40代はこれまでのキャリアを活かして仕事を続ける人が多い中で、キャリアチェンジを成功させるには「最後のチャンス」といえる年齢層です。そんなキャリアチェンジのために40代になって税理士を目指すというのは、かなり大きな決断になるでしょう。
今回は、40代で税理士を目指すのは遅いのかについて解説します。
結論から申し上げますと、40代から税理士を目指すのは決して遅くはありません。
もちろん資格取得後の転職活動を考えると、20代や30代よりも採用されにくくなりますが、年齢によるマイナス面よりも税理士資格の社会的な市場価値の高さによるプラス面が大きいからです。
さらに40代は20年前後の社会人経験を積んでいるため、その中で培ってきたスキルを評価されることも少なくありません。
そのため、40代税理士として転職を成功させられる可能性は十分あると言えるのです。
2023年の税理士試験における5科目合格者600人のうち269人が40代以上だったことからも、実際に目指している方も多くいらっしゃることがお分かりいただけると思います。
出典:令和5年度(第73回)税理士試験結果表│国税庁
ここで税理士を取得する流れについて、確認しておきましょう。
税理士試験の受験資格は、試験科目によって変わります。
例えば、必須科目である簿記論や財務諸表論には受験資格が無いものの、その他の科目については学識・資格・職歴のいずれかの受験資格を満たさなければなりません。
受験資格については以下の記事にて詳細に解説していますので、ご参照ください。
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受験資格を満たした上で、税理士試験の合格を目指します。
税理士試験の難易度は高く、合格するのに4,000時間ほどの勉強が必要とされていますので、40代から目指すのであればある程度覚悟を持って勉強に取り組まなければなりません。
なお税理士試験は年1回の実施ですが、科目合格制を導入しているため、合格に必要な5科目を複数年かけて取得する形が一般的です。
もちろん1年での合格も制度上は可能ですが、働きながら合格を目指す人が多い40代では数科目ずつに分けるのがよいでしょう。
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税理士試験に合格したからと言って、ただちに税理士を名乗れるわけではありません。税理士として登録するための要件である「2年間の実務経験」をしなくてはならないのです。ただし、試験合格前に実務経験をしている場合についても対象です。
40代で実務経験が無い状態で試験合格した場合、税理士になるためには最低でも追加で2年かかり、さらに実務経験が積める職場に就業しなければならないということに、留意しておく必要があります。
具体的に実務経験がどのように定義されているのかについては、以下の記事でご紹介しています。
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税理士試験合格および登録要件のクリアによって、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録されることができ、税理士として業務にあたることができます。
なお、税理士にしか認められない独占業務というものがありますが、上記の登録まで済ませていない状態で独占業務を行うことは認められていないので、注意しましょう。
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このようにいくつかのステップがあり、かつ試験合格にはかなりの時間を費やさなければなりません。税理士試験の合格を目指すためには、以下のような点を意識しておくのがオススメです。
40代という年齢層では、子供の世話や親の介護などといったプライベートで、時間とお金の多くを費やします。そのため、税理士試験に使える時間は限られており、かつ収入が無くなっては困りますので仕事を辞めて勉強時間を確保するという決断もしにくいでしょう。
そんな中で、通勤時間や休憩時間はもちろん、隙間時間や出勤前の時間を使うなどの工夫をして、勉強時間を作っていきましょう。場合によっては有給休暇を取得して、普段進められなかった勉強をリカバリーすることも考えましょう。
40代は若い世代に比べれば学習能力が下がってくるので、4,000時間より多くの時間を必要とする場合があります。試験までに勉強が終わらない事態を避けるためにも、余裕を持って勉強を進めていけるとベストです。
税理士試験の勉強法は、大きく独学とそれ以外に分けられます。
独学以外の方法として、資格スクール・予備校や通信講座を活用する手段が挙げられます。費用はどの手段を使うかやどの会社を選ぶかによって変動するものの、100万円程度が相場とされています。出費がある一方で、勉強のスケジュールややり方を考える必要がないため、働きながら合格を目指すことが一般的な40代の多くが独学以外の手段を選択する傾向にあります。
独学で勉強を進める場合は、上記のような費用がかからず、最低限の参考書や問題集のみの出費で済みます。ただし、自分でスケジュールや進捗を管理するのはかなり大変であるため、働きながら独学というのはあまりおすすめできません。
通信講座や資格スクールの利用が基本線ではあるものの、それぞれのメリットとデメリットを踏まえて、ご自身に合った勉強法を選びましょう。
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税理士試験は11つある試験科目のうち、5科目を取得することで合格できます。必ず取得しなければならない必須科目やいずれか1つを取得しなければならない選択必須科目があるものの、その他の選択科目については自由に選ぶことができます。
この選択必須科目や選択科目をどのように選ぶかも重要なポイントです。
一見、合格率の高い科目を選んだ方が良いと思うかもしれませんが、場合によっては税理士になってからの業務に活かしにくい科目も存在します。税理士になった時にどのような業務に対応できるようになりたいかから逆算して勉強する科目を検討すると、勉強のモチベーションにも繋がりやすいでしょう。
実は税理士試験の合格にあたって5科目全てを試験で取得しなくても、税理士になれる方法があります。その一つに会計大学院の単位取得による一部科目の免除があります。税理士取得までの時間は大学院への通学期間の分ながくなり、費用もかかりますが、単位を取得できれば2科目もしくは3科目が免除されます。
大学院免除を利用した方がかえって速く合格できるという声もあるほか、実務に即した勉強ができるため、利用者も多いです。
40代であっても、税理士は多様なキャリアプランを描くことができます。代表的な転職先としては以下が挙げられます。
また、もし以上のような職場への転職ができなかったとしても、税理士事務所などを独立開業するという手段もあります。
税理士の働く職場や独立開業については、以下の記事をご参照ください。
40代であっても、税理士資格があることで転職できる確率はある程度高いでしょう。しかし税理士の転職先には、同じ会計士が応募している可能性が高いので、資格だけではアピールポイントになり得ないこともあります。
同じキャリアや資格でも有利に転職活動を進めるために活用すべきなのが、人材エージェントです。
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税理士業界における転職では資格と経験が重視されますが、50代になってくると税理士資格と合わせて経験をどの程度しているかが重要になってきます。
会計事務所での経験が無かったとしても、経理職や金融業界など親和性のある経験があると転職は十分可能です。一方で全く税務に関連する仕事をしたことが無い場合は、資格があっても転職は難しいでしょう。
ただし、税理士試験に合格するのが50代になってしまっても悲観することはありません。実務経験さえ積むことができれば、税理士登録後に独立開業することができるからです。
実務経験はアルバイトでも認められますので、転職ができなくてもアルバイトとして50代の試験合格者を受け入れる会計事務所は多くあるでしょう。また、独立開業は年齢関係なくできるので、もし40代で合格できなくても諦めずに勉強を続けることを推奨します。
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今回は40代で税理士を目指すにあたって合格するためのポイントや、合格後のキャリアについて解説しました。どうしても年齢が転職に与える影響はゼロではないため、40代で税理士を目指すという決断をしづらいという人も多いでしょう。
しかし税理士業界の転職市場において年齢より重要なのは、資格と経験です。まずは焦らずに勉強を進めていき、資格取得後は胸を張って転職活動をしていきましょう。