この記事では、ティール組織の意味について解説します。ティール組織に至るまでの5つの発展段階と、ティール組織で働くメンバーに求められる3つの意識変革について理解しておきましょう。従来型の組織のあり方とは一線を画するティール組織について考えることは、働く意味について再定義するきっかけとなるはずです。
ティール組織とは、フレデリック・ラルーが「Reinventing Organizations(2014年)」で提唱した考え方です。
これは、ごくおおまかにいうと会社などの組織を「一つの生命体」、組織構成員(メンバー)を「内臓」のようにとらえる考え方ということができます。
従来のようなヒエラルキー的な階層構造型の組織運営ではなく、「組織の目的に応じて、自立した個人が細胞として集まっている」というようなイメージで組織が運営されるのが特徴です。
ティール組織の中のそれぞれの部署は、人体における内臓のように「役割」を与えられますが、それぞれ上下関係はありません。
あたかも、肝臓や脾臓といった内臓は、「人体を維持する」という共通の目的にしたがって働いていますが、どちらの方が重要とはいえないのと同じです。ティール組織のメンバーはただ目的に対して奉仕することが求められます。
ティール組織は、歴史上ある日突然生まれた組織形態ではありません。そこに至るまでには、以下の5段階の組織発展の段階があったとラルーは分類します。
下に行くほど発展した段階と定義されます。それぞれの発展段階は、一つ前までの発展段階の特徴を克服する形で生じるものであることが重要です。
各組織の意味について、簡単にまとめると以下のようになります。
能力がぬきんでている特定の個人が、他の個人を支配的に指示する運営スタイルで、「オオカミの群れ」と表現されます。
オオカミの群れがボスの命令に従い、エサを求めて日々さまようといった様相で、短期的な目標が長期的な目標よりも重要視される傾向があります。
良くも悪くも力のある個人に依存する組織であるため、その個人が倒れた時には組織が瓦解してしまう恐れがあります。
Amber(琥珀)組織は、軍隊組織のようなイメージです。上意下達で厳格な社会的な階級に基づくヒエラルキーによって情報管理を実施し、指示命令系統が明確な状態で運営するスタイルです。
階級的なヒエラルキーが存在することによって、Red組織よりは役割分担が行われています。これによって多人数を管理することができるようになるという発展が見られます。安定的な組織となるため、長期的な目標を設定することも可能になります。
その一方で、組織内での階級移動は極めて非流動的であることが問題点として挙げられます。
Orange組織は「機械」に例えられます。組織運営の特徴としては、Amber(琥珀)組織のような厳格な社会的階級が設定されていないことが挙げられます。
社長や上司従業員等のヒエラルキーはありますが、成果を上げた従業員が評価を受け、出世することができる運営スタイルです。
成果に基づいて機械の歯車のように人事評価が行われることから、必然的に「幸せとは何か」という原点回帰が生まれる契機にもなります。
Green組織は「家族」に例えられます。機械のように働くのではなく、メンバーはそれぞれ生まれ持った主体性を発揮することが期待され、多様性が尊重されるような組織運営を目指します。
お互いに思いやりを実現し、元気づけ合うことを大切にする一方で、リーダーの権力が具体的にどのように組織内に分配されるかのルールがないのが欠点です。
このため、メンバー間での合意形成に時間を要することや、合意形成できない場合は最終的にリーダーの意思決定に委ねざるを得ないなどの事態が生じます。
Teal組織は「生命体」に例えられます。メンバーは生命体である組織の目的を実現することを目指しますが、その組織の目的にメンバー個人が人生で達成したい目的が強く関連づけられていることが特徴です。
メンバー全員が互いの信頼に基づいて独自のルールを作り、創意工夫をしながら目的実現のために組織運営を行うというスタイルをとります。
このように、ティール組織は従来の組織とは全くちがった考え方のもとに運営されます。当然ながら、これがうまく機能するためには、組織構成員の仕事に対する考え方の変革が必須になります。
具体的には、以下の3つの意識変革が必要とされます。
それぞれの言葉の意味について、順番に見ていきましょう。
ティール組織では、メンバー全員が自分の信念に基づき、創意工夫をしながら自主的に働くことが想定されています。上意下達の命令系統がありませんから、徹底的な自己管理が求められます。
このモデル実現のためには、組織内で情報が透明化されていることと、意思決定プロセスにおける権限がダイナミックに委譲されていることが条件になるでしょう。
個人の意思決定を尊重しつつ、組織からのフィードバックもあり意思疎通がスムーズであること、人事プロセスが明確であることが必要です。
経営者と従業員のそれぞれが自律的に思考し、適切にフィードバックを受けることで、イノベーションが生起しやすい環境が醸成されるというわけです。
全体性の発揮(ホールネス)は、組織の目的と、メンバー個人の目的とを一致させるという考え方です。
メンバーは当然ながら自分の人生を達成することを最大の目標として組織に参加しますが、それが組織の存在目的と一致していれば、自己目的的に行動することで同時に全体への奉仕につながる仕組みとすることができます。
これは、上下関係を作らず、各個人が広い裁量の元に働くことを奨励するティール組織独自の考え方といえるでしょう。
共に働く仲間の不安や弱さにも組織として寄り添い、全体としてセルフマネジメントを機能させることによって、個々人の能力が最大限発揮されます。
ティール組織では、相互の人間関係を改善するトレーニングや感情・意見の相違を扱うトレーニングが行われることも特徴です。
個人がさまざまなタイプの仕事にチャレンジできるような工夫も必要です。これによってメンバーが自分の思い描くキャリアパスに従って、多様な能力を発揮することが可能になります。
ティール組織は自己の存在目的を明確に定義し、それを常に進化させていくのも特徴です。メンバーは、メンバー自身と組織が将来向かうべき方向を常に考え続け、かつ、両者が一致する方向性を考え続けることになります。
個人の存在目的と組織の存在目的が共鳴すると、人は「これこそ自分の天職である」と感じることができますが、個人の存在目的はその人のライフイベントや人生観の変化に応じて変わっていきますから、組織の存在目的もアップデートが必要になるのです。
こうした考え方は従来型の組織でも「経営理念の明確化」というかたちで実践されてきたことですが、従来と異なる点は、社長や上司が考えて部下に伝える上意下達ではないということです。
簡単に言えば、ティール組織の存在目的は「メンバーみんなで決めるもの」なのです。メンバー全員が組織の目的・使命を考え、常にアップデートしていくことが求められます。
今回は、ティール組織の意味と、そこに至るまでの発展段階について解説いたしました。
機械的な作業を人間が行うことの意義がなくなっていく21世紀において、ティール組織は人間が働くことの意味を考え直すためのヒントになる考え方と言えます。ぜひ参考にしてみてください。