士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

ビジネスデューデリジェンスとは?具体例とともに解説します!

HUPRO 編集部
ビジネスデューデリジェンスとは?具体例とともに解説します!

買収や合併の際にデューデリジェンスは欠かせない手続きです。しかし、デューデリジェンスという言葉には多くの意味があることから定義も曖昧です。そこでこの記事では、デューデリジェンスという言葉の意味を歴史的に振り返ったあとで、ビジネスデューデリジェンスという言葉が意味するところを具体的に説明します。

デューデリジェンスという言葉の歴史?

「デューデリジェンス」という言葉は、一般的には「必要な注意」または「合理的な注意」を意味する言葉で、少なくとも15世紀半ばからこの意味で使用されてきたと言われています。 デューデリジェンスは、そのプロセスを「合理的な調査」(セクション11b3)と呼ぶ1933年の米国証券法により、専門的な法律用語となって、現在では、一般的なビジネス用語として用いられるようになりました。

もともと、米国の法律には、後に法律用語で「デューデリジェンス」防衛策と呼ばれる第11条の防衛策が含まれていて、この法律には、証券の購入に関して投資家に重要な情報を十分に開示していないとされた場合、ブローカー・ディーラーがこの防衛策を実行することができるとされていました。

ブローカー・ディーラーが、株式を売却する会社を調査するうえで、「デュー・デリジェンス」(慎重さが求められる)を行使し、発見した内容を投資家に開示している限り、その調査の過程で発見されなかった情報の不開示について責任を問われることはないとされています。

ブローカーディーラーのコミュニティは、標準的な慣行として、自身が関与している任意の株式の提供のデューデリジェンス調査の実施をすぐに制度化しました。その結果、当初、「デューデリジェンス」という用語は、株式投資の公募に限定されて用いられていたものの、時が経つにつれ、M&Aの調査全般に関連する用語として使用されるようにようになりました。

ビジネスデューデリジェンスとは

デューデリジェンスとは、「特定の取引が確定する前に、提案された投資取引の内容と投資対象となっている企業について合理的な調査を行い、投資の価値をチェックすること」を言います。現代では、デューデリジェンスは企業の買収や合併(M&A)のときに投資の価値をチェックするための一連の手続きのことを意味するのが普通です。

特定のテーマについて投資の価値をチェックするための手続きは、事業(ビジネス)デューデリジェンス、財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、人事デューデリジェンス、ITデューデリジェンス、環境デューデリジェンスなど様々に呼称されますが、その本質は同じで、投資の価値をチェックすることにあります。

したがって、ビジネスデューデリジェンスとは、デューデリジェンスという用語の前にビジネスという言葉がついている通り、ビジネス(事業)に関して投資価値をチェックする一連の手続きのことを意味します。投資先のビジネス(事業)に投資額以上の価値があるかどうかをチェックするための一連のプロセスが、ビジネスデューデリジェンスといいます。

ビジネスデューデリジェンスの手続き

ビジネスデューデリジェンスとは、投資先を選定している企業が投資候補となっている事業の調査や監査を行うことです。その目的は、買収先・合併先の情報の正確性を確認し、その価値を評価することにあります。ビジネスデューデリジェンスにおける調査は通常、投資家やM&A案件を検討している企業によって実施されるものです。

他の状況では、相手が購入を完了するための実質的な資産を持っているかどうかを判断しようとする買い手と売り手であることもあります。法律上の義務である場合もあれば、任意である場合もあるなど、ビジネスデューデリジェンスで行われる調査の質や量は状況によって異なります。

デューデリジェンスの中で最も重要なタイプの一つが、機密情報覚書(CIM)で紹介されている財務情報が正確かどうかをチェックする財務デューデリジェンスです。財務DDは、過去3年間の監査済み財務諸表、昨年の比較可能な財務諸表を含む最近の未監査の財務諸表、会社の予測とそのような予測の根拠、設備投資計画、棚卸資産のスケジュール、債務者と債権者などを含むが、これらに限定されない会社のすべての財務情報の完全な理解を提供することを目的としています。

ビジネスデューデリジェンスの手続き

一般に、ビジネスデューデリジェンスのプロセスでは、主要な取引先の分析、固定費と変動費の分析、利益率の分析、内部統制手続の検討などが行われます。ビジネスデューデリジェンスでは、より正確な予測を行うために、会社の受注簿と販売パイプラインの調査を行うこともあります。

多くの買収を試みる企業は、買収・合併対象企業の負債状況に焦点を当てた財務分析を別のセクションで行なって、短期および長期の負債、適用される金利、未払いの負債を返済する能力、および必要に応じてより多くの資金を確保する能力を評価するとともに、企業の資本構造の全体的な調査と評価を行っていくことになります。

ビジネスデューデリジェンスにおいては、特定の事業の収益性について財務諸表などをもとにして投資の価値を評価することになりますが、自社の戦略と買収・合併先の戦略が一致することかどうかも評価しなければなりません。

一般的に、買収や合併のターゲットとなる企業が、買収者の全体的な戦略的事業計画にどの程度適合しているかを評価するためことを目的としたビジネスデューデリジェンスの実施は非常に重要な意味をもっています

例えば、新規買収を検討しているプライベート・エクイティ・ファームは、提案されたターゲットが、既存の企業ポートフォリオをどの程度補完するかを問題とすることが多いです。M&Aを検討している大企業は、ターゲット企業を買い手の企業組織に統合することがどれだけ容易か(あるいはどれだけ困難か)を考えます。

以下は、ビジネスデューデリジェンスにおいて戦略的適合性の問題としてチェックされる主要な項目です。

<ビジネスデューデリジェンス チェック項目>
・買収・合併のターゲットは、不足している重要な技術、製品、市場アクセスを持っているか、あるいは収益性の高い利用が可能か?
・買収・合併のターゲットには、人的資源の大幅な増加を意味する重要な人材がいるか?
・買収・合併のターゲットが買収企業と統合することで期待できる業務上および財務上のシナジー効果はどの程度か?

ビジネスデューデリジェンスの他にも、ITネットワーク、株式や債券の発行、研究開発(R&D)、販売・マーケティングなどについてもデューデリジェンスは行われることが多いです。買収を成功させるためには、徹底したデューデリジェンスの実施が不可欠となります。ターゲット企業についての完全で深い知識がなければ、合併や買収に関する最善の情報に基づいた意思決定を行うことは不可能であるからです。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:用語解説

おすすめの記事