税理士は、難関国家試験の税理士試験に合格している「税」の専門家であり、税理士事務所や税理士法人をはじめとした様々な職場でニーズが高くなっています。今回は、そんな税理士が転職で実現可能な年収や、年齢と転職難易度の相関関係など、転職活動をするにあたって知っておくべきポイントを、網羅的に徹底解説します。
税理士は、難関国家資格である税理士資格を持っている方のことを指します。税理士資格は税理士試験の合格、および実務を2年間以上経験することで取得できます。また、試験免除の制度などもありますので、詳しくは以下の記事にてご確認ください。
【税理士の概要について】
【税理士試験について】
【税理士の実務経験について】
税理士試験は年に一度実施されているものの、難易度が非常に高いため、合格者もかなり少ない傾向にあります。そのため、2024年現在も税理士の転職における市場価値はとても高い状態といえます。
その一方で税理士登録者数は増加傾向であり、2023年時点で81,280名の税理士がいます。2023年の税理士試験から受験資格が緩和されたこともあり、今後もこの傾向は続くと予測されています。
つまり市場価値は高いものの税理士の人数が増え続けているため、プラスアルファのスキルや知識がある税理士が特に求められているのが直近のトレンドです。
そしてプラスアルファのスキルの中でも需要が高まっているのが、相続税とM&A業務、そして国際税務です。
日本社会の少子高齢化は一段と進行しているため、個人の相続税対策や相続手続き代行の需要は高止まりが続いています。一方で、相続業務は一部の税理士にしか対応できないため、相続税の知識や業務経験のある方は、転職市場において引く手あまたとなっています。
また、少子高齢化は中小企業の後継者不足にも影響を及ぼしており、2023年の日本企業の後継者不在率は53.9%でした。このような企業を廃業から守るために、他の企業に買収されることで事業を継続する役割が、M&Aにはあります。そんなM&AをサポートするM&A業務は今後も非常にニーズが高いため、そのスキルがあれば転職市場でも高く評価されます。
そしてコロナ禍から明け、日本企業の海外進出はもちろん、外資系企業の日本市場への参入や、国際会計基準(IFRS)の導入をする企業が増えてきています。このような企業の税務的な問題を包括的に解決できる国際税務のスキルについては、大手税理士法人だけでなく、海外子会社を持つ大手企業の管理部門でも強く求められています。
上記のようなスキルを持っている税理士については、より好条件で転職しやすくなっているというのが、最新の税理士の転職市場です。
出典:税理士制度│国税庁
税理士の市場価値が高い理由として資格取得の難しさをご紹介しましたが、その他の理由として、税理士に独占業務があることが挙げられます。独占業務には、以下の3つが該当します。
これらの業務を行いたい、もしくは代行依頼したいとなれば、税理士に依頼しなければなりません。いずれも多くの企業で必要な業務なので、税理士の市場価値も高くなるというわけです。
税理士の独占業務について、それぞれの具体的な業務内容などの詳細は以下の記事に詳しくご紹介していますので、併せてご参照ください。
先述したように税理士はニーズが高いため、幅広い選択肢からマッチした職場を選ぶことができます。
最も一般的な転職先としては、税理士事務所や税理士法人が挙げられます。税理士が代表を務めており、業務内容についてもスキルが存分に活かせるため、9割ほどの税理士が税理士事務所や税理士法人で働いているとされています。
その他にも税理士のニーズが高い代表的な職場として、以下が挙げられます。
これらの職場で税理士がどのような役割を果たすのかについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。
また、企業や事務所で働くのではなく、税理士事務所などを独立開業するという手段もあります。税理士の多くが将来的な独立を目指していると言われていますが、必ずしもメリットばかりではないため注意が必要です。税理士が独立開業するにあたっての流れや注意点について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
BIG4税理士法人とは、税理士法人の中でも特に大手の4法人を総称した呼び名で、以下の法人が該当します。
これらの法人は全て、以下の国際的な四大監査法人との業務提携をしています。
この業務提携をしていることもあり、いずれの税理士法人もクライアントの規模が大きく、扱う業務の幅も広い傾向にあります。給与体系が高く、働き方も良いため人気の転職先ですが、社員数が多くキャリアアップがしづらいなどのデメリットもあります。
また、それぞれの法人で得意分野や対応領域が異なっているので、それらを踏まえて応募先を選ぶ必要があります。
BIG4税理士法人について、詳しくは以下の記事でもご参照ください。
転職活動においてどうしても採用の可否に関わってくるのが、年齢です。当然ですが、若いほうが採用されやすくなり、それは税理士であっても同じです。
ただし、税理士の転職市場において年齢と同じかそれ以上に大切なのは、実務経験です。経験年数の長さやスキルの高さは、即戦力として働けるかを採用側が見極める重要なポイントとなるのです。
とはいえ20代や30代であれば、経験の程度に関係なく税理士資格を活かしての転職はしやすいといえます。一方で、40代や50代以上になってくると、実務経験やスキルの重要性が増してきますので、初めの章でご紹介した「プラスアルファのスキル」などを持っていないと、転職成功の可能性は下がってしまいます。
