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【ビズアドバイザーズ税理士事務所(前編)】これからの税理士に求められるのは〇〇力? ハリウッド映画の税務対策を手掛けてきた税理士に聞いた“これから活躍する税理士”とは

HUPRO 編集部
【ビズアドバイザーズ税理士事務所】これからの税理士に求められるのは〇〇力? ハリウッド映画の税務対策を手掛けてきた税理士に聞いた“これから活躍する税理士”とは

映画や音楽など、エンタテインメント業界の税務会計に特化しているビズアドバイザーズ株式会社/ビズアドバイザーズ税理士事務所。
代表の上住さんは現プライスウォーターハウスクーパース(PwC)でハリウッド映画に関わる国際税務を扱った経験から、「日本にはなぜ、エンタテインメントに特化、精通した会計事務所がないのか?」と思ったことが、会社を設立するきっかけになったと話します。みる人に夢を与えるエンタテインメントビジネス。その創造に必要な資金の管理に「税理士事務所」はどのような役割を果たしているのでしょうか。HUPRO編集部が上住敬一代表と久野克好シニアマネージャー、間庭智子アシスタントマネージャーと水谷友香シニアアソシエイトに伺いました。

ハリウッド映画に関わる税務会計を経験。「あの映画の資金は、こうなっているのか!」

―貴社は、エンタテインメント業界の税務会計に特化していますね。そもそも、どのようにしてエンタテインメントの税務会計に関わるようになったのでしょうか。

上住:大学を卒業後に、PwCの国際税務部門に就職しました。税務の方が早くアメリカに行けるということで、軽い気持ちで入社しましたが、国際税務がとても難しくて苦労していました。当時は英語もよく分かりませんでした。

そんなときに、アメリカの映画ファンドの管理を担当することになりました。ディズニーが作った映画ファンドに、日本の証券会社が投資するという仕組みがあり、その管理をしたのです。その仕事をするうえで、アメリカの会計と税務、日本の会計と税務をマトリクスで考えなければいけなかったため、非常に複雑な仕事でした。

仕事をしているうちに、映画ファンドが投資している作品が、「天使にラブ・ソングを…」というウーピー・ゴールドバーグ主演の映画だと知りました。「えっ! こういう映画を作ることにも国際税務は役に立つのか」と衝撃を受け、そこからより学びを進め、のめり込むようになっていきました。以来、映画の仕事には積極的に手を挙げていたため、「そんなに映画が好きなら、ハリウッドに行ってこいよ」と言われ、ロサンゼルスの事務所に配属されました。

この経験から学んだことは、一見見えないビジネスの裏には傑出したファイナンスの仕組みがあるということです。映画は形になる前から、大きなお金が動くため、会計や税務の知識がなければ成り立たないビジネスでもあります。エンターテイメントの世界ではこのように、「形がない資産」がキャッシュフローを生み出すのです。

―ハリウッドの予算は膨大ですね。そのお金を回すことの背景に、映画ファンドや、ファンドを管理する仕組みがあるということですか。

上住:日本では製作委員会と呼ばれる、映画の配給会社やテレビ局、出版社などで構成する組織があります。億単位のお金がかかる映画製作を一社で担うのはリスクが大きいので、製作委員会で何社かがリスクをシェアしながら、配給収入やビデオ収入で儲けるという仕組みです。

しかしアメリカの場合は、出資する人と作る人が別なのです。すると、映画ファンドを通じて、業界外の人も投資に関わるようになります。例えば不動産のREITを買うように、映画に投資するような感じです。映画が圧倒的な金融商品になっているので、プロフェッショナルが工夫すれば、映画の資金調達ができたり、「スキームをこんな感じで作ってみたらどうだろう」と考えたりするところができるため、よりスケールの大きな映画、エンターテインメントを作り出すことができるのです。

税法に「完全な答え」は書かれていない。クリエイティブな世界で税理士が果たす役割は

―資金の調達や管理にお金のプロがかかわることで、映画製作の幅を広げることに貢献できる余地がたくさんありそうです。

上住:映画が国際共同製作になると、お金が国境を越えることになり、国際税務の問題がたくさん出てきます。たとえば源泉税。国と国とが税金の取り合いをする中で、その作品は日本の作品なのか、アメリカの作品なのか一見区別がつきません。それぞれの国の税法を適正に解釈し、実態に合った最適解を見出せるよう、各案件のプロデューサーや各国の専門家と議論しながら考える必要があります。複雑性が高く、シンプルな答えがないからこそ状況に応じて「最適解を導きだす力」が必要なのです。

これから、不確実性の高い社会に対して、本当に活躍できる税理士は、その業界や領域におけるケースバイケースの対応を税法からそれずに、かつ合理的に進められる人だと思います。

当社においては、エンターテインメントという業界にあるものの扱う事業ドメインは、映画、音楽、スポーツ、ゲームなど様々。映画の事例でもお話しした通り、1産業だけでも国をまたぐ取引や海外に子会社を作る取引もあり、法人税の理解はもちろん、消費税や国際税務の理解も必要となります。

その中でも特に活躍している方は、一般的な会計事務所で詰める税務申告書の作成など基礎がしっかりとしていて、必用に応じてさらに深い、幅広い部分や国際税務を学んでいく意欲のある方です。今後、さらに真の意味で「税理士」としてより大きな舞台で活躍していきたい人材がいれば、一緒に悩みながら成長していきたいと考えています。

今回お話を伺ったビズアドバイザーズ税理士事務所の企業紹介ページはこちら

この記事を書いたライター

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