管理部門の一つである総務と労務。従業員が働きやすい環境を整える役割を担う共通点がありますが、具体的な違いについていまいち理解できていない人は多いのではないでしょうか。今回は労務と総務の仕事内容や必要なスキル、向いている人の違いを徹底解説します。これから転職を考えている方はぜひご参考にしてください。
前提として、労務と総務は企業経営に欠かせない「ヒト」「モノ」「カネ」の管理や活用などを行う部署である「管理部門」や「コーポレート部門」の一つです。人事や経理もこの管理部門に属しています。
労務や総務、人事、経理の4つが混同される理由としては、中小企業などではそれぞれが部署の区別なく一括りにされることが多く、業務の境目が曖昧なことがあるからです。企業によっては、「人事労務部」であったり「総務部署の中の労務課」であったりと表現が異なることもあります。
一方、大企業ではの4つのそれぞれの部署が独立しており、業務の区別が明確なケースが多いです。
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上述の通り、一括りにされることが多い労務部と総務部については、それぞれの違いを把握しきれていない人も多いのではないでしょうか。
ここからは、労務と総務の主な違いについて、以下の5つの点から解説していきます。
違い | 労務 | 総務 |
---|---|---|
役割 | 従業員が安心して 働ける環境づくり 健全な経営の実現 |
従業員が気持ちよく 働ける環境づくり |
仕事内容 | 社員の労働に関する事務処理 | 企業における全般的な事務業務 |
必要なスキル・資格 | 社会保険労務士 衛生管理者 労働法務士 |
人事総務検定 ビジネス・キャリア検定 |
やりがい | 労務の専門的な知識が身につく | 経営者の視点が身につく |
向いている人 | ・コツコツした作業が 正確にできる人 ・法律に興味がある人 ・円滑なコミュニケーションが取れる人 |
・人のサポートをするのが好きな人 ・臨機応変な対応ができる人 ・ヒトとのコミュニケーションに苦痛を感じにくい人 |
給与 | ・一般社員:350万~450万円 ・係長・課長クラス :450万~700万円 ・部長クラス :700万~900万円 |
・20代:350~400万円 ・30代:450万円程度 ・40代:500~600万円 |
労務と総務は、どちらも「ヒト」に関する業務を行う共通点がありますが、安心して働ける環境づくりと、気持ちよく働ける環境づくりという違いがあります。
労務は、ヒトが安心して働きやすい企業づくりのために労働環境の整備や制度の導入・運用をするという役割を持っています。
正社員はもちろん、アルバイトやパート、業務委託など様々な就業形態の従業員が安心して働ける環境を作ることで、企業が健全な経営をできるようにしています。
また従業員のためだけでなく、労働に関する法令に企業が抵触しないようにするためにも、労務は重要な役割を果たします。
総務は、従業員が気持ちよく働けるように会社組織全体の事務を取り仕切るという役割を持っています。特定の部署が担当するのが難しい業務を幅広く行うことで、会社の様々な部署の円滑な仕事や、組織全体としてスムーズに利益をあげることを支えます。
また、すべての部署とかかわりを持つという立場を活かして、現場の社員と経営陣をつなぐ役割も持っています。トップと社員の意思疎通を図り、会社全体のコミュニケーションを活性化させることで、一丸の企業経営をサポートします。
では、次に仕事内容の違いについて見ていきましょう。
労務と総務の仕事内容の大きな違いは、社員の働く環境を整える仕事と、社員の労働に関する仕事という違いが挙げられます。
労務は、主に労働に関する事務処理を担当し、従業員が安心して働けるための組織づくりを行います。従業員の働く環境を管理・整備し、福利厚生の管理、労働安全衛生の管理、労使交渉の管理や折衝/調整が該当します。「ヒト」の集合体である組織全体を対象とした業務です。大まかに以下の5つの業務に携わります。
なお、労務の仕事内容については、以下の記事でも詳しく紹介しておりますので、併せてご参照ください。
〈参考記事〉
総務は、企業運営に関する様々な業務を担います。上述の通り、どこの部署が担当する業務かが明確でない業務を担当するため、業務範囲は非常に幅広いです。例として、以下のような業務が挙げられます。
