営の重要な判断材料となることが多く、節税対策を適切に行うことで、企業の成長を支えることができます。また、相続税の問題に対しても税理士は重要な役割を果たし、家族間のトラブルを避け、円滑な相続を実現するためにサポートします。このように、税理士はクライアントの生活やビジネスに直結するアドバイスを行うため、社会的な影響力を感じることができる職業です。
税理士は、税法や会計基準を熟知している必要があり、その専門知識は高く評価されます。税務や会計は非常に細かく複雑であり、常に法改正に対応するために最新の情報を学び続けることが求められます。このような専門性を持っていることで、クライアントに信頼される存在となり、問題解決に貢献できる点がやりがいとなります。
また、税理士は数字を扱う仕事ですが、単に計算するだけでなく、クライアントにとって最適な解決策を提案するための判断力や戦略的思考が求められます。これにより、税理士は理論的な知識だけでなく、実践的なスキルを活かしてクライアントのために価値を提供することができます。
税理士の仕事は、クライアントと密接に関わりながら進めるため、長期的な信頼関係を築くことができます。税理士として成功するためには、クライアントの状況を深く理解し、その上で最適なアドバイスを提供することが求められます。この過程で、クライアントから感謝されたり、信頼されることが多く、その信頼を裏切らないように責任を持って対応することがやりがいにつながります。
特に独立開業した場合、自分の信頼と人脈を頼りに多くの顧客を獲得し、その成功を共に喜べる点は、非常に大きなやりがいを感じる瞬間です。独立後に、自分が築いた事務所が成長していく様子を実感することができるのも大きな魅力です。
税理士は、特に独立開業後に自分のペースで働ける自由度が高い職業です。自分で事務所を運営する場合、勤務時間や仕事量を自分でコントロールすることができます。もちろん繁忙期は忙しくなりますが、普段は自分の時間を調整しやすいため、プライベートとのバランスも取りやすい点が魅力です。また、クライアントとの直接的なやり取りができることで、仕事に対する満足度が向上します。
さらに、独立することで自分のサービスに対して直接報酬を得ることができるため、働いた分だけ収入に反映されるという点も大きな魅力となります。
税理士に向いている人の特徴を3つに絞ると、以下のようになります。
税理士は数字を扱う仕事であり、税務申告や会計処理では細かい計算やデータ確認が求められます。ミスを避けるために慎重さや正確性が重要です。数字に強く、正確に作業を進められる人は税理士に向いています。
税理士はクライアントと密接に関わる職業です。税務に関する複雑な内容を分かりやすく伝えたり、クライアントの問題を的確に把握して適切なアドバイスを提供するため、コミュニケーション能力が非常に重要です。
税法や会計基準は常に変わるため、税理士は最新の情報を学び続ける姿勢が求められます。新しい税制に適応するため、常に自己研鑽を怠らない人が税理士として成功しやすいです。
税理士になるためはいくつかのステップがあり、試験の難易度も高い税理士ですが、登録できればキャリアにおける大きな強みとなるでしょう。
試験で一部科目だけでも合格して、税理士としてのキャリアを構築していきたいという方、転職活動をスムーズかつラクに進めたいという方は、ぜひ士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロをご活用ください。税理士資格を活かせる希望条件にピッタリの職場をご紹介させていただきます。まずはご相談から、お待ちしております。
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