法務職は将来性のある高度な専門職であるため人気は高く、未経験から法務職への転職は一般的に難しいと言われています。ただし、転職が難しい理由を理解して対策を取ることができれば、転職のチャンスを掴み取ることも可能です。
この記事では、法務職の概要と転職が難しい理由、法務職に必要な能力やスキル、転職を成功させるポイント、法務における転職市場の動向や将来性を解説します。法務職への転職実現にお役立てください。
法務職とはその名の通り、企業における法律に関する業務を遂行・管理する職種です。
法務の役割は「予防法務」と「戦略法務」の大きく2つに分けられます。予防法務とは、企業内での法的トラブルを未然に防ぐ役割です。一方、戦略法務とは、企業の経営戦略を法律面から積極的にサポートする役割であり、新規事業の立ち上げやM&Aなどが例として挙げられます。
法務職の主な仕事内容として、次の4つを解説します。
法務で最も多い仕事は、契約書の作成をはじめとした契約・取引法務です。国内・海外との業務委託契約や秘密保持契約、売買契約など各種契約書を作成・確認します。
取締役会や株主総会の実施、子会社の設立や株式の発行など、会社組織の運営に必要な法的手続きを担当します。
企業の信頼性を高める上で、法令遵守は当然のことながら、そのために必要な社内研修や相談窓口の設置、社内規定の整備など、コンプライアンスの周知も法務の仕事です。
企業における法的トラブルへの対応も法務が担当します。顧客からのサービスへのクレーム、取引先との納品物を巡るトラブル、ハラスメントに対する従業員からの訴訟、不正な会計処理や株主代表訴訟など、様々な法的トラブルが想定され、案件ごとに迅速な判断と対応が求められる難しい職務です。
法務職への転職が難しい理由として、次の点が考えられます。
法務職は、高度な専門知識が必要な専門職です。法務職の業務は、流れに従って同じ業務を行えばよい定型業務ではなく、似た案件でもその時の状況に応じて都度判断が求められます。判断を誤って違法行為につながった場合、企業イメージに与える影響は大きいため、採用側も経験者など確実な人材を求めています。
加えて、同じ法務職でも業界ごとに法的な慣習が異なり、その業界に即した知見が求められるため、異業種や未経験からの法務転職は難しいです。
このように、法務職への転職は他の職種への転職よりもハードルが高い傾向があります。さらに、転職後は即戦力としての活躍が求められるため、未経験から法務職への転職は基本的には難しいです。
ただし、第二新卒や20代前半など若ければ転職のチャンスはあり、その場合は大学で法律知識を習得している法学部出身者が有利です。近年は、法科大学院を卒業して法曹界に進まずに法務部への就職を目指す人が増えており、転職のライバルは法科大学院卒業者が多く、倍率も高い傾向があります。
法学部卒ではない未経験者が法務職に転職するには、たとえば中小企業で法務も兼任している総務部に転職する方法があります。総務部は法務部と比べて転職しやすいため、総務職の経験を積みながら社内で法務担当を目指すのが現実的です。他にも、企業法務を担当する法律事務所にパラリーガルとして転職する方法もあります。
法務職にはどのような性格の人が向いているのか、法務職に求められる能力やスキルは何かを解説します。
法務職に向いている人の特徴として、次の点が挙げられます。
法律や判例などは改正を繰り返して変化していくので、アンテナを張って情報収集をし日々アップデートしていく姿勢と、法務職でいる限り継続的な学習が必要です。
また、契約書の作成ではちょっとした文言の違いで誤解が生じないよう、一言一句を突き合わせる姿勢が求められます。さらには、企業利益ばかりを重んじて違法行為を見逃すことがないよう、正義感の強さも大切です。
法務職として働くには、まず法律知識があることが前提です。その上で必要となる能力を解説します。
法務職では、契約書の作成ひとつ取っても、現場担当から契約の背景や目的、お金の流れや権利義務関係など、契約の締結に必要な事項をヒアリングできるコミュニケーション能力が求められます。相手の意見や主張を聞き取って理解し、交渉やプレゼンをしながら、円滑にプロジェクトを遂行できる能力が必要です。
法務職では法律知識だけではなく、たとえば契約書の作成時には、権利義務関係の書面反映にとどまらず、契約が業績に与える影響や会計上の評価を理解できるビジネスセンスが求められます。特に戦略的法務では、取れる法的リスクとそうでないリスクの判断や、リスクを取る場合には実際に取るべき手法の考案など、高いビジネスセンスが必要です。