令和2年賃金構造基本統計調査によると、税理士全体の平均年収は約958万円となっています。日本の平均年収は約461万円のため、平均の2倍以上の年収といえます。
平均年収から見ると高年収に感じられる税理士ですが、実際にどの税理士もこのくらいの年収かというと、そうではありません。特に開業税理士については、数千万円の年収を稼ぐ税理士もいれば、全く稼げない税理士も存在します。また働く職場、また企業の規模感などによっても年収は変わってきます。
税理士の年収は現実的にはどのくらいなのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
税理士業界は比較的、転職者が多い傾向にあります。税理士資格を活かして転職したいと考えている方は、どのような理由を持っているのでしょうか?士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロで伺うことの多い、代表的な転職理由についてご紹介していきます。
実際、年収は最も生活に関わる部分になりますので、年収アップのために転職するという方はどの業界でも一定数いらっしゃいます。特に小規模の会計事務所に勤務する税理士に関しては、業界の中では年収が高いとは言えないため、規模感の大きい税理士法人や一般企業などに転職したいと感じる方は多いようです。
今の年収に満足していない税理士は、「給与体系には納得しているが、評価制度に納得がいかない」もしくは「評価制度には納得しているが、給与体系に納得がいかない」のいずれかの理由を抱えていることが一般的です。
ここ4,5年で働き方改革が進みつつあり、税理士業界でも残業時間の適正化や休日出勤の廃止など、働きやすい環境の整備が進んできました。
そして2020年からのコロナ禍を通して、リモートワークや時差出勤といった多様な働き方が世間に定着していくに伴い、柔軟な働き方を希望する税理士の方も増えてきました。
一方で税理士業界では、時期によっては60時間を超える残業時間が発生したり、基本的な「定時で出社」という働き方以外にできないという職場は、まだまだ少なくありません。
そんな中で、BIG4税理士法人など、働きやすい環境の整った職場への転職を検討する方もいらっしゃいます。
税理士は最新の税法をキャッチアップするために、常に勉強が必要と言われています。ただ、対応できる業務幅を広げるためには、やりたい業務に対応している職場や、その業務に携われる環境があることが大切です。
働く職場ごとに事業領域や担える役割は変わってきますので、理想の経験が積める環境への転職を目指す方も多いです。
どの職場を目指すとしても、以下の3つのステップに沿って考えていけば、筋の通った志望動機にすることができるでしょう。
各職場への志望動機について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
【税理士事務所への志望動機】
【M&A業界への志望動機】
【FASへの志望動機】
職場ごとの税理士資格を活かした求人については、以下よりヒュープロで掲載している求人をご覧ください。リモートワークや年間休日数、年収帯など希望の条件で検索ができますので、ぜひご活用いただけますと幸いです。
【税理士事務所・税理士法人の求人】
求人はコチラ
【企業の管理部門の求人】
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【M&Aアドバイザー・M&A仲介の求人】
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繰り返しにはなりますが、税理士は市場価値が高いため、ある程度有利に転職活動を進めることができるでしょう。ただし、応募先への転職を目指す方の中には、同じく税理士を持っている方が応募を検討している可能性が高いです。その場合、税理士資格を持っているというだけでは、簡単に内定を勝ち取れないかもしれません。
よりスムーズに、かつ効率的な転職活動にするためには、転職エージェントの活用が欠かせません。
転職を検討するにあたって自分で求人を探そうとすると、求人サイトで検索する、もしくは各社HPの採用ページで希望とマッチしているかを確認するなどの手段が一般的です。このやり方には二点の課題があります。
一つ目は、マッチした応募先を見つけるのに時間と手間がかなりかかってしまうことです。求人サイトでは希望条件によってある程度件数を絞ることが出来るかもしれませんが、他の条件なども踏まえて応募するかの判断をするため、一つ一つの求人を詳細に確認しなければなりません。仕事を続けながら転職活動をする方が多い中で、この部分に時間を取られると、転職活動全体が進めづらくなってしまうでしょう。
二つ目は、求人に知りたい情報が全て記載されているとは限らないことです。求人票には、勤務場所や年収など、最低限の必要な情報は必ず記載されていますが、求人サイトごと、また企業や事務所ごとに記載されている項目はまちまちです。そのため、もしうまく選考まで進んだとしても、求人からは知り得なかった部分でミスマッチを引き起こしてしまうリスクがあります。選考段階でそこに気づいてしまうと、また応募先の選定から始めなくてはなりませんので、かなり手間が増えてしまいます。
このような課題を解消するのが、転職エージェントの利用です。転職エージェントは担当者がつきますので、希望条件などを伝えることでマッチした求人を教えてくれます。また、採用活動をしている企業側にも法人担当がついているため、求人票には書き切れないリアルな情報も持っています。それによりミスマッチが少なく、手間も少ない転職活動にすることができるのです。
