社労士は企業の労務や人事に関する専門家です。社会保険の手続きや年末調整への対応だけでなく、従業員の入退社手続きなども行うため、忙しいというイメージが強い一方で、どの時期が繁忙期にあたるのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、社労士の繁忙期の時期やリアルな働き方について解説します。
社労士の繁忙期は、所属企業もしくはクライアント企業の労務業務が立て込む時期と連動します。一般的なスケジュールでは、3~4月、6~7月、12~1月の期間が該当します。それぞれの時期に行う業務内容と併せて、詳しく見ていきましょう。
4月の新年度開始に伴い、この時期は新入社員の入社や人事異動が他の月よりも圧倒的に多くなります。それだけでなく、新年度開始に合わせて転職すべく、3月に退職する社員についても増加します。
そのため、雇用契約書や各種保険の加入・脱退をはじめとした入退社手続きが膨大な量になることが、業務量の増大に繋がっています。
また新年度に合わせて、企業の制度や方針が変更されることが多く、それに伴って就業規則の改定を行う企業も多くなります。この規則変更への対応が発生するのも、この時期が忙しくなる一因といえます。
6月から7月は、労働保険の年度更新や社会保険料の算定基礎届の提出が求められる時期です。
労働保険の年度更新では、労働保険料の確定と納付を行うために、前年の賃金総額に基づいた申告手続きが必要です。これを怠ると罰則が課されるため、企業は正確な申告が求められます。
また、社会保険料の基礎となる従業員の月額報酬額を報告する、算定基礎届の提出についても、企業が従業員の保険料を正確に決定するために重要な役割を担います。
上記の業務に伴って社労士に求められる仕事量も増大するため、この時期も繁忙期に該当します。
年末から年始にかけては、助成金の申請および年末調整の計算や届け出をする必要があります。
年末調整は従業員の所得税を精算し、適切な税額を算定する業務のことで、場合によっては給与所得者にお金が戻るケースもあるため、正しい計算および届け出をすることが求められます。
また、助成金の多くが2月中旬~年度末に申請期限を設定されているため、それ以前の12月後半から1月にかけての業務量の増大に繋がります。
他にも年末にかけての給与計算や賞与支給も、社労士業務の一部です。正確な給与計算が重要視されるため、短期間で大量の計算処理が発生します。
繁忙期は必ずどの業界でもあるものではありません。そんな中で社労士に繁忙期が発生する主な原因は、以下の通りです。
それぞれ見ていきましょう。
ご紹介したように、年度末や新年度が始まる時期は、人事異動や入社、退職が多発します。これにより、企業には大量の入退社手続きに伴う業務が発生し、その業務の多くを社労士が担います。
新入社員の社会保険加入手続きや、退職者の雇用保険脱退手続きなど、労務関連の業務が一気に増えるのが繁忙期が発生する一因です。
6月から7月にかけて行われる労働保険の年度更新や社会保険料の算定基礎届は、法定の提出期限が設定されています。これらの手続きは毎年行われ、期限を守らないと企業には罰金や行政指導が発生する可能性があるため、社労士は正確かつ迅速に処理を行わなければなりません。このため、年度更新や算定基礎届が行われる時期は、特に忙しくなります。
年末調整は毎年12月末までに完了させる必要があるため、この時期に業務が集中します。企業は従業員全員の収入や控除額を計算し、税金の過不足を調整します。この作業は非常に複雑で、間違いが許されないため、社労士のサポートが不可欠です。加えて、給与計算やボーナス支給もこの時期に行われるため、関連する業務が重なり、繁忙期が発生します。
上記のように、まとまった数ヶ月というよりは2か月×3回で発生する形の社労士の繁忙期ですが、その時期の働き方はどのようになっているのでしょうか?残業時間と休日出勤の状況から実態を見てみましょう。
残業時間については月30時間以上、場合によっては月60時間以上であることが一般的です。特に社労士事務所では、大量の業務を多くのクライアントが依頼するため、月60時間以上の残業が必要なのが基本です。一方で、企業の労務職として働いている社労士の場合は、月45時間以内の残業であることがほとんどです。
これは一般企業の方が福利厚生が整っており働く環境が整っている傾向にあることが要因となっています。