契約書の作成時には、契約の内容をだれでも理解でき、誤解を生まない文章に落とし込む言語能力が求められます。また、法改正の内容や案件に似た判例などを調べるリサーチ能力も必要です。
法務職としての転職には、法律知識があることが前提ですが、採用は経験やその他の能力、年齢や人柄など総合的に判断されます。
実際に、社内で違法行為が発見された場合には、法的な対応を弁護士などの専門家に相談するケースが大半です。そのため、たとえば司法書士など高度な法律資格を持っていても40代で未経験の場合、他の20代の応募者などと比較して判断されるため、法律知識があるからといって絶対に有利とはならない傾向があります。
法務職への転職を成功させるには、次のポイントが大切です。
①自分のポテンシャルに合った求人を見極める
②有効な資格を取る
③転職は職務経歴書が大事
ポテンシャルとは、自らが持つ可能性や潜在能力を指します。自分のポテンシャルに合った求人を見極めるとは、自らが持つ適性や可能性の傾向と、応募先で積むであろう経験をかけ合わせ、将来的に可能となる活躍を予想して応募することです。
そのためには、自らの適性や現時点でのスキル、潜在能力を伸ばすにはどのような経験を積むべきか、整理しておく必要があります。
法務職への転職に有利となる資格を紹介します。
東京商工会議所が実施している公的資格です。契約締結から法令遵守まで、ビジネスに必要な法律知識を体系的に習得・証明できます。公式テキストは現実のビジネスシーンを反映しているので、実務にも役立ちます。
日弁連法務研究財団・商事法務研究会が共同で実施している民間資格です。法学をどの程度習得しているかを客観的に証明します。
サーティファイコンプライアンス検定委員会が実施する民間資格です。コンプライアンスに関する法務知識や価値判断基準を有していることを客観的に証明します。
知的財産を管理するスキルを客観的に評価する国家資格です。2・3級では知的財産の管理業務、1級では特許・コンテンツ・ブランドの3分野における専門業務についての知財マネジメントスキルを公的に証明します。
法務への転職においては、職務経歴書でこれまでの実績を具体的に提示することは非常に重要です。
たとえば、契約書の作成であれば、実際に作成した契約書の種類や月あたりの契約書の審査数など、具体例や数値を提示します。他にも、株主総会や社内研修などの実施、社内規定の整備、訴訟などの法的トラブルへの対応と、幅広い実績はアピールポイントになります。特に、M&Aや新規事業立ち上げなど戦略法務の経験があれば、積極的にアピールしましょう。
コロナ禍でリモートワーク等の必要性が高まり、各社でDXが加速したことから、新規ビジネスの展開に伴って、企業で法務部門の強化が進み、法務職の求人も増加しつつあります。法務職へのニーズは高いのに人材は不足していることから、法務経験者にとっては売り手市場が続いています。
法務職は専門性が高いことから、企業規模を問わずに将来性は期待できます。大企業での法務職は、スペシャリストを目指して専門的なスキルとキャリアを積むことで、企業が手放せない人材を目指すことが可能です。一方、中小企業での法務職は、総務部における法務担当など他の職種との兼用も多く、ゼネラリストを目指すことになります。あらゆる業務を横断する知識と経験を積めば、将来的には管理職としての登用も可能です。
経済産業省の報告書によると、AIを筆頭にしたイノベーションの急激な発展など、法務領域の高度化が進んでいます。企業における国際競争力の強化に向けて、法務職に求められるのは、法的リスクの回避といった守りの法務に留まりません。法的リスクを評価・分析し、取れるリスクとそうでないリスクを判断、リスクを取れる場合には実際の手法を経営陣に提案といった、攻めの法務が求められてきます。
今後は、戦略的法務部門の充実化により、経営と一体化した高度な法務職が求められることが予想され、法務職の将来性はより期待できます。
法務職は専門職であり、定型業務ではなく案件ごとに難しい判断が求められ、業界ごとに異なる専門知識や経験が必要なことから、異業種や未経験からの転職は難しい傾向があります。
未経験であれば、法学部出身や資格取得などで法律知識と学習意欲をアピールしつつ、中小企業で法務も兼任している総務部などに転職する方法がお勧めです。未経験でも、総務や労務・人事・経理など法務と多少接点がある業務の経験があれば、中小企業なら採用の可能性もあります。
まずは、転職可能な企業で法律知識と実務経験を積み、次の転職時に規模が大きな企業へのステップアップを目指すなど、段階を踏んでキャリアを考えるのがよいでしょう。
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