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M&Aのフロー・流れとは?検討~クロージングまでポイントを徹底解説!

HUPRO 編集部
M&Aのフロー・流れとは?検討~クロージングまでポイントを徹底解説!

M&Aのフローは、検討・準備、マッチング・交渉、最終契約の3つにフェーズを分けることができます。それぞれのフェーズにおいて注意すべき点があるため、事前にフローを把握することが重要です。今回の記事では、各フェーズの内容やM&Aのフローがスムーズにいくための重要なポイントについても紹介します。

M&Aの全体的な流れ

M&Aは長期間にわたりますが、全体的な流れを分類すると3つのフェーズに分けることができます。

・検討・準備フェーズ
・マッチング・交渉フェーズ
・最終契約フェーズ

各フェーズにはそれぞれ下記の工程が含まれます。

検討・準備 1. M&Aの相談・検討
2. M&Aをサポートしてくれる専門会社の選定とアドバイザリー契約の締結
マッチング・交渉 3. ノンネームシートの作成
4. 秘密保持契約の締結
5. 企業概要書の作成
6. 企業価値評価の実施
7. スキームの選択
8. トップ面談
9. 意向表明書(LOI)の提示
10. M&A基本合意書(MOU)の締結
11. デューデリジェンス
12. 最終条件交渉
最終契約 13. M&A最終契約締結
14. クロージング
15. M&Aの事後処理

この流れはあくまでも一例であり、M&Aのスキームや個別の要件については手続きを省略する場合もあります。
このようにM&Aはフェーズごとにさまざまな手続きが存在するため、M&Aアドバイザーなど専門家のサポートを受けながら進めるのが一般的です。

M&Aの基本的な(具体的な)流れ

検討・準備フェーズ

1. M&Aの相談・検討

M&Aの流れにおいて、売り手企業・買い手企業ともに最初に行うことは、M&Aに関する情報収集と、M&Aの目的の明確化です。

M&A仲介会社のウェブサイトや、M&Aの体験談などを参考に明確化したうえで、M&Aによって実現できることやリスクを洗い出すことからM&Aは始まります。

これらを踏まえ、M&Aの目的や方向性を明確化しながら、自社にとってM&Aが適した選択であるかを考えることが求められます。

目的や方向性が明確でなければ、その後のM&Aのフローがスムーズに行えなくなったり、思い描いたM&Aを達成できる可能性が低くなるため、円滑なM&Aの進行のためにも、情報収集と目的の明確化は重要となります。

2. M&Aをサポートしてくれる専門会社の選定とアドバイザリー契約の締結

M&Aにおいては、法律や会計、財務などの専門性の高い手続きが多く、専門家がいない状態で行うのは難しい傾向があります。

そのため、M&Aは、M&A仲介会社や士業事務所、銀行などサポートしてくれる機関と進めることが一般的です。

主な専門家としては、M&A仲介やFA(ファイナンシャルアドバイザリー)が挙げられ、こうしたM&Aに関して相談・アドバイスを行う専門家であるアドバイザリーと契約を締結してM&Aを進めていきます。

M&A仲介とは、売り手企業と買い手企業の両社の間に立ち、M&A交渉の調整役として、条件交渉やM&A案件を進める役割を担います。
一方FAは、売り手企業か買い手企業のいずれかの立場でM&Aを検討し、委託元の利益の最大化を図ります。

M&A仲介とFAの選択に明確な基準はありませんが、一般的には中小企業や小規模なM&Aの場合はM&A仲介会社が関わることが多く、上場企業などの大型の案件ではFAが取り仕切ることが多いです。

こうした専門家の選定の際は、業界に対する深い知見や担当者の実績を考慮する必要があります。
また、自社の従業員をはじめとして取引先や顧客など、M&Aに関わる全てステークホルダーに寄り添ってくれる、信頼のおけるアドバイザーを見つけることも重要です。

