コロナ禍の影響で、リストラに関するニュースが増えています。また、将来が見えなくなり転職を考える人も増えています。普段は、退職者のために失業保険の受給に必要な書類を準備する管理系パーソンの方も、いざ自分のことになると慌てるものです。この記事では、失業保険の受給手続きをスムーズに行うポイントについて解説します。
失業保険は、離職をして働く意思があるにもかかわらず、働く会社がなく求職活動をしている人が受給対象となります。ですから、離職時点で次の就職先が決まっていて、すぐに働く人は対象外となることに注意が必要です。
また、受給対象者に必要な条件は、『離職の日を起算日として、それ以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あること』となります。ただし、働いていた企業が倒産した等の場合は、特定受給資格者となり、条件が異なります。
失業保険の受給手続きは、自分が住民票を置いている住所を管轄するハローワークで行います。企業を退職した人が自動的に受給対象になるわけではないので、ハローワークからご案内などの書類が送られて来ることはありません。失業保険を当面の生活費として当てにしている人は、必要な書類を整えて早めに受給手続きを行うことが必要になります。失業保険の受給手続きのためには、下記の通り、5種類の書類等が必要になります。
① 雇用保険被保険者離職票(-1と―2の2つの書類があり、両方必要となります)
② マイナンバーカード(マイナンバーカードが未発行の方は、マイナンバーの記載がある住民票と身元確認が出来る写真付き公的書類が必要になります。写真付きの公的書類を持っていない方は、公的書類が2つ必要になります)
③ 縦3cm×横2.5cmの証明写真を2枚(サイズが特殊なので注意が必要です)
④ 印鑑(シャチハタは不可)
⑤ 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(ネット銀行は対応していない銀行があるので、予め管轄のハローワークに問い合わせをしておくことをお勧めします)
このうち1つでも足りないと、ハローワークに行っても失業保険の給付の手続きとして必要な「雇用保険説明会の日時決定」手続きをして貰えません。また、失業保険を受給するためには、求職の意思を示すことが必要であるため、「求職申し込み」をハローワークで必ず行う必要があります。
これらの手続を完了すると、定期的に失業認定日にハローワークに行くことにより、受給期間分の失業手当を受け取ることが出来ます。
このように、失業保険の受給手続きは、必要書類を早めに準備することが重要ですが、それ以外にも、実際に受給決定までスムーズに手続きを進めるためには、いくつかのポイントがあります。
離職票は会社が作成をする書類ではありません。会社は、退職者が出ると、必要な書類を準備してハローワークに離職票の発行を依頼します。ハローワークから会社に離職票が届くと、会社から退職者に離職票が渡されるという流れになっています。
また、退職者の全ての人が離職票を必要とするものではありません。離職票は失業保険の受給に必要なものなので、退職をしても就職の意思がない場合(妊娠出産のために退職をするケースや、退職後に留学などを予定しているケースなど)には、会社は離職票を発行しません。
従って、退職が決まり、失業保険の受給が必要な人は、会社の人事部などにその旨を伝えて、早めに準備をお願いしておくことが良いでしょう。
「離職票―2」には、退職者の離職理由を会社と退職者本人の両方が書く欄があります。離職票は、通常退職後に受け取るものなので、会社から退職者に郵送で送られてくるのが一般的です。ですから、離職票の離職理由を退職者が実際に確認をするのは、退職後ということになります。
この「離職理由」については、事業主も退職者も該当する理由に〇をつけて、それとは別に具体的に退職理由を記載する場所があります。ここで、事業主と退職者が、退職をする際に何かしら認識の齟齬があった場合には、事業主が書いてきた理由は納得できない退職者も出てきます。
この場合には、ハローワークで、離職理由が異なることを離職票で示して、その説明をすることになります。特に、会社都合なのか本人都合なのかについての相違は、失業保険で受け取れる失業手当の受給期間と受給開始のタイミングに影響しますので、注意が必要です。事実の相違がある場合には、ハローワークの職員の方に退職した会社との調整をお願いすることもあります。
その場合には、失業手当の受給開始が遅れることになるので、退職者は、退職する時、会社と意思疎通をきちんとしておくことが必要になります。
必要な書類の提出と求職の申込をすると、最初は、「雇用保険説明会」を決められた日時に受けることになります。その後は、定期的に「失業認定日」にハローワークに出向いて、失業者であることを認定してもらう必要があります。この失業認定日は、ハローワークが決める日程となります。
ですから、採用面接や急な葬式などへの参加などやむを得ない理由以外で変更することは出来ません。失業手当を生活費として当てにしている人は特に、この失業認定日は忘れないようにしておくことが必要です。なお、継続した失業認定のためには、月2回以上の求職活動を行うことが必要になります。
失業手当の額は、「給付日数×基本手当日額」で決定されます。「基本手当日額」とは、失業手当の1日の給付額のことで、次の計算式で算定されます。
基本手当日額 = 賃金日額(退職前6カ月の賃金合計÷180) × 給付率(50~80%)
基本手当日額と賃金日額には、それぞれ上限額と下限額が設定されていて、また、給付率は月額賃金が多い人ほど低くなります。
また、失業手当がもらえる期間は、離職理由、年齢、被保険者期間などによって決定されます。その内容はかなり細かく決められているので、ハローワークのサイトを参考にしてください。
コロナ禍の影響で、じわじわとリストラや自主退職者の募集などのニュースが増えています。また、今後は企業再編などのM&Aも活発になると思われるので、長く勤めようと思っていた会社が、突然経営陣が変わることで、会社の雰囲気や経営方針が変わることもあるでしょう。
現時点で、コロナ禍がいつ収まるのかについての先の見通しはまだ立っていません。このような経済環境の中では、今まで自分は正社員として安泰だったと思っていたとしても、いつ状況が突然変わるかは分からないのです。過度に心配し過ぎることはストレスになることもあるのでバランスが必要ではありますが、少なくとも、今までよりも自分が勤める会社が属している業界の動向や、会社の中の雰囲気などには注意を向けておくことが必要です。
そして、退職理由として、自主退職なのか会社都合の退職なのかについては、見解の相違が出てくるケースが多くなると思われます。退職理由で会社と意見が合わないと感じた時、一方的に自分の言い分を主張するだけではトラブルが大きくなることもありますので、権利主張はしつつも、会社の言い分を冷静に聞いて理解しようとする姿勢が必要になることは留意して欲しいと思います。