クラウド会計とは、インターネット環境さえあれば、いつでも誰でも会計処理ができる新時代対応型の会計システムのことです。
従来日本の企業では、企業規模問わずに、会計ソフトダウンロード型の会計システムを導入しているところがほとんどですが、これでは会計・経理作業の効率化を図れないなどのデメリットが指摘されてきました。その点、クラウド会計システムを導入すれば、新時代のニーズに即しながら一般事業会社に多くのメリットをもたらしてくれるでしょう。
そこで、この記事では、クラウド会計とはどのようなシステムなのか、クラウド会計を導入すればどのようなメリットが得られるのかなどについて詳しく説明します。自社内の会計・経理業務に抜本的なテコ入れを希望している経営者の方や会計担当者の方は、ぜひ本コラムを通してご確認ください。
まずは、クラウド会計とはどのようなものなのかを解説します。従来型のダウンロード型会計システムとどのような違いがあるのでしょうか?
クラウド型会計ソフト、ダウンロード型会計ソフトについて説明する前に、両者を包括する会計ソフトについて説明します。場合によっては会計ソフト自体を導入せずに経理業務をこなしているという中小企業もあるので、会計ソフト自体のメリットにも注目してみましょう。
そもそも、会計ソフトとは、経理処理をスムーズに処理することを目的に発売されているソフトウェアのことです。古いタイプの会計ソフトでは、入力した仕訳から決算書作成しかできませんでしたが、現在では決算書作成といった基本的機能だけではなく、給与計算機能・年末調整対応機能・所得税や消費税の確定申告書作成機能など、多機能なスペックを備えたソフトが一般的です。
会計ソフトを導入してしまえば、電卓、手作業でこなしていた経理・会計業務の効率化を期待できます。
例えば、どれだけ優秀な経理人材を登用していたとしても人間が作業する以上ミスが生じうるものですが、会計ソフトであれば簡易なミスは発生しません。また、会計・経理業務がスムーズに処理できるので投入する人材の数を減らし、人件費もカットできます。バックオフィスが効率化された分、企業における収益部門に費用を投ずることもできるでしょう。さらに、会社のお金を扱うという重要な部門における横領事件などの発生を防ぐ役割もあります。
以上のように、会計ソフトの導入は、大企業・中小企業問わず、多くのメリットがもたらされるものです。
以上のように、会社の経理・会計業務を効率化する会計ソフトですが、ソフトの実態、ソフトを導入するときの流れに応じて、従来型のダウンロード型・インストール型の会計ソフトと、クラウド型の会計ソフトに区別できます。
ダウンロード型会計ソフトとは、特定のパソコンにアプリケーションをダウンロード・インストールして経理業務に取り込むというものです。代表的なダウンロード型会計ソフトには、弥生会計・勘定奉行・大蔵大臣・TKC・JDL・PCA会計などがあります。
ダウンロード型会計ソフトを用いた経理業務では、アプリをインストールしたPCで会計データを入力し、PCにデータを保存することになります。例えば、仕訳をするには取引を都度確認して1件ずつ手入力、領収書や通帳、請求書の処理についても、紙媒体で保存して目視で明細などを手入力する必要があります。自社内でセキュリティ対応をしなければいけませんし、ダウンロードをするにしても対応OSが限定的(主にWindows)という特徴もあります。
以上のように、ダウンロード型会計ソフトでは、せっかく経理業務をパソコン内で行えるとは言っても、実際には入力作業やデータを紙媒体で処理しなければいけないという手間が残ってしまうので、「ダウンロード型会計ソフトには弊害がある、デメリットが多い」という印象を抱く企業も少なくありませんでした。
クラウド会計とは、ダウンロード型会計ソフトにあるデメリットのほとんどを解消してくれる会計システムです。アプリケーションをインストールする必要もなく、ネットワーク上のサーバ内にデータを保存できるので、アクセス権限が付与されているPCを使えば、どこでも誰でも経理・会計業務を行えるようになります。
例えば、現在多くの人が使用しているGmailやLINEでは、やり取りされたデータはネットワーク上に保存されているのであって、各人の使用している端末に保存されているのではありません。どの端末を使用したとしても、Gmailへのアクセス権限さえはっきりしている限り使用可能ですよね。つまり、クラウド会計とは、このようなクラウド機能を会計業務に導入したものとイメージして差支えありません。
では、実際にクラウド会計を導入するとして、どのようなメリットが得られるのでしょうか?また、導入することによるデメリットや弊害はあるのでしょうか?
