M&Aは企業の成長や存続などを目的とした戦略の一つとして、日本でも認知度が高まっています。M&Aはどの企業にとっても非常に大きな経営判断にあたりますので、成功事例を知っておきイメージを湧かせたいという経営者の方も多いのではないでしょうか?
本記事では、そんなM&Aの2024年最新事例を紹介します。
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称であり、企業同士が合併や買収を行うことを指します。買い手企業には買収する目的、売り手企業には譲渡する目的があって、M&Aを行います。
まずは両者それぞれ目的について、見ていきましょう。
買い手企業がM&Aを行う主な目的は以下の通りです。
いずれの目的であれ、買い手企業はM&Aによって企業規模を拡大することができます。ただ、どのように企業規模を拡大したいかによって、どんな企業を対象にするかが変わってくるのです。
例えば、「新しい市場に参入する」のが目的であれば、当然参入したい市場の中で売り手企業を探す必要がありますし、「市場内のシェアを拡大」したいのであれば、同じ市場の競合他社の中でマッチング先を見つけなくてはなりません。
「技術やノウハウを獲得」する場合については、最新のテクノロジーや新進気鋭のサービスを保有しているスタートアップ企業やベンチャー企業を買収するというイメージがあるかも知れませんが、町工場などで受け継がれてきた技術を獲得するために伝統のある中小企業をM&Aすることもあります。
売り手企業がM&Aを行う主な目的は以下の通りです。
売り手企業は、企業ごと譲渡するケースもあれば、事業や子会社の一部を売り渡すケースもあります。
「後継者不在の解消」を目的とする場合は、会社の存続のため、事業承継先を見つけることになります。また、経営不振による「倒産を免れる」ことが目的であれば、グループ会社として受け入れてくれる買い手企業を探す必要があります。これらの場合は、企業ごと譲渡するケースです。
一方で、「不採算事業の整理」が目的であれば、成長事業や利益が上がっている事業は自社で保ちながら、不採算事業のみを買収してくれる買い手企業を見つけなくてはなりません。「カーブアウト」については子会社や事業の一部を切り離して独立させることを意味します。この場合、必ずしも不採算とは限りませんが、同様に事業や子会社の一部を売り渡すケースに該当します。
日本企業が関与したM&Aは2022年に4,304件と過去最高の数字を記録しました。2023年は4,015件で3年ぶりの減少となりましたが、引き続き高い数字と言えるでしょう。
この数字からも分かるように、近年のM&A市場は活況です。2020年からのコロナ禍で一時的に数字は下がりましたが、直近の増加傾向はその反動だけが要因ではないとされています。
M&A市場の活性化の背景の一つに、売り手企業が増えているということが挙げられます。
売り手企業がM&Aを行う目的の一つとして、「後継者不足の解消」をご紹介しましたが、この目的を持った売り手企業が増えています。日本の後継者不在率を見てみても、2023年は53.9%と未だに半数以上の企業が後継者不在に悩まされていることが分かります。
「IN-INのM&A」とは、日本企業同士のM&Aのことです。この件数が増えたのは、様々な企業の課題を解消する手段としてM&Aの認知度が高まっていることが要因とされています。その結果、以前は首都圏のみで大手企業しか買い手企業がいなかったM&A市場で、地方エリアやベンチャー企業など、エリアや企業規模を問わずに様々な企業が参入しています。今後もそのようなトレンドは続くでしょう。
M&Aの最新動向をご説明したところで、2023年に行われたM&Aのうち、代表的な次の5件について紹介します。
(買)日本産業パートナーズ | (売)東芝 |
(買)モデルナ | (売)オリシロジェノミクス |
(買)アステラス製薬 | (売)アイベリック・バイオ |
(買)キリンホールディングス | (売)ブラックモアズ |
(買)セガ | (売)ロビオ・エンターテインメント |
2015年の不正会計問題に起因して経営危機に陥っていた東芝は、国内投資ファンドの日本産業パートナーズのTOB(株式公開買い付け)により、非公開化を行いました。日本でも有数の知名度を誇っていた企業だけに、M&Aによる上場廃止は大きな衝撃を与えました。
コロナウイルスがまん延していた際に、コロナウイルスワクチンを開発したことで話題になった、米国のモデルナは日本企業のオリシロジェノミクスを8,500万ドルで買収すると発表しました。
オリシロジェノミクスは無細胞DNA合成および増幅技術のパイオニア企業であり、それらの技術を併せ持つことでさらなる研究開発を加速する目的とされています。
国内の大手製薬企業であるアステラス製薬は米国のアイベリック・バイオを買収すると発表しました。アステラス製薬では、全売上高の約4割に達する主力医薬品の前立腺がん治療薬「XTANDI(イクスタンジ)」が2027年に特許切れを迎える予定となり、特許切れに伴う売上減少を補う新薬開発が期待されています。
言わずと知れた国内の食品メーカーであるキリンホールディングスは、オーストラリアの健康食品メーカー最大手・ブラックモアズ社の買収を発表しました。また、ブラックモアズ社の買収のための資金の一部を調達するため、900億円程度の「ソーシャルボンド」を発行しました。
ソーシャルボンドは「社会貢献債」とも呼ばれ、医療や貧困、食糧、教育、インフラ整備といった社会問題の解決に必要な資金を調達するために発行される債券です。
キリンホールディングスによるソーシャルボンドの発行は、同社によると、国内の食品会社としては過去最大規模であり、企業買収だけを資金の使途とするのは国内でははじめてということで、注目を集めました。
「ぷよぷよ」などのゲームを生み出したことで知られるセガが、「アングリーバード」などのゲームをリリースしたことで知られるフィンランドのロビオ・エンターテインメントを買収し、子会社化しました。
セガは家庭用ゲームに強い企業ですが、この買収によってモバイルゲームのノウハウ取得に成功しました。
相互メリットを期待して行うM&Aですが、必ずしもメリットを享受できるケースばかりではありません。具体的にどのようなケースがあるのか、見ていきましょう。
一番よくあるケースが、当初の予測通りの売上に満たないケースです。場合によっては損失が発生することもあります。M&Aで経営方針や組織メンバーが大きく変わることにより、思っていたような経営ができなくなった、想定していたシナジーが発揮されなかった、などが要因になることが多いです。
海外企業と日本企業のM&Aの場合、当国との法規制や許認可などの違いを理解しきれなかったことが原因で、トラブルに発展するケースがあります。
また、商慣習が異なることによる失敗のリスクもあるので、特に海外企業とのM&Aを成功させるためには、入念な事前調査が欠かせません。
買い手企業においても売り手企業においても、M&Aを成功させるために最も重要なポイントはM&AアドバイザリーやM&A仲介といったM&Aのコンサルタントを活用することです。
相手企業の候補を自力で探すのはかなり難易度が高いだけでなく、もし見つかったとしても成約までの交渉にはかなりの労力とスキルを要します。また、交渉にあたって行う相手企業の調査(デューデリジェンス)や価値算定(バリュエーション)には専門知識が必要とされるので、費用をかけてでもコンサルティングを依頼するのがよいでしょう。
今回ご紹介したように、日本企業が関わるM&Aは大手企業から中小企業まで、かなり積極的に行われており、それと同時にそれらの企業へのコンサルティングを提供するM&A業界も社会的にニーズが高まっています。
当社ヒュープロでは、そんなM&A業界への転職をご希望の方をサポートしております。M&A業界は大変人気があるので、業界特化の転職エージェントとして多くのノウハウを持っている当社に、ぜひご相談いただけますと幸いです。