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お客様の信頼を獲得していくことが資産。AIにはできない、人と人とのつながりを追求する「サムライ」であれ

HUPRO 編集部
お客様の信頼を獲得していくことが資産。AIにはできない、人と人とのつながりを追求する「サムライ」であれ

南青山アドバイザリーグループは、南青山税理士法人と南青山FAS株式会社を擁し、2013年の設立から10年足らずでありながら1,000件を超えるIPOやM&Aのコンサルティングを行うなど成長著しい事務所です。仙石実CEOは、人と人との関係を積み上げ、さまざまな要望に応えていくことで、ベンチャーから上場企業までの幅広いクライアントの信頼を獲得してきたといいます。その姿勢とグループとして目指す方向について、HUPRO編集部が伺いました。

縁ある人を幸せにするために。「信頼資産」の積み重ねと「BtoF」を基本にお客様と向き合う

―新型コロナの流行下でも増収増益を実現したとか。躍進めざましいですね。

仙石:縁ある人や関わっている経営者の方を、どうやって幸せに導いていくかということを我々は常に考えています。何が課題で、お客様はどうしていきたいのか、そのなかで僕らが何をできるのか。僕らでできないことは周りの、例えばパートナーを組んでいる企業様とかお客様などを紹介するという形で貢献できないかというところまで考えて、いつもお客様と接しています。

そこで大切なのは傾聴力だと考えています。お客様ときちっと会話をして課題を明らかにして、お客様の課題に対して我々が答えていくという、シンプルなことを繰り返してきています。お客様の課題を解決するために一つ一つサービスを作ってきたということが、当グループが成長してきた大きな理由であると思います。当グループは紹介が非常に多いのですが、こうした積み重ねが評価されてのことだと思います。

―「傾聴力」は、どのようにして培われてきたのでしょうか。

仙石:私の父も経営者なのですが、父からは「モノはお金で買えるけれど、信頼はお金で買えないんだよ」と小さい頃から教えられてきました。信頼の価値は、信頼を積み重ねて築く「信頼資産」であると考えています。いかにしてお客様に満足して頂き喜んでいただいて、信頼を積み重ねていくかということが、根本にあります。

また、当グループの顧問であり、僕の先生でもあるアチーブメントグループCEOの青木仁志先生からは、BtoF「(Business to Fan)」の考え方を学びました。お客様に、いかに僕個人や会社のファンになって頂けるか。そのファンの輪を広げていくと、お客様がお客様を呼んできて頂けます。来年で創業10年になるのですが、このことも常に考えながらこの10年やってきました。

そういう意味では、仕事を進める上で「タスク型」の働き方はあまり考えていないのです。会計士や税理士には、「この仕事をやりたい」という志向の方が時々みられるのも事実ですが。会計士・税理士で大手にいると、社長に向き合う時間は現実的にはなかなかありません。

しかし実際には、これをやりたくて士業になっている方もいるのではないかと思います。そこに対して、僕たちは応える準備がありますし、そういった人材を求めています。例えば、これから上場したい企業様に伴走して、上場後もお付き合いするとか、とても楽しいですよね。

成長ベンチャーも上場企業も。クライアント企業のあらゆるステージで、長期的なバックアップを提供する

―南青山アドバイザリーグループ(以下、グループ)は、FASと税理士法人の2法人を中心に展開しています。事業内容や役割を教えてください。

仙石:FASは、IPOからM&A、事業承継も含めてコンサルティング業務をメインとしています。例えばIPOを目指している企業様ならば上場準備段階から、ストックオプション設計・導入支援、上場後の支援まで行っています。税理士法人は、税務会計の顧問や相続、富裕層に向けた節税対策などをご提案しております。クライアント様は、ITや流通などの上場企業、創業200年以上などの老舗を含む非上場の企業オーナー企業、それから成長ベンチャーです。

このほかに、「LEADERS online(リーダースオンライン)」というスタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイトと、経営者を支援するための会員制コミュニティ「IPO・M&A ACADEMY」も運営しております。いずれも無料の会員制サイトで、「リーダーズ」には経営者の方ピッチ動画を載せており、ローンチは今年(2022年)に入ってからですが、これまでに参加企業が計7.25億円の資金調達を実施しました。
「アカデミー」は、金融機関さんなどにスポンサーになって頂いて、上場企業の社長をお招きして講演していただくなどの勉強会をやっています。諸先輩方がIPOにおいて大変だったことや、「もしIPOをもう一度やるとしたら?」などをテーマに講演して頂いています。

―貴グループの特徴や強みを象徴するようなケースとしては、どのような事例があるでしょうか。

仙石:例えばベンチャー企業の場合、これから伸びていく企業様の支援から、IPOした後も上場企業になっても我々がお付き合いできるという点が挙げられます。我々のお客様の中には、非上場であっても社歴が長い企業様の経営を見ているので、たとえばベンチャー企業様が今後に成長していく中で、あらゆるステージにおいても適切なアドバイスができ、長期の関係を築いていくということを常に考えています。

