監査法人で働く公認会計士は、繁忙期を中心に長時間の残業が発生するというイメージが大きいかもしれません。今回は、そんな監査法人で働く会計士の残業時間を繁忙期と閑散期それぞれご紹介したうえで、残業代はどのくらいになるのか、残業時間を減らすためにどんな転職先を選ぶのが良いのかなどについて詳しく解説します。
監査法人で働く公認会計士の仕事は、クライアントの財務情報を監査するために、期日までに正確なデータを確認・報告することが求められます。そのため、クライアントの決算期が近づくと業務量が急激に増加し、長時間の残業が発生します。ここでは、繁忙期と閑散期に分けて残業時間を解説します。
公認会計士の繁忙期は、決算期(3月末)や四半期決算(6月、9月、12月)の前後です。この期間は特に忙しく、残業時間が月80時間を超えることも珍しくありません。残業時間が多くなる要因として、監査業務のためにクライアント企業への訪問をする機会が増えることが挙げられます。監査は一日をかけて行う業務ですが、報告資料の作成や数字のチェックなどのタスクが残り、深夜までの残業が必要になるケースもよくあります。場合によっては休日出勤をしないと業務が終わらないケースもあるほどです。
一方で、閑散期は繁忙期に比べて業務が落ち着きます。もちろん、通常業務や、既存クライアントへのコンサルティング、新規クライアントの対応などで一定の仕事量があるものの、閑散期における残業時間は月20~40時間程度で、定時退社できる日も増えます。年度末や決算期を乗り越えた直後は特に業務が落ち着きやすく、長期休暇をこのタイミングで取得する会計士も少なくありません。
監査法人では残業が多い分、残業代が給与に大きく影響します。監査法人に所属する公認会計士は、基本給に加えて残業代が加算されるため、特に繁忙期には年収が増加する傾向にあります。
残業(法定時間外残業)や休日出勤(法定休日の労働)の時間の労働には、割増の賃金が支払われる仕組みとなっています。具体的には、労働基準法によって以下のように定められています。
こちらに深夜の残業手当も踏まえて考えると、最低でも以下の割合の賃金が払われます。
このうち監査法人で働く会計士に割増賃金が発生するのは、①や②が多いでしょう。これにより残業時間で10万円ほど月給が上がるケースが一般的です。繁忙期は長時間労働が前提となっていますが、その分、給料にも適用されるのです。
監査法人で働く公認会計士の1年は、クライアントの決算時期や監査業務のサイクルによって大きく影響されます。以下に、一般的なスケジュールの流れを示します。
月 | 忙しさ | 平均残業時間 | 業務 |
---|---|---|---|
7月 | そこそこ忙しい(★★★☆☆) | 約30時間 | 第1四半期のレビュー/年間監査計画の作成 |
8月 | 閑散期 (★☆☆☆☆) |
0~10時間 | 長期休暇取りやすい |
9月 | やや忙しい(★★☆☆☆) | 約20時間 | 監査計画の立案/内部統制の検証 |
10月 | そこそこ忙しい(★★★☆☆) | 約30時間 | 第2四半期のレビュー |
11月 | やや忙しい(★★☆☆☆) | 約20時間 | 内部統制の検証/年度監査計画の更新 |
12月 | 閑散期 (★☆☆☆☆) |
10~20時間 | 長期休暇取りやすい |
1月 | そこそこ忙しい(★★★☆☆) | 20~30時間 | 第3四半期のレビュー/年度決算に向けたミーティング |
2月 | やや忙しい(★★☆☆☆) | 約20時間 | 年度監査に向けた準備 |
3月 | そこそこ忙しい(★★★☆☆) | 約40時間 | 年度監査に向けた準備 |
4月 | 超激務 (★★★★★) |
80時間~ | 年度監査 |
5月 | 激務 (★★★★★) |
約80時間~ | 年度監査 |
6月 | 閑散期 (★★☆☆☆) |
約10時間 | 開示書類の確認/新年度の監査計画の作成 |
四半期決算が3ヶ月に1回の頻度で実施されることもあり、繁忙期は1ヶ月単位で複数回発生するという特徴があります。
勤務している監査法人の残業が過酷だと感じた場合、残業を減らせる転職先を考えることも一つの選択肢です。以下に、残業が少なく柔軟な働き方ができる可能性のある転職先をいくつか紹介します。
ご紹介したように、時期によってはハードとも取れる働き方が一般的な監査法人ですが、近年ワークライフバランスを重視する監査法人が増えています。例えば、リモートワークやフレックスタイム制を導入している法人は、働く時間や場所を自由に選べるため、残業を減らしやすくなります。こうした環境を提供する監査法人に転職することで、労働時間をコントロールしやすくなります。また、Big4監査法人を筆頭とした大手の法人では、残業時間が少ない傾向にあります。
事業会社の管理部門で働く公認会計士は、全体的に監査法人に比べて残業が少ない傾向があります。企業の経理・財務部門での仕事は、監査法人のように複数のクライアントを抱える必要がなく、繁忙期も自社の監査に対応するだけですので監査法人ほどハードではありません。また、企業によっては、働き方改革の一環として残業削減に力を入れている場合もあります。
公認会計士は、正社員でなくても働き口が多い職業です。例えば特定の時間だけ勤務する非常勤の公認会計士は、基本的に残業が発生せず、プライベートの時間を確保しやすい働き方といえます。
残業が少ない職場へ転職を成功させるために、以下の2つのポイントを押さえておく必要があります。
まずは、応募先の企業文化や労働環境について、事前にしっかりとリサーチすることです。実際の労働時間や残業の実態を把握し、ミスマッチを避けるようにしましょう。
そしてより大切なのが、転職エージェントを活用することです。専門の転職エージェントは、残業の少ない求人情報を提供してくれることが多く、自分に合った職場を見つけやすくなります。
また、面接時に労働環境や残業に関する質問をしてしまうと、「労働条件ばかり気にしている」というややネガティブなイメージがついてしまいます。そうならないために、エージェントに事前に疑問点を聞いておき、解決した上で面接に臨むと、より良い結果をもらうことが出来るでしょう。
士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロでは、業界最大級の求人数を保有しており、公認会計士の転職を積極的に支援しております。まずはご相談から、お待ちしております。
監査法人で働く公認会計士は、繁忙期に長時間労働を強いられることが多く、どうしても残業が避けられない職業です。しかし、残業代によって年収が高くなる一方で、ワークライフバランスに課題を感じる人も少なくありません。残業を減らすためには、柔軟な働き方ができる監査法人や事業会社の管理部門への転職を検討することも一つの方法です。転職を成功させるためには、労働環境を事前に確認し、転職エージェントの活用をおすすめします。