公認会計士試験は三大国家資格の一つである難関資格ですが、その試験は1回のみではなく、「短答式試験」と「論文式試験」の2段階に分かれています。そのうち一次試験として最初に受験する「短答式試験」とはどんな試験なのでしょうか?今回は、短答式試験の内容や合格率、対策法まで徹底的に解説していきます!
公認会計士試験は「短答式試験」と「論文式試験」の二つの試験で構成されており、その一次試験として受験するのが短答式試験です。
短答式試験はマークシート方式の試験であり、1年に2回実施されます。
この短答式試験に合格することで、二次試験である論文式試験の受験資格が生まれ、論文式試験まで合格して実務経験など登録に必要な要件を果たすと晴れて公認会計士となることができます。
公認会計士試験には、受験資格はありません。
公認会計士試験は三大資格の中で唯一、受験に国籍や年齢などの条件がないため、だれでも受験することができます。
加えて、医学部やロースクールなど学歴の条件もないため、様々な経歴の方が試験に挑戦することができます。
公認会計士の試験において、一部の受験生は特定の条件を満たすことで試験が免除される場合があります。
その特定の条件として、高度な経験や知識、また保有資格が挙げられますが、科目免除を受けるためには事前に申請が必要です。
出願の際に免除通知書の写しなどを提出しなければならないため、事前に免除制度に該当するのかや提出書類についても確認することが重要です。
以下、短答式試験においての免除対象者と免除科目について紹介します。
なお、免除が認められる条件や科目については、公認会計士試験の実施機関や時期によって異なる場合もあるので、ご注意ください。
免除科目 | 該当条件 |
---|---|
全科目免除 | ・大学などで商学・法律学関連の教授または准教授歴3年 ・商学・法律学関連における博士の学位 ・高等試験本試験合格者 ・司法試験または旧司法試験第2次試験合格者 |
一部科目免除 | ・税理士資格の保有(財務会計論) ・税理士試験の簿記論および財務諸表論2科目で60%以上取得(財務会計論) ・会計専門職大学院における特定以上の科目数および修士の学位(学位取得科目による) ・特定条件を満たす法人での会計または監査関連業務経験7年(財務会計論) |
短答式試験は択一式のマークシート方式の試験です。
試験の内容としては、二次試験である論文式試験と比較して、基礎的な問題が出題される傾向があり、基本的な専門知識を理解しているかを確認する短答式試験の意図が反映されています。
以下で具体的な試験科目と傾向について説明していきます。
短答式試験の試験科目は次の4科目になります。
中でも、公認会計士は会計の資格であるため、試験においても会計が重要な科目となっております。
短答式試験においては、財務会計論が他の科目に比べ、試験時間も点数配分も2倍の2時間200点と設定されており、合格の成否を左右します。
短答式試験については、4科目の総点数の70%が合格の基準点といわれています。
しかし、短答式試験は全ての科目を一度に合格しなければならず、1科目でも40%に満たないと不合格になる場合もあるため、まんべんなく点数を獲ることが重要です。
短答式試験については、一度合格すると2年間の免除期間があり、論文試験から受験が可能です。
そのため、まずは短答式試験に合格し、その後論文式試験に向けた勉強に取り組むのが一般的な流れとなります。
なお、試験免除が認められている2年以内に論文式試験に合格できなかった場合は、再度短答式試験からスタートすることになるので注意が必要です。
次に、試験当日の時間割について紹介します。
こちらは、令和7年の予定はまだ出ていないため、令和6年の時間割を参考にしています。
試験 | 着席時刻 | 試験時間 | 試験科目 |
---|---|---|---|
第Ⅰ回短答式試験 | 9:10 11:10 13:40 15:40 |
9:30~10:30(60分) 11:30~12:30(60分) 14:00~15:00(60分) 16:00~18:00(120分) |
企業法 管理会計論 監査論 財務会計論 |
ここからは、短答式試験のスケジュールと令和6・7年の試験日を紹介していきます。
公認会計士試験の短答式試験は、例年以下の通りの日程で行われます。
試験 | 願書受付期間 | 試験日程 | 合格発表 |
---|---|---|---|
第Ⅰ回短答式試験 | 8月下旬~9月中旬 | 12月上旬 | 翌年1月中旬 |
第Ⅱ回短答式試験 | 2月上旬~下旬 | 5月下旬 | 6月下旬 |
短答式試験は毎年12月・5月の年2回実施されます。