M&Aも仲介も手がけているのですが、むしろ長期的にその会社にとってこのディールを本当に進めた方がいいのかどうかの観点まで含めて、アドバイスをさせて頂いております。長期でお付き合いしたいという、我々の考えを反映している部分です。

また、医療の世界で担当医以外の意見を聞く「セカンドオピニオン」と同様に、当グループも、お客様がIPOやM&A、事業承継などを行うにあたり、セカンドオピニオンも提供しております。これは、我々の強みの一つである引き出しの多さがあるので実現していることです。とくに相続や事業承継では、新しいアイデアが入るだけでも金額が大きく変わることがあり、お客様にとってプラスになるのですね。もちろん、クライアント企業様には既に相続など顧問の先生がいらっしゃる場合もあるのですが、我々も会計や税務についていろいろな角度でアドバイスをしております。

成功者をさらなる成功へと導きたい。そこでの「覚悟」

―貴グループは、「専門性」「誠実性」「迅速性」の3点を経営理念に掲げています。この理念のもとで、どんな人たちと今後、どのように仕事をしていきたいとお考えですか。

仙石:僕がとくにやりたいこと、目指していることは、成功者をコンサルできる会計事務所になることです。成功している人たちを、さらに成功させるというポジションに行かないと、独立した意味がないとも思っています。

お客様である経営者の方は、歴戦の強者(つわもの)です。かなりの死地をくぐり抜けてきている方が大半です。会社を経営していると必ず、いろいろなことが起りますから。こうした経営者の方に対し、士(サムライ)業としての覚悟を持ってお客様と向き合っていくことは、独立当初からやっていますね。専門家としての「刀」を持って、一人でたくさんのお客様と向き合うことを考えてきました。成功している企業様に選んでいただいて、顧問に入るのはたいへん面白いことだと思います。

ここで大切なのは、誠実性です。信頼資産が積み上がっていると、「仙石から言われたことは受け入れよう」となりますが、信頼資産が積み上がっていないと「それ、どうなの」と思ってしまわれるのです。士業として信頼資産を積み重ねる努力をしていないと、せっかく良い知識とか提案があっても、お客様に受け入れてもえらえない。目に見えない信頼資産をどう積み上げていくかということを常にやっていかないと、意味がないですよね。士業においては信頼資産と専門性は、全く別ものです。

―となると、スキルは最低限のことで、むしろ人間同士の関わり合いが大切だということですね。

仙石:その通りです。ある意味泥臭い人間的な部分でお付き合いをしていくのも、非常に重要だと思っています。オンラインでちょっと話したからといって、この人を信頼しようとはすぐにはなりづらいです。お客様に対してだけでなく、メンバー同士も信頼資産の積み上げが大事です。結果として、お客様は総体的に信頼性が高いところに依頼したいとなるのです。そこを士業としてどう意識していくか、あるいは意識していないかで、大きく変わってきます。

士業の中には、たとえばこのスキルを身につけたい、これをやりたいという目標のもとで転職活動をしている方が結構多くいらっしゃいます。ただ、何をやりたいのかという目的が無い方も多いと感じています。スキルだけを追っていくと、ずっと転職を繰り返していくことになってしまいます。その事務所でできないとなると、他に移るしかなくなりますから。

―お客様とも同僚とも、信頼資産を積み上げる努力が、常に求められているのですね。

仙石:お客様の課題ありきで、経営者や関与する人たちをどう幸せにしていくかです。これを持っている方はお客様に好かれますし、次もお願いしたいとなります。この部分がないと、スキルだけ上がっても依頼が来なくなります。ならば、大手にいた方がいいでしょう。大手にいれば依頼はどんどん来て、仕事がいっぱいあるのでやっていけますから。しかし、僕らのようなベンチャーの中小事務所として独立するとなると、そうはいきません。

会計士や税理士であれば、自分で考えて調べることで、できることがたくさんあると思います。「この仕事をどこそこの事務所に行って学ばなければ」ではなくて、本来は自分で培っていくものなのです。独立した当初は、特にそう感じました。香取忠秀(パートナー)と二人しかいなかったので。以前、大手にいた頃は専門部署があるので、そこに聞けば何とかなりました。ですので自分で考えて調べるということを習慣にすることは容易ではありませんでした。
そういう意味では、大手の監査法人を離れてくる人はある程度、ベンチャーに来る覚悟が必要だと思います。大手は本当に恵まれています。その環境から離れた時の覚悟を持って、サムライ業としてやっていかないと、方向性を見失う方は多いかもしれないですね。

わずかな心配りでお客様の心証を変える秘訣と、そのための働き方は

―経営理念の「迅速性」についてはいかがでしょうか。
仙石:お客様に対するレスポンスの速さが満足度を上げることを、体感しています。大手では品質管理の関係上、何人もの目が入ります。結果として、回答するまでに時間がかかります。我々はそこまで大きな組織ではないので、いかに速くお客様にレスポンスをするかを大切にしています。

