社労士は企業の労務や人事に関する専門家です。社会保険の手続きや年末調整への対応だけでなく、従業員の入退社手続きなども行うため、忙しいというイメージが強い一方で、どの時期が繁忙期にあたるのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、社労士の繁忙期の時期やリアルな働き方について解説します。
社会保険労務士(社労士)は、企業の労務管理や社会保険に関連する手続きを行う国家資格保有者です。主に、以下のような業務を担当しています。
たとえば従業員の入社や退社にともない雇用保険や社会保険の加入・脱退手続きをすること、傷病手当金を申請することなどが挙げられます。各種助成金の申請、保険料の算定・申告等も基本的な業務です。これらの業務は、人を雇っている会社であれば必ず実施しなければならない業務ですので、自社で対応できない会社は社労士事務所などに代行を依頼することになります。
企業は法定三帳簿とよばれる、就業規則、労働者名簿、賃金台帳の3つの帳簿を作成し、保管しておなければならないと定められています。これらの書類を作成するのも社労士の重要な業務の一つです。
1号業務や2号業務の手続き・書類作成とは違い、3号業務は労務問題や社会保険に関する改善案の提案やアドバイスなどを行う業務です。要するに人事・労務領域におけるコンサルティングといえます。
給与や勤怠管理などの労務の具体的な業務の最適化だけでなく、場合によっては人事評価の体系づくりなど人事領域のコンサルティングも行うことがあります。
社労士はこれらの役割を通じて、企業が法令に基づいた労務管理を実施できるよう支援し、従業員の安心と企業の安定運営に貢献しています。企業の労務職として企業内の労務業務に従事する社労士と、社労士事務所でクライアント企業の労務業務を代行する社労士が主ですが、両者の1年の業務スケジュールは大きく変わらないため、繁忙期についても同時期に発生します。
出典:社会保険労務士法│厚生労働省
では社労士の繁忙期は、具体的にいつ発生するのでしょうか?一般的なスケジュールでは、3~4月、6~7月、12~1月の期間が該当します。それぞれの時期に行う業務内容と併せて、詳しく見ていきましょう。
4月の新年度開始に伴い、この時期は新入社員の入社や人事異動が他の月よりも圧倒的に多くなります。それと同時に新年度に合わせて転職すべく、3月に退職する社員についても増加します。
そのため、雇用契約書や各種保険の加入・脱退をはじめとした入退社手続きが膨大な量になることが、業務量の増大に繋がっています。
また新年度に合わせて、企業の制度や方針が変更されることが多く、それに伴って就業規則の改定を行う企業も多くなります。この規則変更への対応が発生するのも、この時期が忙しくなる一因といえます。
6月から7月は、労働保険の年度更新や社会保険料の算定基礎届の提出が求められる時期です。
労働保険の年度更新では、労働保険料の確定と納付を行うために、前年の賃金総額に基づいた申告手続きが必要です。これを怠ると罰則が課されるため、企業は正確な申告が求められます。
また、社会保険料の基礎となる従業員の月額報酬額を報告する、算定基礎届の提出についても、企業が従業員の保険料を正確に決定するために重要な役割を担います。
上記の業務に伴って社労士に求められる仕事量も増大するため、この時期も繁忙期に該当します。
年末から年始にかけては、助成金の申請および年末調整の計算や届け出をする必要があります。
年末調整は従業員の所得税を精算し、適切な税額を算定する業務のことで、場合によっては給与所得者にお金が戻るケースもあるため、正しい計算および届け出をすることが求められます。
また、助成金の多くが2月中旬~年度末に申請期限を設定されているため、それ以前の12月後半から1月にかけての業務量の増大に繋がります。
他にも年末にかけての給与計算や賞与支給も、社労士業務の一部です。正確な給与計算が重要視されるため、短期間で大量の計算処理が発生します。
繁忙期は必ずどの業界でもあるものではありません。そんな中で社労士に繁忙期が発生する主な原因は、以下の通りです。
