経理業務は数字や会計データを扱うため、「内向的な仕事」と見られがちです。しかし現代の経理担当者には、社内外で円滑にコミュニケーションを図り、問題解決に取り組むスキルが求められています。そこで本記事では、経理の仕事におけるコミュニケーション能力の重要性や具体的に求められる力について解説します。
経理業務は単に財務データを処理するだけでなく、社内外の人々と情報を共有し、意見を調整する場面が多々あります。経理担当者に高いコミュニケーション力が必要とされる理由は、以下の通りです。
経理担当者は、所属する企業の経営陣や各部署に正確な財務データを報告する責任があります。報告内容に誤りがあったり、誤解を招いたりすれば、会社の意思決定に悪影響を与える可能性があります。そのため、わかりやすく正確な情報を伝えられるコミュニケーション力が求められるのです。
経理はお金の流れを正確に把握するために、営業、マーケティング、人事など、他部署と密に連携する必要があります。また、各部署の予算管理やコスト削減に関する提案をする際には、経理部門がそのデータを収集・分析し、正しく伝えることが求められます。
また、正確な計上や処理を行うために、経理は他部署に細かい修正や申請の依頼をしなくてはなりません。納期や月末などに追われる営業にそのような依頼をする際のコミュニケーションについては、繊細なものが求められるでしょう。このような柔軟な対応をしつつも、期日までに正確なデータを作りきれるように進めていけるような、適切なバランス感覚も必要になってきます。
経理がコミュニケーションを取る対象は社内に限られているイメージが強いかもしれませんが、顧客や取引先とやり取りする機会も少なくありません。担当レベルでは社内とのやり取りがメインですが、部長レベル以上になると税務署や監査法人など、外部の関係者への対応や報告が必要な業務が増えてきます。このような業務において正確なデータの提供や報告できないと、会社の信頼性が失墜するリスクもあるので、適切なコミュニケーションが欠かせないのです。
経理担当者に求められる具体的なコミュニケーション力としては、以下が挙げられます。いわゆる「誰とでも気兼ねなく話せる能力」とは少し異なりますので、見ていきましょう。
大前提、経理として正しいデータを作成する能力は必要とされますが、その上でその情報を正確に伝える力が求められます。経理の当事者以外で、そのデータを見ただけで会社の状況をすぐ把握できる人はほとんどいません。
もちろん財務状況を報告しなければならない経営陣についてもそれは同じですので、財務に詳しくない人に対しても、理解しやすい形で伝えることが重要です。
他部署のニーズや状況を把握するために、しっかりと話を聞いて正しく理解することも大切です。コミュニケーション力といえば自分からのアウトプットに関するスキルというイメージが強いかも知れませんが、受け取る側としてのコミュニケーション力も必要なのです。
相手の意見や課題をしっかりと聞き、それに基づいて適切な解決策を提案することが、円滑な業務の遂行につながります。
予算や経費削減に関する提案を行う際、他部署と意見が対立することもあります。その際、相手の立場や意図を理解しつつ、自分の主張を適切に伝える交渉力が重要です。
また、会計処理の方法を巡って経理部署内でディスカッションが発生するケースもあります。その際に感情的な主張をすることなく解決策を見つけていけるような調整能力があると、経理職では重宝されるでしょう。
ここまで経理で必要とされるコミュニケーション力について解説しましたが、「想像していたスキルと違った」とか「そもそもコミュニケーション力に自信が無い」という方も多いのではないでしょうか?そんな方に向けて、上記のようなコミュニケーション力をどのように向上させていくべきかをご紹介します。
同じ経理職で働く上司や先輩は、ご自身よりも社内外とのコミュニケーションの経験が豊富なはずですので、まずはその方々の対応を見て自身との違いを見つけ出しましょう。とはいってもコミュニケーションは定性的な部分が多く、正解が分からないこともあるでしょう。
そのような場合は、上司や先輩からフィードバックをもらい、積極的に取り入れるようにしましょう。場合によってはコミュニケーションの相手である他部署の人からもフィードバックをもらい、自分の説明や提案が適切かどうかを振り返るのもよいでしょう。
意図的に社内コミュニケーションを増やしてみるのもオススメです。定期的なミーティングや社内での情報共有を通じて他部署との連携を強化することで、理解を深めることができるのと同時に、コミュニケーションについても向上が見込めます。日常のやり取りがスムーズになり、仕事の効率が向上することにも繋がるでしょう。
上記の方法については通常業務の中で出来ますが、それでも向上しない場合は、別途ロールプレイングやトレーニングの時間を設けるのがオススメです。社内の研修制度として行えればベストですが、近年は動画サイトなどで無料で気軽に視聴できるコンテンツも増えています。
業務外にはなってしまいますが、そのようなコンテンツを活用してスキルを身に付けていくのも有効です。
今回は経理として働くにあたって必要とされるコミュニケーション力について解説しましたが、他にもいくつかの適性が求められます。
経理職に従事する上でどうしても避けられないのが、数字と向き合うことです。数字や計算が好きである必要はありませんが、数字は見るのも嫌だという方には続けることが難しい仕事です。日々の業務で難しい計算式を要することなどは少なく、あったとしてもエクセルなどで管理しているため、セルに入力すれば自動で計算してくれます。ただし、簿記の勉強をする際は難しい計算式などを覚える必要があります。
経理では、PCでデータを管理することがほとんどなので、PCを使えることが大前提となります。「使える」と一言にまとめても、WordやExcelを最低限使えれば問題ないでしょう。
経理では決まりごとが多くあります。例えば、その日までに処理を終わらせなければいけない締めや、必ず毎日行うルーティンワークなどがあります。その時やらなければいけないことを、先延ばしにしてしまう癖のある人は気を付けましょう。
企業のお金を管理する経理の仕事でミスは許されません。大きい会社であればあるほど、自分のミスが後工程に大きく影響を与えることがあります。初めは小さなミスですが、いつの間にか大きなミスになっていることも少なくありません。場合によっては一円を合わせるために、原因を探すようなこともあります。営業などのように何百万の売上をあげるといったような、目立つ仕事ではなく地道な仕事が多いですが、その一つ一つに責任を持って取り組める人が経理に向いていると言えます。
今回は、経理職に必要とされるコミュニケーション能力について解説しました。経理担当者には、単なる数字の処理を超えて、他部署や外部の関係者と密にコミュニケーションを図り、会社全体の目標達成に貢献する力が求められています。
そのため、コミュニケーション力を向上させることで、所属する企業内ではもちろん、他の企業の経理職に転職するにあたってのキャリアアップにもつながりますので、積極的に習得していきましょう。