クラウド会計には、以下のようなメリットがあります。
①PC、タブレット、スマホなどを問わず、複数の端末から利用できる。
②MacやWindowsなど、使用するOSを問わない。
③セキュリティー対策が万全。
④税法改正やバグ修正に応じて自動でバージョンアップしてくれる。
⑤領収書や通帳などのデータを自動取り込みし、人工知能による自動仕分けをしてくれる。
⑥サーバにデータがバックアップ保存されている。
⑦顧問税理士とスムーズにデータをやり取りできる。
⑧e-Taxとの連携で手続きを簡略化。
以上のように、クラウド会計を使用すれば、業務が円滑化します。
例えば、ネットバンキングなどとの自動連携機能があるので、取引履歴や明細から自動仕訳が行われるので、入力作業を大幅にカットできます。領収書やレシートも手入力する必要はなく、スマホなどで画像スキャンして取り込む機能が付いているので、ミスの削減にも繋がるでしょう。自動仕訳機能からそのまま試算表・総勘定元帳も作ってくれるので、売上げ分析・経費レポート・経営方針会議・コンサルティング業務にも役立ちます。
また、セキュリティー対策も個々の企業で責任を負担することなく、クラウド会計サービス提供会社が責任をもって情報の暗号化などの高いガードをかけてくれているので情報流出のおそれもありません。改正の多い税法分野にも即時にアップデート対応してくれるので、利用者側が面倒を感じる必要もないでしょう。
さらに、今ではクラウド会計を導入しているアグレッシブな税理士も増えてきているので、逐一紙媒体のやり取りやデータ送信の手間をかける必要もありません。税務業界全体がクラウド会計への流れに乗っているので、ワークスタイルの変化が問われる今こそ、クラウド会計を導入するチャンスと言えるでしょう。
このように、クラウド会計とは多くの企業のバックオフィス業務の効率化を引っ張ってくれるツールです。ぜひ導入をご検討ください。
他方、多くのメリットを得られるクラウド会計ですが、残念ながらデメリット・注意点もいくつか存在します。
①クラウド会計を導入するにはインターネット環境が必須。
②毎月使用料金がかかる。
③会計クラウドシステムに慣れるのが大変。
さほど大きなデメリットではありませんが、クラウド会計を導入するには、その性質上、インターネット環境が必要です。現代において、インターネット環境が整っていない企業はほとんど存在しないでしょうから、この点に関しては心配する必要はありません。
注意すべきは、導入費用の問題です。クラウド会計システムの多くが月額料金で費用が発生するので、長期間システムを使用する場合には、残念ながらダウンロード型会計システムよりも高額になるでしょう。ただし、ダウンロード型会計システムでも、年間数万円~数十万円の費用を要するのが一般的なので、業務効率化と天秤にかけたときに、果たして長期的な割高感をどこまでデメリットと感じる必要があるのかは疑念が残るところです。
また、大掛かりにシステム移行する以上、業務に慣れるまでに時間や手間・労力を要するというデメリットは避けられません。ただ、どのクラウド会計も使用しやすい環境が整っているので、既に経理業務に習熟した人材なら大きな問題にぶつかることなく業務に慣れることができるでしょう。
クラウド会計とは、バックオフィス業務を最大限効率化し、企業全体の利益を促進するものです。導入にあたってはいくつもの弊害が生じるかもしれませんが、結果として得られる利益は、中長期的に会社全体にメリットをもたらすものでしょう。
特に近年、働き方の変革が問われる時代です。オフィス出社も当たり前ではなく、リモート業務の推進やオフィス規模の縮小が求められる傾向にあります。その中で、クラウド会計とは、時代のニーズにも呼応した会計システムと言えるでしょう。これから導入を検討されている企業の方は、今こそシステム移行のチャンスです!