12月に行われる試験が第Ⅰ回試験、翌年5月に行われる試験が第Ⅱ回試験です。
令和7年(2025年)の試験日・出願期限は、以下の通りです。
翌年の令和7年(2025年)の公認会計士試験の実施スケジュール予定は以下の通りです。
試験 | 願書受付期間 | 試験日程 | 合格発表 |
---|---|---|---|
第Ⅰ回短答式試験 | (インターネット出願) 令和6年8月23日~令和6年9月12日 |
令和6年12月8日 | 令和7年1月17日 |
第Ⅱ回短答式試験 | (インターネット出願) 令和7年2月3日~令和7年2月25日 |
令和7年5月25日 | 令和7年6月20日 |
※金融庁の公認会計士・監査審査会サイトより、開催日程を確認して記載しています。
短答式試験は試験日の約3か月半前から受験願書の受付が始まります。合格発表については、第Ⅰ回・第Ⅱ回ともに試験の約1ヶ月半後に合格発表が行われます。
公認会計士試験は、その難易度の高さが大きな特徴であり、司法試験・医師国家試験と並ぶ三大国家資格といわれています。
その理由としては、勉強時間と合格率が挙げられます。
簿記知識などの事前知識に応じて異なりますが、一般的に短答式試験に備えるために約1,500時間以上の勉強時間が必要といわれています。
具体的には、試験時間や配点の比率が最も大きい財務会計論の勉強に約600時間ほどかかるといわれています。公認会計士は会計の資格であるため、試験においても会計が重要な科目となっており、他の科目と比較して出題範囲も広くなっています。
その他の科目については、それぞれ管理会計論は約300時間、企業法は約400時間、監査論は約200時間が必要な勉強時間の目安となっています。
簿記2級合格に必要な勉強時間の目安が約300~400時間であるため、比較すると4~5倍の時間が必要になる点で、かなりの努力が必要な難易度の高い試験であることがわかります。
短答式試験の難易度の高さを表す指標として、合格率を挙げることができます。
直近実施された、令和6年公認会計士第Ⅰ回短答式試験の合格率から見ていきましょう。
願書提出者数 | 16,678人 |
受験者数 | 11,003人 |
合格者数 | 1,041人 |
合格率 | 9.5% |
受験者数約17,000人に対して、合格者数は1,041人、合格率は9.5%という結果でした。
第Ⅰ回、第Ⅱ回を合わせた直近5年間の短答式試験の合格率は、15%前後で推移しています。(属人ベース合格率:受験者の中でいずれかの短答式試験に合格した人の合格率)
論文式試験も含めた公認会計士試験全体の合格率は7.7%であり、同じく三大国家資格である医師免許の合格率91.7%、弁護士の合格率45.5%など他の資格と比較しても難易度の高い資格であるといえます。
第Ⅰ回試験 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 |
---|---|---|---|---|---|
願書提出者数 | 9,393人 | 14,192人 | 12,719人 | 14,550人 | 15,681人 |
答案提出者数 | 7,245人 | 9,524人 | 9,949人 | 11,401人 | 12,100人 |
合格者数 | 1,139人 | 2,060人 | 1,199人 | 1,182人 | 1,304人 |
合格率 | 15.7% | 21.6% | 12.1% | 10.4% | 10.8% |
第Ⅱ回試験 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 |
---|---|---|---|---|---|
願書提出者数 | 9,383人 | - | 14,958人 | 15,883人 | 16,678人 |
答案提出者数 | 5,616人 | - | 9,870人 | 10,429人 | 11,003人 |
合格者数 | 722人 | - | 780人 | 921人 | 1,041人 |
合格率 | 12.9% | - | 7.9% | 8.8% | 9.5% |
昨年の令和5年短答式試験と比較すると、第Ⅰ回短答式試験は合格率0.4%増、また第Ⅱ回短答式試験についても合格率0.7%増と微増傾向が続いているといえます。
また、5年間の合格率を比較すると、第Ⅰ回試験の合格率が10%~20%であるのに対して、第2回試験の合格率は7%~13%で推移しており、全体的に第Ⅰ回試験の方が合格率が高いことがわかります。
試験難易度については、第Ⅰ回試験も第2回試験も原則として違いはないとされていますが、試験によって得点比率が異なるため、多少合格難易度に差が生じるといえます。