マッチング・交渉フェーズ

3. ノンネームシートの作成

売り手企業がM&A仲介会社やFAを選定後、買い手企業を探す段階がスタートします。

買い手企業を探すにあたり、まず最初にノンネームシートと呼ばれる資料の作成を行います。

ノンネームシートとは、会社が特定されない範囲で会社概要や財務内容が記載された資料になります。

自社がM&Aを希望しているという情報が外部に漏れてしまうと、事業に悪影響が及んだり、また株価の変動によりM&A交渉が難しくなる恐れがあるため、企業名を伏せたノンネームシートという形で情報を提示します。

このノンネームシートは、通常M&A仲介会社やFAなどの専門業者が作成し、主に買い手企業へ売り手企業を紹介する際に使用されます。

4. 秘密保持契約の締結

このノンネームシートにより買収を希望した企業とさらなる交渉に進むために、より具体的で詳細な情報を交換することが必要です。

そこで秘密保持契約を締結し、内部情報を交換することになります。

M&Aでは、フロー全体を通して多量の機密情報を共有するほか、さらにM&Aを進めていることが第三者に知られることにより、売り手企業に不利益が生じる可能性があるため、この段階で秘密保持契約を締結します。

5. 企業概要書の作成

秘密保持契約を締結したうえで、さらに具体的な交渉に入るために、より詳細な会社概要や売り手企業の強みなどをまとめた企業概要書(IM)が開示されます。

この企業概要書などの資料を基に買い手企業はM&Aを進めるかを社内で検討していきます。

6. 企業価値評価の実施

M&Aの売り手企業が非上場企業だった場合、市場において株式が取引されていないため、企業の株式価値評価を行い、譲渡価格の目安を算出する必要があります。

売り手企業にとっては、ここで企業価値評価を実施し、どの程度自社に価値があるかを把握しておくことで、その後の交渉をスムーズに進めることができます。

具体的な企業価値評価の方法として、以下の3種類の方法が一般的に用いられています。

・コストアプローチ:
売り手企業の純資産を時価評価したものを基準に株式価値評価を行う方法
・インカムアプローチ:
売り手企業の将来の収益力を考慮して株式価値評価を行う方法
・マーケットアプローチ:株式市場やM&A市場において、同規模の同業他社を参考に株式価値評価を行う方法

これらの計算方法により、算出される企業価値は異なるため、アドバイザリーと相談することで、最適な企業価値の計算方法に基づいて売却価格を算出することが重要です。

7. スキームの選択

M&Aの手法であるスキームについては準備段階から検証対象となり、ノンネームシートなどにも記載されますが、
企業概要書の開示と企業価値評価を経た段階で、本格的にその後のM&Aを進めるスキームの絞り込みが行われます。

代表的なM&Aスキームとしては、株式譲渡や事業譲渡、会社分割などが挙げられます。
M&Aの目的や戦略、売り手企業が抱えるリスクなどに合わせて、適切なスキームを選択することが重要です。

8. トップ面談

上述の資料などを参考にして、M&Aを進めたい買い手企業の候補が見つかった後は、トップ面談が行われます。

トップ面談とは、売り手企業と買い手企業の経営者同士が顔を合わせる面談であり、双方の経営ビジョンやM&A成立後の運営方針など、お互いの意向について理解を深める目的で行われます。

このトップ面談はできる限り早い段階で行うのがよいとされています。
M&Aを進めるうえでは、トップダウンの意思決定がなされることが多いため、トップ面談で経営者同士の意思を確認しながら信頼関係が築ければ、その後の交渉の流れがスムーズになると考えられるためです。

また、通常トップ面談は買い手企業の候補が2~3社ほどに絞られたタイミングで実施します。
このトップ面談後、買い手企業候補から売り手企業に対して意向表明書(LOI)が提出され、売り手企業はこれらをもとに最終的に1社に絞り込んでいきます。

