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工業簿記と商業簿記の違いとは何?どちらが難しいの?勉強法も解説!

HUPRO 編集部
簿記3級と2級の試験科目の違い!工業簿記とは?

会計の知識として広く認められている商工会議所による簿記検定試験。1級、2級、3級とあり、一番簡単な試験が3級となり、2級との大きな違いは、3級の試験科目は商業簿記のみであることに対し、2級の試験科目は商業簿記に加えて工業簿記がある点にあります。今回は工業簿記の概要について解説していきます。

簿記検定試験2級の必要性

工業簿記とは何かについてご説明する前に、まず簿記2級の必要性について述べたいと思います。
会計業界や経理職に就職をしようと考える際、スキルとして簿記検定試験の合格を提示することは非常に有効です。また採用条件にあらかじめ提示している会社も多くあります。

しかし、採用条件としてあらかじめ提示している会社の多くが求めているスキルは、簿記検定試験2級以上の合格者であり、3級のみでは非常に就職先が限定されてしまうのが現実です。よって会計業界や経理職に就職をしようと考える際には、簿記検定2級以上に合格をすることで、より良い就職活動に臨むことが出来ます。

簿記検定試験3級との違い

簿記検定試験2級の3級との大きな違いは、試験科目に工業簿記が加わることです。その他には、科目としてはどちらも商業簿記がありますが、その出題範囲が2級では広がることで難易度が上がること、受験料等が異なります。

工業簿記とは?

工業簿記とは、主に製造業での会計処理に適用される複式簿記のことであり、会社内部の経営管理に必須の知識です。

工業簿記は会社の内部の生産活動に伴う材料費、労務費、経費について処理を行い、製造原価を算出する複式簿記です。
製造業では、商品の販売によって売上を発生させることに対する自社制作商品は、その制作に投入をした材料費、労務費、経費を基に自社で計算を行わないと、その製造原価が決定をされません。
このように製造業において、製造原価や売上原価を把握するために工業簿記は必要不可欠なものとなっています。

商業簿記とは?

一方で、商業簿記は日商簿記検定の3級で出題される範囲の内容で、仕入や売上等の会社の対外的な取引について処理を行う複式簿記です。
小売業では、商品の販売によって売上を発生させることに対する仕入商品は、他社からの仕入代金が提示されることによって、自社で計算をすることなく売上原価が決定をされます。
製造業ではない、商業経営の企業は商業簿記を使用するため、非常に使われる機会が多いとされています。

工業簿記と商業簿記の違い

では、商業簿記と工業簿記とでは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

勘定科目の違い

商業簿記と工業簿記では、まず使用する勘定科目が違います。
工業簿記では、商業簿記の範囲ではでてくることのない「材料」「製品」「仕掛品」「労務費」などといった勘定科目が出てきます。

原価計算期間

通常、工業簿記の場合も商業簿記の場合も会計期間(1年間)を設けています。
ですが、工業簿記の場合は、迅速な意思決定のため、原価計算期間が一ヶ月単位とされており、一ヶ月ごとの月次決算を行うのが特徴です。

財務諸表と損益計算書の表記

勘定科目などが違えば、財務諸表や損益計算書、貸借対照表上での表記の仕方も変わってきます。例えば、商業簿記で言う「当期商品仕入高」が工業簿記においては「当期製品製造原価」と表示されるなどがあります。

簿記を勉強する上での違い

日商簿記の受験勉強においても、日商簿記と工業簿記とでは違いがあります。
3級での出題を中心とした商業簿記においては、勘定科目などの暗記や簿記の考え方を理解する力が求められる一方で、2級以上で出題される工業簿記では詳しい計算方法や深い知識が求められます。

工業簿記と原価計算

商業簿記において重要となるのは損益計算書における「売上原価」の計算です。商業経営では外部から仕入れた商品を売上げた結果を貸借対照表で表していますが、
工業経営においては、自社で制作製品の原価を元に計算しているため、「原価計算」をすることが、主な目的となります。よって工業簿記と原価計算は切ってもきれない関係性なのです。

工業簿記の考え方とは

工業簿記における材料費、労務費、経費とは

材料費とは製品を制作するにあたり、物品の消費によって生ずる原価です。素材費、部品費、燃料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費等が該当をします。期首材料費に当期材料仕入費を加え、期末材料費を差し引いたものが、当期の製品制作に投じた材料費と計算がされます。

労務費とは製品を制作するにあたり、労働役務の商品によって生ずる原価です。工員賃金、給料、法定福利費等が該当をします。
経費とは、製品を制作するにあたり、材料費、労務費以外に生ずる原価です。材料棚卸減耗損、外注加工費、工場に係る減価償却費、工場に係る水道光熱費、保険料、修繕費等が該当をします。

工業簿記における製造原価とは

上記の当期の製品制作に投じた材料費、労務費、経費を合計したものを当期製造費用といいます。また、完成製品でない仕掛中の製品を仕掛品といいます。
期首仕掛品棚卸高に当期製造費用を加え、期末仕掛品棚卸高を差し引いたものが、製造原価となります。ここでいう製造原価とは、販売することが可能である完成製品に対する原価をさします。

期末仕掛品棚卸高の金額の評価方法には、数量を計算の基礎とする平均法、先入先出法と金額を計算の基礎とする売価還元法があります。
それぞれの計算方法によって仕掛品の評価額が変わります。

工業簿記における売上原価とは

売上原価は販売することが可能である完成製品の期首製品棚卸高に当期製品製造原価を加え、期末製品製造原価を差し引いたものが、当期の売上原価となります。

売上原価がさすものは、小売業等の他業種と同様に、販売したものに対する原価であり、売上から売上原価を差し引いたものが、売上総利益となります。期末製品製造原価の金額の評価方法には、仕掛品と同様に、平均法、先入先出法、売価還元法があります。

工業簿記と商業簿記の勉強法

では、簿記を受験するにあたり、工業簿記と商業簿記はそれぞれどのように学習を進めれば良いのでしょうか。
前述のようにそれぞれの学習内容に違いがあるため、得意、苦手が分かれるかもしれません。

勉強計画の立て方

一般的な学習計画としては、日商簿記2級の商業簿記の基本となる部分(3級の範囲含め)を一通り学習をし、その後の応用として工業簿記を学習することがおすすめです。
初めて勉強をする場合は特に、商業簿記の考え方が頭に入っているか否かで、学習の効率が変わってくるでしょう。

学習方法としては、一度テキストを読んで概要を理解し、実践問題を解く、間違えた問題やわからないものは都度テキストで確認する、といった流れが良いでしょう。
工業簿記は、商業簿記のように暗記がメインではなく計算の考え方を理解することが大切なので、実践問題や模擬テストの回数をこなして、理解していくことをおすすめします。

この記事を書いたライター

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