企業における事務業務を全般的に行うため、具体的な仕事が決まっていないことも多いです。
総務の仕事内容については、以下の記事でも詳しく紹介しておりますので、併せてご参照ください。
〈参考記事〉
労務・総務ともに、資格がなくても働くことができます。しかし、以下のような資格やスキルを取得することで業務に活かすことができます。
労務の仕事で活かせる資格として、社会保険労務士と衛生管理士、労働法務士が挙げられます。
労務の仕事をするにあたって、労働法や社会保険、労働保険に関する知識は不可欠です。上述の資格取得の過程でこれらの必要な知識を身に付けることができ、さらに専門知識を備えている証明にもなるため評価にもつながります。
特に、労務では社会保険労務士資格(社労士資格)の有無が選考の可否に関わってきます。社会保険労務士資格は難関国家資格ですが、合格すれば、社労士の独占業務を行うことも可能になるため、労務の仕事に直接的に活かせるようになるでしょう。
労務の担当者は従業員の悩みや経営陣が感じている労務に関する課題のボトルネックを共通認識として持ち、解決に導かなくてはなりません。そのためには、社内でのコミュニケーションを積極的に取る姿勢が不可欠であるといえます。
また、日常的な労務問題の解決やスケジュールに則った正しい届け出や手続きを実行するために、最新の労務に関する法制度をキャッチアップできるスキルやプロジェクトマネジメント能力が必要とされます。
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総務の仕事で活かせる仕事として、人事総務検定とビジネス・キャリア検定が挙げられます。
これらの資格は総務に関する知識や実務の能力を判定するものであり、取得を通じて総務の業務に関する法律知識を体系的に学ぶことができます。実際の業務にも大いに活かすことができるでしょう。
上述の労務と同様に、コミュニケーション能力とプロジェクトマネジメント能力が求められます。
総務は部署を問わず企業全体とやり取りをし、さらに電話や来客対等では外部の人と接するため、円滑なコミュニケーション能力は不可欠です。また、複数の業務を並行して行うため、マルチタスクスキルや情報処理スキルも求められるでしょう。
さらに、総務は部門の垣根を超え、あらゆる部署からさまざまな仕事が舞い込みます。さらに部署ごとの対応方法に明確なルールが存在しないことも多いため、ときには自らの判断で柔軟に対処しなければなりません。そのため、物事に柔軟に対応する能力は総務で働くうえで必須であるといえます。
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どちらも従業員が安心して、気持ちよく働けるような働き方を実現するために、様々な課題を解決する仕事です。そのため、同じ会社で働く従業員に感謝されることをやりがいに感じる点は共通しています。
一方、やりがいの違いとしては以下の点が挙げられます。
労務のやりがいの一つに、最前線の現場で労務業務を経験できることが挙げられます。
労務のコンサルティング業務などを行う社労士事務所では企業の一部の問題しか扱わない一方、企業の労務は基本的に全ての労務問題を部署内で解決していきますので、経験値は上がっていくわけです。
速いスピードで成長し専門的なスキルを身に付けていけるという点は、やりがいに感じられるという方も多いです。
〈参考記事〉
総務のやりがいの一つとして、会社を俯瞰した経営に近い視点が身につくことがあげられます。
上述の通り、総務は業務を進めるうえで、現場の社員だけでなく経営層との関わりも発生します。その中で、現場の社員から得た意見を経営層に提供する機会も多くあるため、経営層とのコミュニケーションの中で企業経営に必要な視点や考える力を磨くことができます。総務として実務経験を積むことで、将来的に経営企画などのマネジメントキャリアにもつなげることができるでしょう。
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労務と総務の違いに関して理解を深めたところで、ここからはそれぞれに向いている人の特徴を見ていきましょう。労務や総務への就職・転職を考えている方は、自分の適性と照らし合わせながら参考にしてみてください。
