M&Aアドバイザリーは企業の吸収および合併をサポートする役割を担っていますが、具体的にどんな仕事をしているか、ご存じでしょうか?この記事ではM&Aアドバイザリーがどんな業務を行っているのか、またどんな人が向いているか、さらに必要なスキルや経験など、詳しく解説していきます。
M&Aアドバイザリーとは、M&Aの売り手もしくは買い手のクライアント企業から依頼を受け、M&Aのサポートをする職種を指します。
クライアントがM&Aアドバイザリーに依頼する目的は大きく分けて、M&A完了までの手続きややり取りを円滑に行うこと、およびM&Aによる利益を最大化することの2つです。M&A市場が拡大傾向なこともあり、ますます必要が高まっている職種といえます。
M&Aアドバイザリーが依頼を受けてから、M&Aが実行されるまで平均8か月ほどかかると言われており、1年ほどかかることも珍しくありません。1件あたりにそれだけの時間がかかるだけあって、多岐にわたる業務を行う必要があります。ここではM&Aアドバイザリーは具体的にどんな仕事をしているのか、見ていきます。
まずはM&Aをする(される)ことが、その企業にとって有効な手段なのかを第三者の目線で考えていく必要があります。一企業にとってM&Aはする方もされる方も非常に大きな決断にあたるので、正しい判断をするための情報収集も行わなくてはなりません。
その上でM&Aに進むことになったら、どんな戦略でM&Aを行うか、スケジュールや買収先・被買収の候補となる企業のリストアップなどを行います。M&Aを進めるための戦略だけでなく、M&A後の財務インパクトのシュミレーション、シナジー効果の予測なども戦略立案の時点で実施します。
ただのコンサルの立場というよりは、その企業の経営陣の一員のような目線で、M&A後の会社の状況の予測もしながら戦略を策定していく必要があります。
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、投資を行う際に、投資先の価値やリスクなどを調査することを指します。一般的にM&Aでは、譲受け企業(買い手)が対象企業に対し、財務状況、法律問題、営業状況、IT環境など、様々な角度から調査・評価を行ってリスクを把握し、将来のビジネスチャンスを探り、買収にふさわしい企業かどうかを検証します。これを行うことにより、M&Aにおける交渉のプロセスがより正しいものとなるのと同時に、M&A完了後にトラブルが発生したり問題が発覚することを防ぎます。
当然のことではありますが、買い手はできるだけ安く買いたいし、売り手は高く売りたいものです。その条件交渉のサポートもM&Aアドバイザリーが担う役目の一つで、場合によっては交渉の代行を依頼されることもあります。条件交渉はクライアントの利益を最大化させるにあたって最も重要性が高いので、M&Aアドバイザリーとしての腕の見せ所と言えるでしょう。
M&Aの取引金額を決めるにあたって、売り手側の譲渡の範囲や従業員の給与など、お金に関わる細かい部分まで決めていきます。
条件交渉において無事に交渉が成立したら、契約に進みます。買い手側のクライアントであれば資金調達や契約書作成を、売り手側のクライアントであれば買い手から渡された契約書のリーガルチェックなどをサポートします。上場企業の場合は株主総会、IR対応のサポートなども行います。
ポストマージャーインテグレーション(PMI)とは、M&A統合プロセスを指し、経営統合、業務統合、意識統合の3段階に分かれています。このプロセスをサポートするのは本来M&Aコンサルタントの役目ではありますが、場合によってはM&Aアドバイザリーの業務になることもあります。M&A後の会計・税務処理に関するアドバイスからシステム導入支援など多岐にわたる業務があります。
M&Aアドバイザリーは専門性が高く、幅広いスキルが必要です。そんなM&Aアドバイザリーは主に以下の4つの業種で行われていることが多いです。
M&Aにかかるお金を融資するのと併せて、M&Aアドバイザリーもワンストップで行う銀行もあります。
メガバンクにはM&Aアドバイザリーに特化した部署があり、銀行への信頼感からアドバイザリーを依頼する企業も多いようです。後継ぎがいないことが課題となっている中小企業に対しては、メガバンクだけでなく地方銀行も精力的にM&Aを支援しています。
銀行と同様に証券会社もM&Aアドバイザリーとしての業務を行っていることがあります。上場株式の公開買い付け(TOB)など株式を活用したM&Aができるという強みがあります。
会計事務所は税務面を専門領域としているので、M&Aの中でも税務面のアドバイスについては可能です。
また、M&A業務を強みとしている事務所では、税務面以外のサポートも包括的に行っている場合もあります。
コンサルティングファームはコンサルティング業務をメインにしています。M&A以外にも経営全般への知識が豊富なため、多角的なコンサルティグができるのが特徴です。
M&A業界はニーズが高まっているため、業界内の企業数や売上規模の拡大といった成長が続いています。そんな成長に対応すべく、M&A業界は各社積極的に採用活動を行っています。ですので、M&A業界の転職市場は非常に活発であるといえます。
もちろん、どの企業も業界での経験がある即戦力を採用できるに越したことはないのですが、経験者採用をする企業ばかりだと、ある企業の採用が充足しても、経験者が退職した企業はその分の採用をする必要があります。
そうなると、経験者採用だけでは業界の人手不足は解消しませんので、新卒や中途の未経験者を募集する企業が多くなっています。責任が大きく難易度の高いM&A業界ですが、教育体制をしっかり整えて未経験でも安心して働けるような環境を整備して、募集を行っているのです。
当然、M&AアドバイザリーやM&A仲介の経験があるに越したことはありません。しかし、業界での経験がなくても応募可能な求人はあります。ただし、全ての方が対象になるわけではないので、プラス評価になりやすいスキルやM&A業界以外の経験をいくつか紹介していきます。
M&Aに直接かかわっていなくてもファイナンス関連の仕事をしていた経験は一定数求められています。具体的には銀行や証券会社などの金融機関、会計事務所、企業の財務職などが当てはまります。
ファイナンス領域の職種の経験が求められてるのと同様、それに関わる資格である公認会計士や税理士を所持していると経験がなくても相応の知識を有しているとみなされ、選考で優遇されることが多いです。
ファイナンス領域での経験がなくても、メーカーや商社、MR、IT、保険、コンサルティングなどといった業種での営業職出身だと有利に働きます。
転職活動を検討する際、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのは骨が折れるものです。そこで転職活動には人材エージェントを利用することをお勧めします。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。内定を複数社もらった際に断りをいれてくれるなど、心理的負担のある対応もする必要がありません。そういったサービスを無料で受けられるエージェントが多いのも特徴です。
今回はM&Aアドバイザリーの仕事内容や、求められるスキルや経験について解説していきました。もし読んでみて、「自分に向いているかもしれない…」と思った方や「向いているか分からないけどやってみたい!」と思った方はぜひ挑戦してみてください!