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試用期間と退職について詳しく解説します!

社会保険労務士 蓑田真吾
試用期間と退職について詳しく解説します!

入社にあたっては、筆記試験や面接試験を用いて人柄や能力を判断することが多いと言えます。しかし、それだけでは判断が難しいと言えるでしょう。そこで、試用期間が設けられています。試用期間とは解約権(採用を見合わせる)が留保された状態(解約権留保付労働契約)とされ、通常の労働契約よりも広い範囲で契約の終了が認められますが、試用期間の趣旨、目的に照らして客観的に合理的な理由があり、社会上相当と認められる場合に限って許されます。

また、労働者側から退職を申し出たいという場合もあるでしょう。その場合、法的には14日前までとなっておりますが、実務上は、当該労働者が主たる業務として行っていた業務は引継ぎが必要となります。よって、法律上の最低限度の日数よりも余裕を持った申し出が必要と言えます。また、主たる業務を担っていなかったとしても、人事を司る部署では給与計算(支給・各種控除)や社会保険の手続き等もあり、タイトな申出は避けるべきです。

試用期間中に退職の意思が出た場合

試用期間は、使用者側は労働者の能力等を判断する期間であり、労働者側も社風を肌で感じる等、お互いが見極めをする期間とも言えます。労使双方で注意しなければならない点を検証しましょう。まずは、使用者側です。前述のように解約権が留保されているとは言え、試用期間であっても労働契約は成立しています。

よって、客観的かつ合理的な理由がなければ解雇(使用者側からの一方的な通告)はできません。通告したとしても権利濫用として無効となる可能性が高くなり、労働者は復活します。そして、その間の賃金も支払う必要があります。ゆえに、争いが長期化して、無効となった場合は支払う必要がある賃金も肥大化するということです。

次に労働者側のリスクです。一般的には自己都合により退職することが多いと言えます。しかし、試用期間中に知り得た情報を営利目的で第三者に開示すること、機密情報を持ち出したことが後で発覚し、企業が損害を被った場合は損害賠償請求されるリスクもあります。

退職とはいつの時点で成立するか

退職の意思表示の有効性については、大隈鉄工所事件という参考になる判例があります。端的には労働者の退職の意思表示の有効性は退職願を受理した役職者次第という判断です。

例えば採用の場合は、多くのケースで今まで全く面識のなかった求職者を採用するか否かを決定しなければならず、知識としても十分な量の判断材料があるとは言えません。そのような状態で人事部長単独の意思のみで採用の決定権があるとは言い難いでしょう。

しかし、退職願の承認は、事前情報が少ない採用とは異なります。これまでの経験(勤務状況等)があり、例えば人事部長の決済を持って最終決裁としていることが記録上も明らかである場合は、人事部長が受理したことを持って合意解約が成立したとするのが当然です。

2.退職とはいつの時点で成立するか

退職の意思表示

退職の意思表示は、試用期間中・試用期間後であっても、必ずしも書面によらなければならないということではありません。労働者からの退職の申し出とその申し出に対する会社側の承諾があれば合意による退職が成立します。

しかし、実務上は書面を残すことで、後で問題が起こった場合(退職日のズレ)にも双方が確認できるというメリットがあります。また、失業手当受給の際に必要な離職票を発行し、会社からハローワークへ対面で手続きへ行く際にも退職の確認が書面で必要となるために、事実上書面の取得は必要と言えます。

また、退職の撤回についても確認しましょう。退職願が労働者の一方的な「退職告知」として行われた場合は、使用者側に到達した時点で雇用契約が終了と解されるために、撤回する余地はありません

反対に「合意解約の申し込み」である場合は使用者側が承認する前であれば双方の合意により解約する事を申し込むために、撤回することが可能となります。

他の論点として、退職の申し出については、その申し出が真意に基づく真正な意志であるかは重要な論点です。十分な説明がないままに使用者側から退職願を書かせたとなった場合は、真意に基づく真正な意志とは言えません。よって、書面を取得したことのみをもって前述の意志があったとは言えない場合もあります。

例えば、社会保険や給与(諸手当を含む)の支払いなども重量な労働条件です。認識齟齬によって労働者側から不利益取り扱いと主張され退職日の撤回なども起こり得ます。特に試用期間中と試用期間経過後で労働条件に差が生じている場合は認識齟齬が起こっていることがあります。

また、伝え方にも配慮すべきです。試用期間中とはいえ会社のメンバーであることには変わりありません。よって、個室や会議室を利用するなど、会社側へ一定の配慮はするべきです。まずは、口頭で伝えてその後書面で提出という形も多く取られています。

この記事を書いたライター

大学卒業後、一般企業を経て都内の医療機関に就職。医師、看護師をはじめ、多職種の労務管理に従事しながら一念発起し社会保険労務士の資格を取得。 【他保有資格】2級ファイナンシャル・プランニング技能士、労働法務士 等
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