お客様の質問に対して、回答を調べてからレスポンスをする人が意外と多いのですが、そうではなくて、「ご連絡ありがとうございます。確認してご連絡いたします」だけでいいのです。この1本が早いと、お客様も安心しますし、「ここの事務所は回答が速いね」と思われるのです。たとえ、そこから実際の回答を探すまでに時間があったとしても、です。

お客様によく言われるのです、「できる企業、できる方はレスポンスが早いね」と。1日経ってから「回答ができました」と送っても、それまでお客様は「僕が送ったメールを見てくれているのかな」とか、LINEならば「既読」になっているのに、と不安になります。

―確かに、お客様である経営者の方は週末も関係なく、仕事のことで頭がいっぱいでしょうね。例えば週末に連絡があったとして、どのように対応したら良いでしょうか。

仙石:週末も働けと言っている訳では全くありません。ただ、経営者の方は休みなく、常に会社のことを考えているので、例えば「月曜に確認してご連絡します」とか、一言でもあれば良いのです。しかしここに差が出ます。週末に1時間仕事をする必要はないのです。

このことは、AIが発展している中での、我々の今後の役割とも関係があると考えています。この先、申告資産などのように、我々が手を動かす幅は徐々に減っていくでしょう。そうなると何が残るかというと、お客様により近いところでサービスを提供し、課題解決を図っていくことが存在意義だと思います。

経営者は、iPhoneのSiriに自分の悩み相談をするかというと、しませんよね。コミュニケーションのスキルがこれからの時代は特に求められるので、当グループはそこに注力しているところです。専門性も大切ですが、税理士として、経営者の方と満遍なく話せるというのは大事だと思うのです。例えば経営者の方と相続の話をしていて、その流れで、「法人のことなんですけど…」と言われた時に、「すみません、僕それは分からないので」と言うよりは、「そうですよね」と応えられる方が、お客様の満足度につながります。

ストックオプションのシステム作りなどITやDXにも挑戦。枠にはまらない組織を目指して柔軟な働き方で臨む

―貴グループとして、今後の展望をお聞かせください。またそこでどのような人に活躍していただきたいとお考えでしょうか。

仙石:単純に会計事務所という枠にはまらない組織を目指していきたいと思っています。IT企業さんがどんどん士業領域に入ってこられているので、僕らも逆に、士業が関与できる範囲で領域を広げていくことが大事だと考えており、ツールの開発などを積極的にしていきます。

例えば、DXツールとして、ストックオプションのシステム作りをやりました。会計も必ず、ITやDXと切っても切り離せなくなっていくので、そこに僕らも微力ながら進出していこうと考えています。また今後は、富裕層向けサービスを増やしていきます。その一環で、シンガポールに現地法人も設立しました。僕自身は9月からシンガポールに行くので、日本と半々ぐらいの生活になります。

シンガポールに進出するのは、ある意味で新型コロナが流行したことの副産物ですね。ズーム会議が増えましたから。同様に、メンバーにも週二日のリモートワークを認めています。ご家庭の事情によってはフルリモートも認めるなど、個別の事情にも相談に応じることを大切にしています。女性のメンバーにはご結婚されていて、お子さんがいらっしゃる方もいます。お子さんの受験とか、早く帰らないといけないとかもあるでしょう。いろいろな背景を持った方たちとも一緒に働ける場でありたいと、常に思っています。

ただ、オンラインばかりだと人間関係が希薄化してしまう部分もあります。それを防ぐために朝と夜、必ずチームごとに全員でミーティングする場を設けて、オンラインも事務所からも参加してもらい、皆さんが交流できる場をより多く設けています。また最近は、全体での食事会もできる範囲ではありますが開いています。

―開業10年を前に、理想をどんどん形にしていますね。

仙石:本当に目指している方向は、量より質です。ご縁がある経営者に質の良いサービスを提供するために、人材を揃えていきたいと思っています。税理士の資格を取られると、すぐに独立する方も多いのですが、個人開業ではできることに限界があります。組織ではM&Aや事業承継など、幅広い層のお客様に提供します。しかし当グループが大手と決定的に違うのは、お客様により近いところで課題解決を図るということです。結果として自分のメニューも広がります。

自分がやりたいことをやれるというのは、とても大切です。しかし自分がしたいことをするためには、本来はお金を払わないといけないことですよね。自分自身がきちんと能力を高めていくことで、お金を払わなくても自分が楽しいことをできる環境づくりが、僕は一番大事だと思っていますね。自分が仕事をして楽しいと思えると、プライベートとかビジネスとかを区別する感覚は、無くなってきます。その方が人生ハッピーだと思いますね。それも含めて人生ですから。

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この記事を書いたライター

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