税理士を目指すにあたって、「税理士になるのはやめとけ」という意見に触れる機会も多いかもしれません。実際に受験を反対されたことがあるという方もいらっしゃるようです。今回は税理士が「やめとけ」と言われる理由を紹介した上で、本当にやめておくべきなのか、仕事の魅力やニーズを踏まえて考えていきます。
早速、税理士が「やめとけ」と言われる代表的な理由を紹介していきます。
まず最も言われることとして、資格取得の難易度の高さがあります。
実際、合格までにかかる勉強時間は4,000時間ほどとされています。また5科目の取得が必要な試験科目の平均合格率が18.8%(2023年試験)と、勉強に時間をかけたからといって必ず合格できるわけではありません。
働きながら5年以上勉強を続けたり、仕事をせずに勉強に専念した人でも取得できない人が多くいるような資格なので、膨大な時間を勉強に使ってもなんのメリットも得られないリスクがあるのは事実です。
このようなリスクに対して、「やめとけ」と言われることがあるようです。
税理士に対して激務のイメージが強いのも「やめとけ」と言われる一因になっています。特に12月~4月は、年次決算を締める前後の事業者が殺到するため、繁忙期と呼ばれます。
年次決算は企業の1年の経営成績を確定させる業務になりますので、正確性を求められる責任の大きい仕事です。それだけでなく、1年間の様々なお金の流れを確認しなければならないため、業務量も多くなることが想定されます。
そのため、どうしてもハードワークというイメージが拭いきれず、「やめとけ」という声が挙がるようです。
上記の業務量のイメージにも起因しますが、労力の割には給与が高くないと感じる人も多く、働いても満足いく年収にならないことを危惧して「やめとけ」と主張する人も一定数いらっしゃいます。
また、税理士とよく比較される公認会計士と比べるとどうしても年収が低い傾向にあるという事実はあるため、税理士を目指すなら公認会計士を目指す方がいいのでは、という意見もあります。
税理士業務は専門性や難易度が高いため、経験者の採用がほとんどであるというイメージが強く持たれています。そのため未経験から内定を勝ち取るのはかなり難易度が高く、もし入社できたとしても未経験からでは活躍しづらい職種であると認識している人もいらっしゃいます。これが「やめとけ」と言われる要因になっているようです。
ここまで「税理士はやめとけ」と言われる理由について解説しましたが、本当に目指すべき資格ではないのでしょうか?ご紹介した4つの理由かリアルを見ていきましょう。
勉強時間も合格率も噓偽りない事実なので、取得難易度については高いといえるでしょう。
ただし、税理士試験は科目合格制を採用しています。科目合格制とは、合格に必要な5科目のうち1つでも取得できれば、その実績が消えないという制度です。つまり、1回の試験で全ての科目に合格する必要は無いということです。
そのため、受験予定の科目だけ集中して勉強していくことで、時間はかかっても比較的合格しやすい資格であるといえます。
極論、激務と感じるかどうかは人それぞれです。ただし一般的なイメージの通り、繁忙期の仕事が増え、残業時間や休日出勤が多くなる傾向にあることは事実です。
ただ、昨今の働き方改革の推進などの影響もあり、過度な残業があったり、休日を自由に使えないなどといったいわゆるブラックな職場と言われるような環境ではありません。また、閑散期と呼ばれる業務量の少ない期間もあることを踏まえると、1年平均の残業時間や年間休日は一般的な企業と同程度だといえます。
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激務と呼ばれる税理士の働き方について
税理士の繁忙期について
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、税理士の平均年収は約958万円です。同データには全ての労働者の平均年収は約308万円とされているので、単純計算だと税理士は平均の3倍程度の高水準であるといえます。
また、たしかに公認会計士に比べると年収は低い傾向にあります。しかし、一般的には公認会計士の方が税理士よりも取得が難しいとされていますので、年収にも差が出るのはある意味当然だといえます。
そのため、業務量などを踏まえてもことさらに年収が見合わないというわけではありません。ただし、小規模な税理士事務所で働いたり、独立開業してうまく売上を伸ばせていない税理士については、平均よりもかなり低くなるケースもあるなど、状況によって変わる部分もあります。
税理士の年収について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
税理士の採用についてはイメージと異なり、未経験でも積極的に行われているのが実情です。
それでいながら未経験者の採用枠がないイメージがあるのは、以前は実際に経験者採用がほとんどだったことが理由と考えられます。イメージの通り業務の専門性や難易度が高いことにより、経験者採用を主としていた税理士業界ですが、より多くの人材が必要になり、未経験者の採用も積極的に行うようになりました。
税理士の未経験からの転職事情については、以下の記事で詳しく解説しております。
上記のように税理士は「やめとけ」と言われることがあるものの、取得すれば様々なメリットがあるのも事実です。税理士試験の受験者数が年々増加しているのも、そんなメリットが大きいと感じる方が多くいらっしゃるからでしょう。
ここでは、そんな税理士になるメリットを4つご紹介します。
税理士の仕事は他の人では代替できない業務も多く、税理士ならではの価値を発揮できるのがメリットの一つです。実際に、税理士には独占業務という他の人が行ってはならない業務の実施が許されています。この独占業務は社会的ニーズが高いため、転職活動においても需要が高くなるでしょう。
税理士の多くが税理士事務所や税理士法人で働きますが、クライアントに税理士業務を提供する中で、やりがいを感じる機会が多い仕事といえます。具体的には、以下のようなやりがいを感じられることになるでしょう。
税理士のやりがいについては、以下の記事でより詳しく解説してますので、あわせてご覧ください。
税理士は何歳になっても働くことができます。資格に定年はありませんし、身体に問題なければ何歳になっても現役で仕事ができるでしょう。一般的なサラリーマンだと60歳から65歳で定年を迎えることになりますので、それより長く一生仕事ができるというのは魅力の一つです。
また資格を活かして税理士事務所などを独立開業できるのも、魅力の一つといえるでしょう。独立すれば経営者としてどのように経営したいか、どんなサービスを取り扱うかなど、自由に決めることができます。
さらに独立すれば、自分の力量次第で年収を大きく上げることができる可能性があります。もちろん失敗するリスクはあるものの、雇われて働くよりも上限なく稼げるのは、魅力といえるでしょう。
「やめとけ」と言われる理由の実情および働く魅力に加え、向いている人の特徴も踏まえて、自分に税理士を目指すだけの適性があるのか、判断していきましょう。
主に税理士に向いている人の特徴としては、以下が挙げられます。
向いていない人の特徴も含めて、以下の記事で詳しく解説していますので、是非ご一読ください。
税理士は税理士事務所や税理士法人で働くのが一般的というイメージもあるようですが、実際には多くの職場でニーズがあり、特に以下のような職場で需要が高いです。
多様なキャリアを選択できるのも、税理士の魅力の一つでしょう。
転職市場における税理士の市場価値は非常に高い状況ではありますが、転職活動はスピード勝負です。特に税理士試験の合格発表後、一斉に採用活動をスタートします。
スピード感を持ちながらも、希望の就職先に入るための準備はしっかりしたいという方は、是非転職エージェントをご活用ください。当社ヒュープロは士業・管理部門やM&A業界の求人に特化した転職エージェントであるため、税理士の就職や転職の弊社ならではのサポートが可能です。
今回は「税理士はやめとけ」と言われる理由や、その実情について解説しました。必ずしもメリットだけではないものの、決して「やめとけ」と言われるほどのデメリットがあるわけではありません。資格取得の難易度が非常に高い分、取れればご紹介したようなメリットを享受することができるので、興味のある方は目指してみてはいかがでしょうか。