休日出勤に関しては、社労士事務所では発生するケースがあるのに対し、一般企業では滅多に発生しません。とはいえ社労士事務所であっても、月1回の土曜日出勤が求められる程度で、過度に厳しい働き方を求められることはほとんどないでしょう。
イメージほどの過酷な働き方ではなかったという方も多いかもしれませんが、とはいえ繁閑の差が少ない業界に比べるとハードな月があるといえるでしょう。そんな繁忙期を乗り越えるポイントを解説していきます。
社労士の繁忙期を円滑に乗り越えるにあたって、適切なスケジュール管理は欠かせません。ゴール(提出期限や締め日)から逆算し、少し余裕を持って日々のやるべき業務を決めていく必要があります。
その中で「余裕を持つ」ことが特に重要になってきます。なぜなら、社労士には不意に追加の業務が発生するケースが十分にあり得るからです。特に繁忙期に発生しがちな業務としては、企業内社労士であれば急に退職となった社員の退社手続きなど、社労士事務所であれば新規クライアントからの労務手続き代行の依頼などが挙げられます。
これらの業務が発生しても無理なく対応できるよう、繁忙期前にできる業務はなるべく処理しておくなどの対策を取るのがよいでしょう。
近年、ITツールやサービスの発展が進んでおり、社労士の労務業務の負担を減らせるものも増えています。基本的には費用がかかるため独断で導入しづらいかもしれませんが、その費用でどの程度の工数が減らせるのか、そのおかげで空いたリソースをどのような業務に充てることで貢献できるのかを説明できれば、導入を進めてもらいやすいでしょう。
社労士の就業先の中には、残念ながら上記のような策を講じても多忙を極めてしまう職場も存在します。そのような場合は、無理にその職場での環境改善を図るのではなく、転職するのも選択肢です。ご紹介したように、社労士業界全体だと「激務」というほどの働き方ではないため、業界内で転職することによって働き方を変えることができます。
社労士を活かせる職場に転職する際には、ぜひ士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロをご活用ください。業界最大級の求人数をお取り扱いしているため、ご希望にマッチした求人が多くご紹介可能なだけでなく、業界特化ならではの書類添削や面接対策を個別に実施しているため、効率的な転職活動を行うことが可能です。
繁忙期以外の時期は業務も比較的落ち着くため、閑散期と呼びます。
社労士の閑散期は、繁忙期が一段落した5月や8月、11月などが該当します。これらの時期は手続きや申請の期限があまり無いため、業務量も減少しやすいです。
閑散期は残業月0時間で働く社労士も少なくありません。繁忙期に備えてこの時期に無駄な残業をしないようにしている社労士も多く、当然、休日出勤も発生しづらい時期といえます。
閑散期は繁忙期に比べると直接的な労務業務は減少しますが、その分の時間で以下のような業務を行うのがよいとされています。
これは社労士事務所で働く社労士のみが行う仕事ですが、
忙しい時期には十分にコミュニケーションを取れない場合もあるため、閑散期にはクライアントとじっくり向き合い、ニーズをヒアリングする時間を持つことが有効です。
繁忙期の残業時間を少しでも減らすべく、業務フローの見直しや改善策を検討するのも閑散期にやるべきことの一つと言えます。システムの導入や、手続きの効率化を進めるチャンスです。
社労士個人の成長を図るために、資格の勉強や研修への参加など、スキルアップを図るための時間に充てるのも手です。特に社労士業務に関連する最新の法改正や労務管理のトレンドを学ぶことは、正しい労務業務を行うにあたっても重要といえます。
社労士としての転職を考える場合、閑散期に活動を開始することがオススメといえます。閑散期であれば、転職活動にかけられる時間が増えるだけでなく、企業側も採用活動に余裕を持ちやすく、求人数も増えるからです。
今回は社労士の繁忙期について解説しました。
社労士はどうしても繁忙期が発生する仕事であるものの、社会的な評価は高いため、資格取得を検討している方については、ぜひ積極的に目指すことをオススメします。
また、社労士として転職するなら閑散期に活動することをオススメしましたが、その際はぜひ士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロをご利用ください。業界最大級の求人数の中から、ご希望条件に合った求人をご紹介させていただきます。