労務の仕事に向いている人の特徴としては以下3点が挙げられます。
労務の仕事では、手続きや申請などにあたってデスクワークが多く発生します。またこれらの業務のほとんどが、従業員の権利を守るための重要な業務であり、小さなミスでも法令違反につながる可能性があるため、高い正確性も求められます。
そのため、事務処理などのコツコツとした作業を正確にできる人が向いているといえるでしょう。
労務の業務には、労働基準法や社会保険関連法をはじめとして、労働に関する法令の専門的な知識が不可欠です。こうした法律は専門用語も多く、知識の習得は非常に難しいです。また、関連法はめまぐるしく更新されるため、常に勉強することが求められます。
そのため、法律に興味がある人であれば、これらの知識も習得しやすく、積極的に新しい知識を身に付けることができるため向いているでしょう。
上述の通り、円滑なコミュニケーションがとれる人は労務として働くのに向いているでしょう。
労務では社内の従業員との対話が必要なシーンが多いため、相談されやすい人柄、つまり信頼できる人柄であるかどうかが大きなカギとなります。
コミュニケーション不足や話しかけづらい雰囲気があると、労務が把握できる範囲外で問題やトラブルが起きてしまうリスクにも繋がりますので、そういった働き方が苦ではない方に向いていると言えるのです。
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総務の仕事に向いている人の特徴としては以下3点が挙げられます。
総務は全ての部署とかかわりながらサポートする業務の特性上、他の職種に比べて目立つ場面は少ないかもしれません。しかし、直接的な売上にはつながりませんが、従業員が気持ちよく働ける環境を整えることで社員の待遇向上や会社の業績向上につながるとしたら、とても重要な仕事だと思いませんか。
よく総務は「縁の下の力持ち」といいますが、誰かをサポートすることに喜びを感じる人は、総務の仕事にやりがいを感じるはずです。
総務は部署を横断して様々な分野の業務に携わることが多く、専門的な知識というよりは幅広い知識を求められます。また、複数の異なる分野の業務を同時進行することもあるため、それぞれのスケジュール管理が求められたり想定外のことが起きたりすることもあります。
そのため、全体像をみて上手に優先順位をつけ、その時にあった仕事を組み立てられる人は総務に最適といえます。
総務は社内の従業員だけでなく、社外の業者や来客、電話対応をする必要があるため、様々な立場の人とのコミュニケーションに対して苦痛を感じない人が向いているでしょう。また、従業員が気持ちよく働ける環境を整えるためにも、日ごろから従業員と密なコミュニケーションをとることで、職場の現状や人間関係を把握する必要があるため、人と話すことに抵抗感がない方は総務向きといえます。
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では、最後に気になる労務と総務の平均年収の違いについて見ていきましょう。
労務の年収相場について求人情報や転職サイト等の情報を総合すると、一般社員で350万~450万円、係長・課長クラスは450万~700万円、部長クラスは700万~900万円が目安となります。
なお、企業規模や地域、経験年数によって異なる点に注意が必要です。
〈参考記事〉
総務の年収相場について、20代は350~400万円、30代は450万円程度、40代は500~600万円が目安となります。どの年代も事務の給与平均よりは高いです。また、総務の場合には経理や労務ほど高度な知識やスキルを求められることは少ないですが、その分経験を重ねることでゼネラリストとしてのキャリアパスを描きやすく、40代・50代で年収が高まる傾向にあります。
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今回は、仕事内容や向いている人などの様々な視点から労務と総務の違いについて解説しました。従業員が働きやすい環境を整える重要な役割を果たす労務と総務ですが、中身を見てみると違いも多いことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
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