9. 意向表明書(LOI)の提示

トップ面談を行った後、買い手企業の意思が変わらずにM&Aの進行を望むのであれば、買い手企業から売り手企業に対して意向表明書(LOI)の提示を行います。

この意向表明書の提出は義務ではありませんが、これにより買い手企業が前向きにM&Aを検討していることを売り手企業に伝えることができるため、交渉をスムーズに進めることが可能になります。

10. M&A基本合意書(MOU)の締結

意向表明書により買い手企業を絞った後、買い手企業との間でM&Aを進めることが合意できたら、基本合意書(MOU)を締結します。

基本合意書とは、M&Aの交渉段階において売り手企業と買い手企業が基本的な諸条件について合意ができたことを書面で確認する文書を指します。

基本合意書では、M&Aスキームの確認や今後のスケジュール、取引価格の確認やデューディリジェンスへの協力など、以後のM&Aプロセスに関する規定が盛り込まれています。

この基本合意書に記載されている内容のほとんどに法的拘束力はありませんが、買い手企業が売り手企業との交渉を一定期間独占して行うことができる権利である独占交渉権と秘密保持義務については法的拘束力を持たせることが一般的です。

基本合意書においては以下の記事でも紹介しているので参考にしてみてください。
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11. デューデリジェンス

基本合意書を締結したら、買い手企業は売り手企業を買収しても問題がないか確認するために、売り手企業の財務や法務など、あらゆる側面から調査します。
この調査をデューディリジェンス(DD)といい、買収監査と呼ばれることもあります。

M&Aを行うと、買い手企業は売り手企業の事業だけでなく、権利や義務も引き継ぐことになるため、M&A成立後のトラブル回避のためにも、潜在的なリスクについて分析や調査、評価を行う必要があります。

このデューディリジェンスの結果を踏まえて、買収金額の妥当性や最終条件交渉の方向性、また最終契約締結後の対応を検討します。

デューディリジェンスは、調査対象に応じて様々な種類が存在し、事業・財務・税務・法務・人事・ITなど多岐にわたる分野があります。

それぞれ専門知識を必要とするため、各分野の専門家に依頼して調査を行います。

以下の記事では、デューディリジェンスの種類や問題となりやすいポイントも簡単に整理しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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12. 最終条件交渉

基本合意書で締結した内容やデューディリジェンスの結果を受けて、最終条件の交渉を行います。

デューディリジェンスの結果を受けて、基本合意書の内容と乖離があった場合には1点ずつ検討を行い、またデューディリジェンスで新たなリスクが浮かび上がった場合にもその対処について検討していきます。

主に最終的な取引金額や譲渡の範囲について交渉されます。
他にも必要に応じてスキームの変更や、クロージング後の売り手企業の買い手企業の義務などが争点となります。

最終契約フェーズ

13. M&A最終契約締結

最終交渉がまとまると、M&Aの契約内容を確定する最終契約が締結されます。

最終契約書(DA/SPA)は上述の基本合意書とは異なり、法的拘束力を持つため、締結後は契約内容を変えることはできません。

最終契約書には、これまでの交渉を通じて確定した合意内容の全てが盛り込んであり、契約当事者の一方が内容に違反て損害が生じた場合には、損害賠償請求ができる旨が定められています。

その内容としては、買収金額や退職金の処理、従業員の処遇など多岐にわたります。

14. クロージング

最終契約書の内容をもとに、経営権を移転するクロージングを行います。

具体的には、株式譲渡や事業譲渡、譲渡代金の支払いなど、ヒトやモノ、カネを移動させます。

このクロージングをもってM&Aの手続き自体は完了し、M&Aの成約となります。

15. M&Aの事後処理

M&A後の事後処理として、売り手企業と買い手企業の経営体制や業務システムなどの統合(PMI)を行います。

この統合プロセスが達成されなければ、買い手企業が期待しているシナジー効果が得られないといえ、M&Aの効果を最大化させるためにPMIは重要であるといえます。

また、M&Aが無事成約した後には、速やかに社内外へ情報を開示することも求められます。

M&Aの流れの中で必要な契約書・書類

ここでは、M&Aの各フローで必要となる書類を紹介します。

まず、契約書については以下の4種類です。

・秘密保持契約書
・専門家とのアドバイザリー契約書
・基本合意書
・最終契約書

またその他、M&Aの過程で必要となる書類は以下の通りです。

・ノンネームシート
・企業概要書
・意向表明書
・デューディリジェンスに必要な資料

基本合意書においては以下の記事でも紹介しているので参考にしてみてください。
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M&Aの流れの中でおさえるべき重要なポイント

