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テレワークでも残業代は必要?テレワーク残業の実態と課題を解説!

HUPRO 編集部
テレワークでも残業代は必要?テレワーク残業の実態と課題を解説!

東京都の発表よると、都内企業(従業員30人以上)の2020年4月のテレワーク導入率は、3月の24.0%から62.7%になりました。わずか1ヶ月の間に2.6倍と急増したことになります。

今回は、急増するテレワークについて、勤務管理と残業の実態と会社が解決すべき課題について解説します。

テレワークと残業の定義

一言でテレワークと言っても仕事の内容や働き方によって、その内容は様々です。また、在宅勤務によって家事の時間と仕事の時間が曖昧になり、何が残業なのかわからない人も多いと思います。まずは、テレワークと残業の意味を確認しましょう。

テレワークとは

日本テレワーク協会ではテレワークを「情報通信技術(ICT、インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義し、下記の通り分類しています。
(テレワークの種類)

在宅勤務 自宅にいて、会社とはパソコンとインターネット、電話、ファクスで連絡をとる働き方。
モバイルワーク 顧客先や移動中に、パソコンや携帯電話を使う働き方。(営業職の人など)
サテライトオフィス業務 勤務先以外のオフィススペースでパソコンなどを利用した働き方。

新型コロナウイルス感染症の影響で急激に増えたのが、在宅勤務型のテレワークです。急遽、サテライトオフィスを準備した会社もあるでしょう。

残業とは

残業とは、所定労働時間を超えて仕事をしたり休日出勤することです。所定労働時間は、就業規則や入社時の労働条件通知書で決められています。

残業には「法内残業」と「法定残業」の2つがあり、どちらの場合も残業代は必要です。
(残業の種類)

法内残業 1日8時間、週40時間の範囲内で、所定労働時間を超える残業
法定残業 1日8時間、週40時間を超えて行われた残業

法定とは労働時間を「1日8時間、週40時間」と定めた労働基準法のことで、法定残業に対しては25%の割増賃金を支払う必要があります。
テレワークについても、所定労働時間を超えて残業すると残業代が発生し、さらに法定労働時間を超えた場合は割増賃金が必要になります。

テレワークと残業の状況

日本労働組合総連合会の「テレワークに関する調査2020」(対象は今年4月以降にテレワークをした人1,000 名)によると、テレワーク時の残業状況は下記の通りでした。

労働時間の管理

テレワーク時の労働時間の管理方法の上位は下記の通りです。

1.ネットワーク上の出退勤管理システムでの打刻(27.6%)
2.メール等による管理者への報告(18.7%)
3.パソコン等の使用時間(ログインとログアウト)の記録(16.7%)

労働時間の管理

引用:「テレワークに関する調査2020」|日本労働組合総連合会(以下、同資料より引用)

専用のシステムやメール、パソコンを使って労働時間管理をしている会社が多いですが、「自己申告(13.5%)」「時間管理をしていない(11.5%)」など管理体制が不十分な会社もあります。

特に、従業員数99人以下では23.5%の会社が「時間管理をしていない」と回答しています。

残業の状況

テレワークをしている人で残業があった人は調査対象の38.1%でしたが、20代・30代の人は50%前後と約半数の人が残業を経験していました。

残業の状況

残業代の申告状況

残業した人のうち残業代を申告しないことがあった人は65.1%もいて、さらに、申告したのに残業が認められなかったことがある人も56.4%にのぼります。

残業代の申告状況

残業代を請求しなかった理由の上位は下記の通りです。

1. 申告しづらい雰囲気だった(26.6%)
2. 時間管理がされていないから(25.8%)
3. しなくても良いと思ったから(12.1%)
4. 上司に申告をするなと言われたから(11.7%)

申告しづらい雰囲気があったり上司が申告を禁止する会社では、テレワーク以前から残業代が適正に支払われていたか疑わしいと考えられる。また、時間管理がされていない会社は、テレワークをするための環境整備が不十分であると言えます。

テレワーク残業の課題

テレワーク残業の現状から、新型コロナウイルスの影響で十分な準備ができないままテレワークをスタートした会社も多いと思われます。テレワーク残業で解決すべき課題は次の通りです。

● 勤務時間の管理
● 残業代の支払い
● 長時間労働の抑制
● 業務効率の改善

勤務時間の管理

会社には従業員の勤務時間を管理する義務があります。所定外労働に対して残業代を支払い、従業員の安全と健康を守るために労働時間を把握しなければなりません。

就業規則の明確化

テレワーク用の就業規則を新たに設けるの理想的ですが、通常勤務とテレワーク勤務の労働条件が同じならば、現在の就業規定を準用することも可能です。どちらの場合も、テレワークの勤務時間について、下記項目を明確にして従業員に周知することが重要です。

● 始業・終業の時刻、休憩時間、休日など
● 残業代を含めた賃金の決定・計算方法など

就業時間や残業時間の把握

また、勤務時間を把握するための具体的な方法を決めなければなりません。勤怠管理システムの導入など方法はいろいろありますが、残業に関して下記方法が考えられます。

● 残業するときは事前申請するルールを設ける
● パソコンの稼働時間など勤務時間を客観的に把握できる手段を準備する
● 残業を増やさないために、勤務時間外の電話やメールを避ける

就業時間や残業時間の把握

残業代の支払い

就業規則で勤務時間に関するルールを明確にし、勤務時間が正しく把握できれば、就業規則に従って残業代を支払わなければなりません。在宅勤務だからと言って、残業代を支払わないと法律違反になります

また、従業員が残業を申告しないという事態を避けるために、就業規則を周知徹底するとともに、従業員の実態把握に努めなければなりません。

長時間労働の抑制

残業の圧縮は、残業代の節約だけでなく従業員の健康を守ることにも役立ちます。会社での勤務と違って在宅勤務では従業員の勤務実態が見えにくいため注意が必要です。

「仕事は予定通り進捗しているか」「業務量が過重ではないか」「報告なしで残業していないか」など、より頻繁に詳細にチェックすることが求められます。また、ビデオ会議システムを使った朝礼・夕礼や定期的な連絡など、従業員とのコミュニケーションも重要です。

業務効率の改善

残業を圧縮するために、また会社の生産性向上のために、テレワークの業務効率を上げることも重要になります。

テレワークに必要な機器を用意することもありますが、業務内容を見直すことで業務効率を向上させることもできます。不要な業務を削減し、効率的な方法を導入する機会でもあります。

まとめ

テレワークにおいても、所定労働時間を超えて残業したときは残業代を支払わなければなりません。

しかし、残業しても「残業を申告しない」ケースや「申告したのに残業が認められない」ケースが数多くあるのが実態です。

正しく残業代を支払い従業員の健康を守るためには、就業規則を整備し周知することと勤務時間を正しく把握することが必要です。また、テレワークの導入を、従来の仕事をやり方を見直し業務効率を高める機会にすることも可能です。

この記事を書いたライター

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