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自己株式とは?取得、処分、消却の会計処理を解説します!

岡山 由佳
自己株式とは?取得、処分、消却の会計処理を解説します!

自己株式を活用することで、株式会社には様々なメリットがあるといわれていますが、そもそも自己株式とは何なのでしょうか?
今回は自己株式の概要と共に、自己株式の活用方法である取得、処分、消却に関する会社法や会計処理について、仕訳例を用いながら詳しく解説をしていきます。

自己株式とは?

株式会社が発行した自社の株式を取得して保有している場合に、この株式を自己株式といいます

会社法においても、自己株式とは「株式会社が有する自己の株式をいう」と明記され、会社法113条4項にて下記のように定められています。

(発行可能株式総数) 第百十三条 株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない。
2 定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない。
3 次に掲げる場合には、当該定款の変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。
一 公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合
二 公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合
4 新株予約権(第二百三十六条第一項第四号の期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が第二百八十二条第一項の規定により取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式(株式会社が有する自己の株式をいう。以下同じ。)を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない。
出典:e-gov法令検索 会社法

自己株式の活用

株式会社における株式発行の本来の目的は、その株を株主に売却することで、資本金を得ることです。
よってその株式を自社で保有するということは、資金回収に利用することの出来る手段を、その手段の行使をせずにいるということと同意ともいえます。

しかし、自己株式を活用することは、様々なメリットがあります。
自己株式に関する会計処理を認識すべき時点には、取得処分消却時点がありますが、それぞれの時点でそれを行うことのメリットがあります。

自己株式を取得するメリット

自己株式を取得するメリットには下記のような事項を挙げることが出来ます。
・敵対的買収を防ぐことが出来る
・株価低迷を改善することが出来る
・少数株主を整理することが出来る

自己株式を処分するメリット

自己株式を処分するメリットには下記のような事項を挙げることが出来ます。
・総発行済み株式数を変化させることなく、資金調達をすることが出来る

自己株式を消却するメリット

自己株式を消却するメリットには下記のような事項を挙げることが出来ます。
・会社の発行株式総数が減少するため、一株当たりの株価を上昇させることが出来る

自己株式の取得

株式会社が自己株式に関して会計処理を行うべき時点のひとつとして、自己株式を取得した場合が挙げられます。

取得の方法等については、下記コラムをご参照ください。

自己株式の取得が出来る場合

自己株式の取得は利害関係者保護の観点から、無制限に株式会社が行うことの出来る行為ではありません。
自己株式の取得が出来る場合は、会社法施行規則第27条にて下記のように定められています。

(自己の株式を取得することができる場合) 第二十七条 法第百五十五条第十三号に規定する法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 当該株式会社の株式を無償で取得する場合
二 当該株式会社が有する他の法人等の株式(持分その他これに準ずるものを含む。以下この条において同じ。)につき当該他の法人等が行う剰余金の配当又は残余財産の分配(これらに相当する行為を含む。)により当該株式会社の株式の交付を受ける場合
三 当該株式会社が有する他の法人等の株式につき当該他の法人等が行う次に掲げる行為に際して当該株式と引換えに当該株式会社の株式の交付を受ける場合
イ 組織の変更
ロ 合併
ハ 株式交換(法以外の法令(外国の法令を含む。)に基づく株式交換に相当する行為を含む。)
ニ 取得条項付株式(これに相当する株式を含む。)の取得
ホ 全部取得条項付種類株式(これに相当する株式を含む。)の取得
四 当該株式会社が有する他の法人等の新株予約権等を当該他の法人等が当該新株予約権等の定めに基づき取得することと引換えに当該株式会社の株式の交付をする場合において、当該株式会社の株式の交付を受けるとき。
五 当該株式会社が法第百十六条第五項、第百八十二条の四第四項、第四百六十九条第五項、第七百八十五条第五項、第七百九十七条第五項、第八百六条第五項又は第八百十六条の六第五項(これらの規定を株式会社について他の法令において準用する場合を含む。)に規定する株式買取請求に応じて当該株式会社の株式を取得する場合
六 合併後消滅する法人等(会社を除く。)から当該株式会社の株式を承継する場合
七 他の法人等(会社及び外国会社を除く。)の事業の全部を譲り受ける場合において、当該他の法人等の有する当該株式会社の株式を譲り受けるとき。
八 その権利の実行に当たり目的を達成するために当該株式会社の株式を取得することが必要かつ不可欠である場合(前各号に掲げる場合を除く。)出典:e-gov法令検索 会社法施行規則

自己株式取得の会計処理

自己株式を取得した場合、下記のように会計処理を行います。

有償取得をした場合

例えば、証券会社に自己株式の取得を依頼し、自己株式10,000千円分を取得し、手数料200千円と共に、普通預金より支払った場合には、下記のように仕訳を行います。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
自己株式 10,000千円 普通預金 10,200千円
支払手数料 200千円    

貸借対照表の表示箇所は、自己株式は純資産の部の株式資本の末尾に計上され、支払手数料は営業外費用に計上されます。

無償取得をした場合

自己株式を無償で取得した場合には、自己株式の数のみの増加として処理をします。
よって特段の会計処理及び仕訳の計上は発生しません。

自己株式の処分

株式会社が自己株式に関して会計処理を行うべき時点として、自己株式を取得後に処分した場合も挙げられます。
自己株式の処分とは、売却をすることをいいます

自己株式の処分については、会社法第199条にて下記のように定められています。

(募集事項の決定) 第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
5 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。出典:e-gov法令検索 会社法

処分の方法等については、下記コラムをご参照ください。

自己株式処分の会計処理

例えば、証券会社に自己株式の売却を依頼し、自己株式10,000千円分を12,000千円で売却し、手数料200千円が差し引かれた金額が、普通預金に入金された場合には、下記のように仕訳を行います。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
普通預金 11,800千円 自己株式 10,000千円
支払手数料 200千円 自己株式処分差益 2,000千円

貸借対照表の表示箇所は、支払手数料は営業外費用に計上がされ、自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上されます。

このように、自己株式を処分した場合は自己株式の帳簿価額を減額しますが、処分する自己株式の処分対価と帳簿価額との差額は自己株式処分差益または自己株式処分差損勘定を使って仕訳を行います。

自己株式の消却

更に、株式会社が自己株式に関して会計処理を行うべき時点として、自己株式を取得後に消却した場合も挙げられます。
自己株式の消却とは、売却とは異なり自己株式の存在そのものを消滅させることをいいます

自己株式の消却については、会社法第178条にて下記のように定められています。

第百七十八条 株式会社は、自己株式を消却することができる。この場合においては、消却する自己株式の数(種類株式発行会社にあっては、自己株式の種類及び種類ごとの数)を定めなければならない。
2 取締役会設置会社においては、前項後段の規定による決定は、取締役会の決議によらなければならない。出典:e-gov法令検索 会社法

自己株式消却の会計処理

例えば、自己株式10,000千円分を消却した場合には、下記のように仕訳を行います。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
その他資本剰余金 10,000千円 自己株式 10,000千円

自己株式を消却した場合には、消却手続が完了したときに、消却の対象となった自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から減額します。
自己株式の消却を計上した結果、その他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金を0とし、その負の値をその他利益剰余金から減額することになります。

まとめ

このように、自己株式とは発行した自社の株式を取得して保有している場合の、その株式のことであり、取得、処分、消却の時点でそれぞれ会計処理が必要となります。

会計処理方法にも注意をしながら、自己株式を活用し経営に役立てるようにしましょう。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
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