M&Aを円滑に進めるうえで、おさえるべき重要なポイントについて以下でご紹介します。

M&Aを行う目的や条件の明確化

M&Aは企業が抱える問題を短期間で解決できるという可能性がありますが、しかし企業ごとに抱える問題や必要な対応について異なるため、企業ごとに最適なM&A戦略を策定する必要があります。

そのため、M&Aを始めるにあたり、目的や戦略をしっかり検討し、軸を持ってフローを進行することが重要です。

検討を重ねたうえでの専門家の選定

M&Aを進行するにあたり、最適なM&Aの専門家を選定することも大切です。

M&A仲介会社や士業事務所、銀行など様々ある支援機関の中で、それぞれの特色を見極め、M&Aの目的にあった専門家を選定する必要があります。

また、M&A仲介会社の場合は、大規模なM&Aを専門とする会社もあれば、中小企業のM&Aに特化している会社、また特定の業界に特化したM&Aのみ取り扱う会社など、多岐にわたります。

各社の実績などを十分確認したうえで、安心して任せられるM&Aの専門家を選びましょう。

徹底した情報管理

M&Aを進行するにあたり、その情報が社内外に漏れてしまった場合、M&Aの交渉に影響が出るだけでなく、交渉が破談になったり、会社の株価に影響が出て経営そのものが傾いてしまう危険性もあります。

秘密保持契約等は交わしますが、社内外問わず、M&Aに関わる人は最小限に絞り、徹底した情報管理を心掛けることが求められます。

デューディリジェンスの徹底

デューディリジェンスを徹底することで、買い手企業は売り手企業のリスクを洗い出すことが重要です。

デューディリジェンスの費用は買い手企業が負担するうえに、手間や時間がかかるものですが、本来必要な調査を省略したり、限定的な調査を実施すると、不十分な調査によりリスクを負う可能性があります。

デューディリジェンスの徹底により、M&A成立後のトラブル回避につなげることもできるため、M&Aの成功に導くためにも十分な手間と時間をかけることが大切です。

また売り手企業にとっても、デューディリジェンスに積極的に協力することで、デューディリジェンスにかかる期間が短くなり、M&Aの成約率向上につながります。
また協力姿勢で対応することで信頼関係が築ければ、その後の交渉の流れがスムーズになるため、売り手企業もデューディリジェンスを徹底することが求められます。

M&A後の統合への注力(買い手企業側)

M&Aが成約したものの、クロージング後の両社の経営がスムーズに進まないなど、経営統合(PMI)がうまくいかなければシナジー効果を生み出すことができません。

買い手企業は、売り手企業の従業員がスムーズに業務を始められるよう、職場環境を整えるなど丁寧に注力することが重要です。

以下の記事で、M&Aを成功させるために重要なポイントや最新の成功事例を詳しく紹介しておりますので、ぜひご参考にしてみてください。
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企業のM&Aを支える!M&A仲介会社の役割とは?

M&Aを初めて行う場合は、M&Aの検討・準備段階からクロージングまで、一貫してフォローしてくれるM&A仲介会社がおすすめです。

M&A仲介会社がクライアントに提供できるメリットとしては以下3点が挙げられます。

・専門的なアドバイスやサポートができる
・M&A仲介ならではの相手企業候補を提案できる
・交渉を円滑に遂行することができる

詳しくは以下の記事で説明しているので、ご参考にしていただければ幸いです。
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この記事を書いたライター

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