耐用年数とは、会社の資産がどれくらい利用・使用できるかを示した期間のことを言います。簡単に言えば使用可能期間のことです。耐用年数は減価償却という資産を費用化するための手続きを行うために欠かすことができないものです。この記事では、耐用年数がなぜ決められているのか、その背景にまで遡って詳しく解説します。
耐用年数とは、固定資産などの資産がどれくらいの期間使用できるか、その使用可能な期間を見積もったもののことを言います。固定資産などの資産は、継続的に企業に収益をもたらしてくれるものですが、使用に伴ってその価値は減少していくことになります。
そのため、たとえば100万円で購入した資産であっても、その使用に伴って価値が減少することは避けられず、会計上、1年に1回価値を減少させる手続きが必要となります。その手続きが減価償却と呼ばれる手続きです。
減価償却では、1年に1回使用に伴って減少する固定資産の価値を費用として認識します。減価償却によって、たとえば、100万円の資産の価値が毎年10万円ずつ減少しているとすると、減価償却費として毎年10万円が計上されていくことになります。
この場合、100万円の資産は10年間で価値が0になりますが、この10年という期間を耐用年数と呼びます。つまり、耐用年数とは、ある特定の資産の使用に耐えうる期間のことを言うというわけです。固定資産などの資産は、「減価償却」という手法によって、この耐用年数にわたって少しずつ費用化されますので、減価償却の際には耐用年数を決めなければなりません。
資産の特性や用途によって、理論上、その耐用年数は様々に決めることが可能です。たとえば、同じ車両運搬具という資産であっても、営業用として頻繁に使用されている車と、公用車としてあまり使われていない車では、当然使用できる期間(耐用年数)も異なることになります。
そうなると、耐用年数は経営者の判断で自由に決めて良いということになってしまいます。この場合、できるだけ長く資産を使おうとする経営者が出てくるのは自然なことです。
先の例で示したように、100万円の資産を耐用年数10年で単純に毎年均等に価値が減少していくとすると、毎年、減価償却費が10万円ずつ計上されていくことになりますが、耐用年数を20年とすれば、減価償却費は5万円ずつ計上されていくことになります。
つまり、経営者の主観で耐用年数を長く設定すると、毎年の減価償却費を低くすることができることになるわけです。同じ取得価額の資産でも、耐用年数が短ければ毎年の減価償却費は多くなりますし、耐用年数が長ければ毎年の減価償却費は少なくなるということになります。
このようにすると、経営者が減価償却という手続きを悪用して、会社の利益を操作する可能性が生まれてしまいます。日本では、これを防ぐために法人税法において、耐用年数が細かく定められています。法人税法で定められている耐用年数は特に法定耐用年数と呼ばれており、一般に、日本の企業はこの法定耐用年数を使って減価償却費の計算を行っています。
耐用年数は、通常の維持補修を行うことを前提として、普通の作業条件によって使用されることを前提として、税務上「法定耐用年数」が規定されています。したがって、同じ資産であっても耐用年数は必ずしも同一ではなく、使用方法などの程度が異なれば耐用年数も違ってきます。
また、日本では、確定決算主義が採用されているため、決算上の利益に基づいて利益を計算するという実務が定着しています。決算上の利益に対して税金の計算が行われていることから、会計上の減価償却費の計算と税務上の減価償却費の計算が別々に行われていません。
米国においては、会計上の減価償却と税務上の減価償却は別々に行われていますが、手間がかかることから、日本では別々に行わない実務が定着しています。
会計上の減価償却の手続きと税務上の減価償却の手続きを別々に行わない日本では、経営者が自由に耐用年数を決めて減価償却を行ってしまうと、法人税法上認められている耐用年数とでズレが生じてしまうことから、計算をやり直さなければならなくなり手間がかかります。
そこで日本では、必ずしも法定耐用年数を使わずとも減価償却費を計算することができるにも関わらず、法人税法が定める法定耐用年数を使って減価償却費を計算するのが一般的になっています。
耐用年数は、減価償却費を計算するための基礎となる重要な要素です。耐用年数がわからない限り、減価償却費を計算することは基本的にできません。日本では、耐用年数は法定耐用年数が使われるのが一般的に普及した実務となっているので、経営者は減価償却を計算する際に法定耐用年数を参照して減価償却費を計算することになります。
法定耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)により定められているので、経営者はこの省令を確認して減価償却費を計算しなければなりません。法定耐用年数は、「資産の種類」「構造」「用途」別に耐用年数を詳細に定められていますので、どの耐用年数を適用されば良いのかを適切に判断する必要があります。