面接の日程調整や内定前後のフェーズでの年収交渉など、心的にも負担がかかる部分も対応してくれるので、精神的な余裕を持ちながら転職活動をしたいという方にもオススメです。
また、多くの転職希望者のキャリア支援実績がある転職エージェントは、最適なキャリアプランの提案もしてくれますので、まだ転職活動の具体的なイメージがついていないという方にも、最適なアドバイスを提供してくれるでしょう。
転職エージェントには、大きく分けて総合型のエージェントと業界特化型のエージェントがあります。幅広い業界を見てみたいという方は、総合型のエージェントも良いかも知れませんが、税理士を活かした仕事がしたいという意思が固まっているのであれば業界特化、つまり税理士業界に特化した転職エージェントの利用がオススメです。
税理士業界特化のエージェントは総合型に比べれば全体の求人数は少ないかもしれませんが、業界内の求人数については引けを取りません。また、業界に特化していることで、より深い企業の情報や業界の採用トレンドなどを把握していますので、転職希望者にとっては、より正確で質の高い情報を得ることができます。
当社ヒュープロは、士業・管理部門特化の転職エージェントです。税理士資格を活かせる求人を多くお取り扱いしており、特に会計事務所の求人数はトップクラスです。それだけでなく、各ご登録者を担当させていただく専任キャリアアドバイザーより、書類添削や選考段階ごとでの面接対策を実施しており、それぞれ高い満足度を頂いております。初めてのご相談からご入社に至るまで、全て無料でご利用いただけますので、是非ご活用いただければと存じます。
ここでは当社ヒュープロで転職のご支援をさせていただく税理士の方からの、よくある質問についてまとめました。
先述したように税理士になるには2年の実務経験が必要なので、実務経験者として転職活動を行うことが一般的ですが、税理士事務所で実務経験を積んだのちにM&A業界で働く場合などは、未経験の業界への転職活動ということになります。
ただしその場合でも、全く働けないというわけではありません。ただし、やはり年齢の部分は大事になってきますので、未経験の業界への転職をするのであれば、なるべく早めにするのがよいでしょう。
結論、学歴はあまり関係ありません。企業は、学習スキルや地頭の良さの判断軸として学歴を気にすることがありますが、税理士資格は学歴を優に超えたスキルを持っていると証明できるからです。
また、そもそも学歴を採用の判断要素に入れている企業は、近年あまり多くはありません。学歴に関係なく、自信を持って転職活動を進めていきましょう。
どうしても税理士業界は男性がほとんどを占めているというイメージが強いため、そもそも採用されるのか不安に感じる女性の税理士も少なくありません。しかし、女性活躍が推進されている昨今の日本社会で、女性税理士も活躍しています。
一見、税理士の仕事と英語力は関係ないようにも感じられるため、英語力があっても転職でアピールする必要が無いと感じている方もいらっしゃいます。
しかし、社会的ニーズが高まっている国際税務をはじめとして、様々な業務に英語を活かすことができます。どんな業務に活かせるのか、どの程度のスキルが「英語力がある」といえるのか、などについては以下の記事をご参照ください。
ご登録いただく転職希望者の中には、今回が初めての転職でない方も少なくありません。特に既に複数回の転職をしている方については、その回数が不利に働いてしまうのではないかと、懸念してしまうこともあります。
しかし税理士業界は、転職がある程度一般的ではあるため、そこまで転職回数がマイナスポイントにはなりません。ただし、10回以上の転職になると、短期離職の懸念に繋がりやすくなってしまいます。
税理士業界は繁忙期と閑散期の業務量の差が大きいという特徴があります。閑散期の方が求人は多く出される傾向にあるため、その時期に該当する6月から11月が転職にオススメの時期です。
この中でも8月の税理士試験直後は転職希望者の活動が活発になり、それにあたって求人も多く掲載されるため、この8月が最もオススメの時期といえます。
激務かどうかの捉え方は人それぞれですが、どの職場であっても繁忙期はある程度の残業時間は覚悟しておく必要があります。また、場合によっては休日出勤が発生する可能性もあります。
端的に申し上げますと、税理士事務所と税理法人の総称が会計事務所です。
税理士事務所は代表が一名の税理士であるのに対して、税理士法人は複数名の税理士が代表を務めています。
業務内容などは異なりませんが、これらの呼び名ごとでの違いについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。
【税理士の仕事内容についての関連記事】
ここまで税理士の転職活動について解説していきましたが、税理士事務所や税理士法人などでは税理士以外も働いており、税理士試験の一部科目合格や日商簿記2級を持っているだけでも十分に転職可能です。もちろん、税理士の方が有利ではありますが、資格に拘らず転職活動を進めるのがオススメです。
今回は、税理士の転職について解説しました。
税理士の市場価値は高く、有利な転職活動を進めることができます。ただし、スムーズかつ確実に転職を成功させるために、士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロを是非ご活用ください。