また、5月26日に行われた令和6年第Ⅱ回短答式試験では、直近5年間で出願者数が最も多く、こうした近年の受験者増加傾向を踏まえて、以前に比べると難易度が高まりつつあるといえるでしょう。
短答式試験の合格を目指すとなると、専門性の高い知識を長い時間をかけて習得する必要があるとイメージしている人も少なくありません。
確かに、短答式試験の合格レベルまで知識を習得するためには、最低限の勉強時間を確保する必要はあるでしょう。
特に、社会人として仕事をしながら短答式試験合格を目指すという受験生の場合、試験までに作れる勉強時間にはどうしても限界があります。
つまり、合格を目指すためには、限られた勉強時間をいかに効率的に使うかがポイントとなってきます。
ここからは、短答式試験合格までの勉強時間を節約して効果的な実力アップを実現するためのポイントを紹介していきます。
短答式試験を含む公認会計士試験を受験しようと考えた時「独学では絶対無理」といったような声が多いのは事実です。
しかし、公認会計士に限らず、どんな試験でも「的確な内容を、ペースを守って継続して勉強すること」で合格は見えてきます。
そのために、自分の学習スタイルを早期に確立して、勉強時間を効率的に使うのが重要だと考えられます。
公認会計士資格の取得を狙う場合、勉強スタイルは予備校と独学の2つに大別できます。
各勉強スタイルの特徴は次の通りです。
予備校スタイル | ・カリキュラムが決まっている ・一定ペースで勉強を継続できる ・同じ資格試験を目指すライバルと切磋琢磨できる ・通塾費用が発生する |
独学・自習ベース | ・自分のペースで勉強しやすい ・自分でモチベーションを維持するのが難しい ・コストを抑えられる ・学習ポイントにメリハリを作るのが難しい |
特に社会人の場合、どうしても仕事との兼ね合いで勉強時間に制限がかかります。そのため、予備校を活用することに抵抗があるという人も少なくはないでしょう。
もちろん、公認会計士試験に独学で合格することも不可能ではありません。不定期な勉強時間を上手にやりくりしながら、ポイントを押さえて学習を進めればやがては合格水準に達するでしょう。
その一方で、完全な初学者が公認会計士試験を目指す場合、どうしても試験に必要なポイント・重要箇所などのメリハリをつけるのが簡単ではありません。加えて、カフェなどで勉強を進めるとしても、自己管理を上手くできないと途中で挫折してしまうおそれがあります。
したがって、初学者が「まずは試験に向けたペースを作りたい」と希望するのなら、予備校・通信コースなどの初学者レベルの講座を受講して、勉強に慣れてきた頃合いを見計らって自習スタイルに切り替えるのが効率的でしょう。
もちろん、費用や仕事の兼ね合いもあるとは思いますので、独学なら独学で、予備校に任せるなら予備校スタイルで、とにかく最初から最後まで計画性をもってスタイルを維持するのが重要です。
なお、独学で公認会計士試験合格を目指す場合のメリット・デメリットについては、以下のコラムでも詳しく解説しています。あわせてご参照ください。
自分がどのようなスケジュールで勉強を進める予定なのか、自分がどれだけの勉強時間を重ねてきたかを可視化するのもポイントです。なぜなら、今後の道筋が明確になるだけではなく、今までの努力が励みになって勉強のモチベーションが高まるからです。
たとえば、スマホアプリを日記代わりに勉強時間を記録するのも良いでしょう。「これだけやった」と励みになりますし、勉強の足りない部分を可視化でき、勉強にあてられそうな時間も確認できます。
また、勉強時間を記録しておけば、過去の反省からどんどん時間の使い方・捻出方法が上達するはず。短答式試験が近づくにつれて、どんどん勉強時間を効率的に使えるようになるでしょう。
短答式試験を含む公認会計士試験が難しいといわれる理由の一つに、出題範囲の広さが挙げられます。
膨大な量を暗記するだけでも大変ですが、問題はあくまでも回答者がしっかり理解しているかを試すものであるため、丸暗記では点数を稼ぐことはできません。
そのため、知識として理解することが必要となります。
また、知識として正しく理解しているのかを試すのであれば、人に説明してみることもおすすめです。
暗記した情報を自分の言葉でかみ砕いて説明してみることで、自身の理解度を確認しながら反復して勉強することができ、その後の論文式試験での応用問題にも難なく対応できるでしょう。
こうして知識として理解することは、記述式である二次の論文式試験を受ける際にも必要となる力のため、基礎的な内容であっても出題の形式を問わず本質を答えられるように勉強することが大切です。
