税理士試験は合格する難易度が非常に高い国家試験であり、社会的にも信頼性が高い資格の一つです。そんな税理士試験に対して、「おかしい」という声が上がることも少なくありません。
本記事では、そんな税理士試験がおかしいと言われる理由をご紹介した上で、それでも受験するメリットがあるのかを見ていきます。
税理士試験がおかしいと言われる理由として、主に挙げられるものを7つご紹介させていただきます。
特に税理士試験についてあまり知らない人が「おかしい」と思うポイントとしてよく挙げられるのが、税理士試験に合格するだけで税理士になれるわけではないことです。
税理士になるには、税理士試験の合格と併せて「租税または会計に関する事務」の実務経験を2年以上積んだ上で、日本税理士会連合会に登録しなけばならないのです。税理士登録はさほど手間がかからないものの、実務経験を2年間積まなければならないのは、時間的な拘束があるために「おかしい」とする人もいるようです。
なお、実務経験は下記のように定められています。
ちなみに、この実務経験は試験の前後どちらで積んでも問題ないので、事前に会計事務所で働きながら勉強を進めるという人も多いです。
税理士試験は「合格基準点は各科目とも満点の60パ-セントです。」と定められています。
しかし、必ずしも6割の問題で正答を書いていれば合格できるとは限りません。なぜなら税理士試験では、合格者の人数を調整する傾斜配点(正答率の低い問題の点数を高く、正答率の高い問題の点数を低くするなど)という方法を取り入れているからです。
そのため、受験者に手応えがあったとしても結果を見たら不合格だったというケースも少なくないのです。これは「合格基準点」が設定されているにも関わらず、傾斜配点で合否が左右されてしまうことによって、例えば受験生のレベルが高い年に受験した場合は、それだけで合格するのが少し難しくなってしまうことを意味します。
このような、合格基準点の形骸化による不公平さに「おかしい」という意見があるのは、一理あるでしょう。
税理士試験の勉強では、受ける科目の理論を丸暗記しなければならなりません。また、「捨て問」と呼ばれる、普通の勉強だけで解くのはほぼ無理、と言った超高難易度の問題が含まれていることがあります。この問題は時間をかけて正解するよりも他の問題を解く時間を優先するのが正攻法ですが、そのためには「捨て問」を見極める力が必要です。
試験に合格するためにこのような丸暗記や対策をするのは、当然と思う方も多いかも知れません。しかし、税理士試験はその後に税理士として活躍するために取得する人が大多数です。
そんな中で、この力は税理士になってから活かせるスキルとは言い難く、不必要な力を身に付けないと試験合格が遠いてしまうという仕組みになっています。
このような税理士試験対策にまつわる仕組みに対しても「おかしい」と感じる人は多いです。
税理士試験は例年、8月上旬~中旬の3日間で行われます。平日の日程で一度のみしか実施されず、オンラインや代替日程での受験も不可能であるため、働きながら試験合格を目指す方の中には、スケジュールの都合で受けられないという方も多いです。
この試験スケジュールに対して、「おかしい」「土日にしてほしい」という意見は少なくありません。
税理士試験は、試験日から合格発表日まで4か月前後かかるのが通例です。科目合格制という試験の特徴から、複数年に分けて合格を目指すことが一般的な税理士試験において、この期間で次の科目の勉強をするか、落ちた科目の勉強をし直すかという判断が明確にできないのは、勉強計画の組みづらさに繋がるでしょう。また、就職や転職に資格を活かしたいという方もその期間で求職活動に踏み切れません。
このような独自のスケジュールが、「おかしい」と言われている一つとして挙げられるのです。
下表は2023年実施までの3回の税理士試験の主な科目の合格率です。多くの科目が10~20%の合格率で推移している一方で、簿記論と財務諸表論の合格率の年ごとの高低が大きいのが見て取れるでしょう。
科目 | 令和5年度合格率(%) | 令和4年度合格率(%) | 令和3年度合格率(%) |
---|---|---|---|
簿記論 | 17.4 | 23.0 | 16.5 |
財務諸表論 | 28.1 | 14.8 | 23.9 |
所得税法 | 13.8 | 14.1 | 12.6 |
法人税法 | 14.0 | 12.3 | 12.8 |
相続税法 | 11.6 | 14.2 | 12.8 |
消費税法 | 11.9 | 11.4 | 11.9 |
全体(延人員) | 18.8 | 16.7 | 16.5 |
これは、簿記論や財務諸表論の受験者数が他の科目よりも圧倒的に多いことにより、試験難易度の調整の影響が大きく出やすいことが要因と推測されています。
ただ、受験生にとっては一年に一度の試験であり、合格率が低い年に当たってしまって不合格となった受験生を中心に、「おかしい」という声も一定数上がっています。
これは税理士試験というより税理士になった後の要素ではありますが、その難易度の割には高年収が実現できない可能性があります。具体的には、単純な処理系統の業務がAIに取って代わられたり、独立で失敗するケースなどが挙げられるでしょう。
せっかく難関資格に受かったのに、そのようなリスクを背負いながら働かなければならないというのは、「おかしい」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
ご紹介したように、税理士試験は「おかしい」と言われる要素が多いにも関わらず、受験者数が多く、合格者の市場価値が広く認知されているのは、それを上回るメリットが税理士にはあるからです。ここでは、そんな税理士になるメリットを5つご紹介します。
企業にとって税理士は、税金や会計の専門家であり、その知識やスキルを持つ人材は非常に重要です。また、税務や会計の問題が発生した際には迅速かつ正確な対応が求められるため、税理士資格を持つ人材は労働市場において重宝されるのです。
税理士は税金や会計に関する知識だけでなく、経営管理や法務の観点についても幅広い知識を持っていることが期待されます。そのため、ビジネス全般に関するアドバイスや意見を求められやすい立場にあります。また、企業の経営戦略に沿った会計システムを設計したり、法的な問題に対処したりすることが求められることもあります。
税理士は、会計や税務に関する知識を持つだけでなく、コミュニケーション能力や説明力も求められるため、幅広い業種・職種での活躍が期待されます。たとえば、企業の財務担当者や経理担当者、あるいは行政や法務関係の中の税務・会計に関する職種での活躍ができます。
また、業務の専門性以外にも税理士資格の取得を根拠として、正確な計算力や論理的な記述力が必要となるため、基本的な能力の高さもアピールできます。また、合格のために長期にわたって、目標に向かって粘り強く努力を重ねることができるといった点も十分アピールできるポイントでしょう。
税理士は、業務に対する責任や職業倫理に基づいた行動を求められます。そのため、法令遵守や社会的責任に基づく経営が求められる現代社会において、企業にとっては税理士との協力が不可欠であると言えます。
税理士は法律に基づいた専門家であるため、企業にとっては法的リスクを回避する上でも重要な存在です。税務や会計に関する問題が発生した場合には、税理士が適切な解決策を提供することができます。さらに、税務に関する法律や規制の変更への適切なアドバイスが求められます。
税理士試験は「おかしい」と言われている点はあるものの、合格して税理士資格取得ができれば高い市場価値を発揮することができます。
ただし、合格までに最低でも4,000~5,000時間の勉強が必要とされているため、計画的に勉強に取り組んだり、勉強しやすい環境で働くことが大切になってきます。
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