税理士事務所などを経営する税理士がクライアント増やしていく手段の一つとして、広告による情報発信があります。広告は有用性が高いものの、様々な法律によって規制されているので、それらに則って発信する必要があります。今回は、そんな税理士業界における広告規制について、違反となる禁止事項も含めて解説します。
税理士の代表的な就業先である税理士事務所や税理士法人は、売上・利益を増やすためにクライアント数を増やす努力が欠かせません。
その手段の一つとして挙げられるのが、他の事務所との対応分野による差別化です。税務顧問などの業務はどこの事務所でも対応していますが、国際税務や相続、M&A業務などはより専門的な知識が必要なため、対応できる事務所は限られています。そのため、特に事務所が多く設立されている首都圏などで、ご紹介したような業務に対応して差別化し、クライアントの増加を実現しています。
また、クライアントから受け取る報酬についても、差別化できる要素の一つといえます。必ず費用が安い方が選ばれるというわけではありませんが、サービス内容が似通っている税理士業界において、その金額がどのくらいかというのは、クライアントの選択の判断に大きな影響を与えます。つまり安さを売りにするというのも、クライアント増に有効な手段といえるのです。
このような手段によって他との差別化を図れたとしても、必ずしもクライアントが増えるというわけではありません。なぜなら、そのことをクライアントに知れ渡っていない可能性があるからです。
そんな時に「広告」という存在が重要になってきます。広告はそれらの差別化要因、つまり事務所のアピールポイントを効果的にクライアントに伝えることができる手段なのです。広告でのアプローチによって初めてその事務所の有用性に気づき、業務を依頼するクライアントも増えるはずなので、広告を掲載すること、そして効果の高い広告にすることが、安定的な経営に重要な役割を果たすのです。
とはいえ、広告には法規制がかかっていますので、どんな広告でも掲載していいわけではありません。次の章では、具体的にどんな規制事項があるのか見ていきましょう。
平成13年の税理士法改正により、税理士の業務広告は原則自由とされています。ただし、「税理士会会員の業務の広告に関する細則」そして「税理士会会員の業務の広告に関する運用指針」によってガイドラインが定められているため、これらに抵触しないようにしなければなりません。
そしてどの業界でも広告掲載に際して守らなければならない景品広告表示法に関しても、違反しないように注意する必要があります。
これらのガイドラインや法律によって、過度にメリットをアピールしている広告や、信ぴょう性の薄い情報を明記した広告が掲載されることを防いでいます。広告主が意図していなくてもそのような表現に見えてしまい、掲載ができないケースもありますので、注意が必要です。
具体的に税理士が広告でやってはならないことに関しては、以下が挙げられます。
どうしても他の事務所との差別化を図ろうとして広告を掲載するため、特定の事務所と比較したり、良く見せようとし過ぎて虚偽もしくは期待を持たせ過ぎてしまうケースがあります。程度の問題もあるため一概に可否を判断することは難しいものの、努力が台無しにならないために広告掲載の前にガイドライン及び法律をしっかり確認しておくのが良いでしょう。
また、税務行政庁在職時の具体的な役職名の掲載も禁止されてますので、併せて注意しておきましょう。
今回は、税理士と広告の関わりについて、広告規制などを中心に解説していきました。
どうすればクライアントが増える広告になるのかを考えることは、収益アップには非常に重要なポイントですが、ルールや法律に則った枠組みで作ることが絶対であることをお分かりいただけたのではないでしょうか?
また当然ですが、広告の質だけに注力するのではなく、獲得できたクライアントへのサービスの質を高くすることも忘れてはなりません。リピート客を増やし、客離れのリスクを減らすことに大きな役割を果たすからです。また、それによる口コミやSNSなどでの高評価の拡散も、クライアント増に一役買うでしょう。