ご紹介したように、年度末や新年度が始まる時期は、人事異動や入社、退職が多発します。これにより、企業には大量の入退社手続きに伴う業務が発生し、その業務の多くを社労士が担います。
新入社員の社会保険加入手続きや、退職者の雇用保険脱退手続きなど、労務関連の業務が一気に増えるのが繁忙期が発生する一因です。
6月から7月にかけて行われる労働保険の年度更新や社会保険料の算定基礎届は、法定の提出期限が設定されています。これらの手続きは毎年行われ、期限を守らないと企業には罰金や行政指導が発生する可能性があるため、社労士は正確かつ迅速に処理を行わなければなりません。このため、年度更新や算定基礎届が行われる時期は、特に忙しくなります。
年末調整は毎年12月末までに完了させる必要があるため、この時期に業務が集中します。企業は従業員全員の収入や控除額を計算し、税金の過不足を調整します。この作業は非常に複雑で、間違いが許されないため、社労士のサポートが不可欠です。加えて、給与計算やボーナス支給もこの時期に行われるため、関連する業務が重なり、繁忙期が発生します。
このようにまとまった数ヶ月というよりは2か月×3回で発生する形の社労士の繁忙期ですが、その時期の働き方はどのようになっているのでしょうか?残業時間と休日出勤の状況から分析してみましょう。
残業時間については一般的には月30時間以上、場合によっては月60時間以上であることが多いです。特に社労士事務所では、大量の業務を多くのクライアントが依頼するため、月60時間以上の残業が必要なのが基本です。一方で、企業の労務職として働いている社労士の場合は、月45時間以内の残業であることがほとんどです。
これは一般企業の方が福利厚生が整っており働く環境が整っている傾向にあることが要因となっています。
休日出勤に関しては、社労士事務所では発生するケースがあるのに対し、一般企業ではほとんど発生しないでしょう。とはいえ社労士事務所であっても、月1回の土曜日出勤が求められるのみであるなど、あまりにも過度に厳しい働き方を求められることはほとんどないでしょう。
繁忙期以外の時期は業務も比較的落ち着くため、閑散期と呼びます。
社労士の閑散期は、繁忙期が一段落した5月や8月、11月などが該当します。これらの時期は手続きや申請の期限があまり無いため、業務量も減少しやすいです。
閑散期は残業月0時間で働く社労士も少なくありません。繁忙期に備えてこの時期に無駄な残業をしないようにしている社労士も多く、当然、休日出勤も発生しづらい時期といえます。
閑散期は繁忙期に比べると直接的な労務業務は減少しますが、その分の時間で以下のような業務を行うのがよいとされています。
これは社労士事務所で働く社労士のみが行う仕事ですが、
忙しい時期には十分にコミュニケーションを取れない場合もあるため、閑散期にはクライアントとじっくり向き合い、ニーズをヒアリングする時間を持つことが有効です。
繁忙期の残業時間を少しでも減らすべく、業務フローの見直しや改善策を検討するのも閑散期にやるべきことの一つと言えます。システムの導入や、手続きの効率化を進めるチャンスです。
社労士個人の成長を図るために、資格の勉強や研修への参加など、スキルアップを図るための時間に充てるのも手です。特に社労士業務に関連する最新の法改正や労務管理のトレンドを学ぶことは、正しい労務業務を行うにあたっても重要といえます。
社労士としての転職を考える場合、閑散期に活動を開始することがオススメといえます。閑散期であれば、転職活動にかけられる時間が増えるだけでなく、企業側も採用活動に余裕を持ちやすく、求人数も増えるからです。
今回は社労士の繁忙期について解説しました。
社労士はどうしても繁忙期が発生する仕事であるものの、社会的な評価は高いため、資格取得を検討している方については、ぜひ積極的に目指すことをオススメします。
また、社労士として転職するなら閑散期に活動することをオススメしましたが、その際はぜひ士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロをご利用ください。業界最大級の求人数の中から、ご希望条件に合った求人をご紹介させていただきます。