公認会計士試験に必要な勉強時間と学習のコツに関しては以下の記事で詳しく説明していますのでぜひご参考にしてみてください。
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ここからは、短答式試験に合格した場合と不合格であった場合に分けて、試験後の動きについて説明していきます。
短答式試験に合格した後は、論文式試験に挑戦するのが一般的な流れとなります。
論文式試験は、8月中旬ごろに3日間のスケジュールで実施されます。
短答式試験が基礎的な専門知識を問う内容であるのに対して、論文式試験は基礎知識を前提とした応用能力を問う試験となっています。
試験科目としては、必須科目(財務会計論、管理会計論、監査論、企業法、租税法)に加えて、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学から一つ選択)があります。また試験方式についても、マーク式の短答式試験に対して、論文式試験は論述・筆記試験となり、短答式試験とは大きく異なります。
また、晴れて論文式試験にも合格した場合、公認会計士試験には合格したことになりますが、公認会計士の資格を得るためには、3年以上の実務経験が必要です。またその後、実務補修を受けて、修了考査に合格すれば、公認会計士の登録を進めることができます。
短答式試験を受験し、不合格だった場合、何度でも再挑戦することができます。
さらに、短答式試験は年に2回開催されるため、第Ⅰ回短答式試験で不合格だった場合でも、同年の第Ⅱ回短答式試験を受験することができるため、挑戦の機会は多くあるといえます。
短答式試験は、毎年15%前後の合格率で推移しており、不合格者が多い試験であるため、複数回の受験が必要となることも想定されます。
不合格であった場合でも、苦手科目の克服や勉強計画の見直し、また資格学校のサポートを活用しながら、次回の受験での合格に向けて準備するのも一手です。
また、次回以降に再度受験するのではなく、就職・転職を考える方も多くいらっしゃいます。
公認会計士試験といえば、最難関試験の一つであり、簡単に合格できるものではありません。
短答式試験においても、毎年約15%前後の人しか合格できないため、勉強してみたけど合格できず、貯蓄も底をついたため就職しなければいけない、という人も少なくありません。
そうした中で、「不合格でも就職・転職はできるのか」と不安になられる方もいらっしゃると思いますが、ご安心ください。
難関である公認会計士試験に合格しなかったからといって、今まで勉強してきたことは無駄になりません。
昨今の就職市場の報道の通り、売り手市場が続いているため、会計や簿記の知識を有する方であれば就職することはさほど難しくありません。
社会人としてのキャリアがある場合は、企業の経理部門などで採用される事例は多くあります。
また、既卒の方向けにも、大手企業の第二新卒枠や、ベンチャー企業、会計事務所などでもポテンシャル層向けの採用が行われています。
弊社にご登録いただいている転職相談者さんの中でも、試験不合格後に事業会社に入社して国際会計基準のリーダーとなった人や管理部担当取締役になった人など、公認会計士試験の勉強を経験して活躍している人はたくさんいます。
短答式試験に不合格であっても、就職、転職の際にはあまり後ろ向きにならず、むしろ何年間もひたすら勉強をしてきた根性と、知識を採用担当者にわかってもらえるようにしましょう。
試験の合格・不合格にかかわらず、何年間も勉強をしてきた根性と知識は確実にキャリアアップにつながります。
ヒュープロでは、そんな公認会計士試験受験者への人材紹介サービスを展開しております。
就職・転職活動にあたって、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのは骨が折れるものです。そこで活用すべきなのが人材エージェントです。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。また書類添削や面接対策といった選考準備に対しても、専任アドバイザーによるサポートが充実しています。
さらに、業界特化型エージェントにおいては、金融機関や士業バックグランドを持つ人材の転職支援実績を多く有しているため、企業として一定の選考に係るナレッジや企業とのパイプラインを有しており、転職に関するリアルな情報提供が可能です。
業界特化の転職エージェントを利用することで、ライバルと差別化を図ることができ、転職を有利に進めることが可能ですので、ぜひ検討してはいかがでしょうか。
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