転職先に迷っているときに言われるのが「経理はやめとけ」という助言。閉鎖的・人事評価を受けにくいのに仕事は忙しいなど、ネガティブな声は実に多いもの。しかしこれは経理の実態を把握していないからこその勘違い、経理は魅力に溢れた仕事です。このコラムで経理の魅力を紹介するので、キャリア判断にお役立てください。
経理は、企業の会計・財務面の業務を担当する職種です。
具体的には、企業の収支や資産、負債などの財務情報を記録・管理する日次業務から、月次試算表の作成、決算報告書の作成、税務申告などを行います。
どんな企業にも経理職は必ず存在しており、企業が健全に経営するために不可欠な業務です。正確な財務情報を提供することで、経営者が企業の収益性や健全性を把握し、適切な経営判断を行うことができます。
経理職の仕事内容についてより詳細に知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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経理職は営業部や事業部といった、売上に直接関わる部門ではないため、社外の人とコミュニケーションを毎日のように取るわけではありません。逆に社内の人とはやり取りする機会が多いです。
また、日次業務と呼ばれる毎日ルーティーンのように行う業務もあれば、年次業務と呼ばれる一年に一度行う業務もあり、その年次業務は決算月前後に集中する傾向にあります。そのため、一年の中で繁閑の差が大きい仕事という特徴もあります。
そんな経理職ですが、なぜ「やめとけ」と言われることがあるのでしょうか?
まず、世間で「経理はやめとけ」と言われる原因について考えてみましょう。よく挙げられる理由は、次の7点です。
それでは、経理のデメリットについて具体的に見ていきましょう。
なお、世間の人が経理に抱くイメージ・経理の実情については、以下のコラムでも詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
経理の仕事はルーティーンです。日次業務・月次業務・年次業務に大別されますが、スパンは違いますが、原則として「同じことを繰り返すこと」が仕事です。
つまり、毎日変化のある仕事・クライアントとの刺激的な交渉などに憧れる人にとっては、経理はやめた方が良い仕事になってしまいます。
その一方で、デスクワーク・事務仕事が得意な性格の人には、むしろ業務の効率性を突きつめることができるのでおすすめの仕事だと考えられます。
なお、経理の仕事内容については、以下のコラムでも紹介しています。あわせてご一読ください。
決算期や月締日など、経理にも繁忙期が存在します。そして、このタイミングではかなり激務になるため、普段とは異なって残業で退社が遅くなったりするなど、身体的・精神的な負担が増大します。
ただ、そもそも仕事には忙しい時期・忙しくないタイミングが混在するもの。経理だけが他の仕事に比べて特別忙しいということではありません。
たとえば、営業職ではノルマや売上げなどによって仕事の成果を数値化しやすいものですが、いわゆるバックオフィスである経理は仕事の成果を客観視することはできません。
そのため、経理職全般が抱える課題として、人事評価に繋がりにくい(ボーナスアップ・昇進しにくい)という現実から目を背けることはできないでしょう。
ただし、最近ではバックオフィスの重要性を見直す流れが出来上がっているため、経理における業務レベル・達成度などが人事査定でしっかりと評価される時代になっています。「経理は出世できない」というステレオタイプの固定観念は現代には通用しないのでご安心ください。
経理の平均年収は、日本全体の平均年収と同程度、もしくは少し高いくらいであると言われています。もちろん働く企業の給与体系や担当する業務によっては高年収の実現も可能ですが、部長などある程度の役職に就く前の経理担当であれば、なかなか給与は上がりにくいのは事実です。これは上述した「評価のされにくさ」が影響しているのも一部あるかもしれませんが、その年収に対して、業務の専門性の高さが見合っていないと感じる方は多く、そのような方から「経理はやめとけ」と言われるケースもあるでしょう。
事実、経理職はAIの普及やRPAとよばれる業務自動化ツールの台頭で、人の手が必要ない業務が増えると予想されており、「10年後には存在していない職種」との見方もあります。確かに日次業務の一部などについては人的リソースを割かずに対応する企業が出てくるでしょう。
ただ、将来性が無い仕事かといえばそうではありません。
経理としてお金の流れにおける適切な問題認識やアドバイスは人間の目が必要な部分です。また、開示業務やIPO準備業務、監査法人への対応など高いレベルの業務についてはこれからも人の力が必要とされるはずです。
多くの時間をデスクワークで過ごす経理は閉鎖的な仕事環境にならざるを得ません。営業のように外部顧客と顔を合わせる機会もほとんどないため、確かに「アクティブに仕事がしたい」という人には不向きでしょう。
ただ、デスクワーク中心の経理職ですが、チームでミッションをこなす作業がほとんどです。部署内の人と業務についてやりとりする機会も頻繁にありますし、他部署の人たちからの報告をとりまとめる際にはしっかりとコミュニケーションをとる必要があります。
したがって、「始業から終業まで誰とも口をきかない毎日」というイメージは間違いです。経理職に就く場合にも、しっかりとしたコミュニケーション能力は不可欠です。
なお、閉鎖的な環境が苦手だから…という理由で経理を敬遠している人は、以下のコラムもご参照ください。経理の実情についてご理解いただけるでしょう。
経理は企業のお金を扱う仕事なので、ちょっとしたミスが企業の損失につながってしまう、責任重大な仕事です。
会計ソフトに打ち込めば、計算は自動的におこなってくれますが、そもそも入力ミスがあったり、提出された証憑の数字が正しいかどうかなど、様々なことに気を配らねばいけません。一般的なイメージと異なり、経理は決して単純作業を繰り返すだけではないのです。
そのような業務に耐えうる高い集中力を求められる経理職に対して嫌悪感を持っている人からは、「やめとけ」と言われることがあるかもしれませんが、ご自身がその点において問題ないと感じるのであれば、気にすることは無いでしょう。
では、経理の魅力としてはどのようなポイントが挙げられるのでしょうか。経理に就くメリットについて考えてみましょう。
経理のメリットは次の3点です。
それでは、経理のメリットについて具体的に見ていきましょう。
なお、経理への転職をきっかけに年収アップを狙う人は、以下のコラムもご参照ください。
経理業界は慢性的な人材不足(「経理はやめた方が良い」と多くの人が勘違いしているから)。つまり、売り手市場なので、スキルを伸ばせば伸ばすだけ選択肢が増える点が魅力です。
たとえば、実際に企業において経理職の通年業務を経験するだけで、「経理の流れが分かっている」と評価されるので、より良い条件の転職先を見つけるのは難しくはありません。また、日商簿記3級・2級を取得するだけでも、スキル証明に役立ちます。
さらに、経理業務をきっかけに上昇志向が強くなった場合には、税理士試験・公認会計士試験にチャレンジするという選択肢も見えてきます。監査法人・会計事務所に就職するのも良し、自分で開業するのも良し、ベンチャー企業に役員として携わるのも良し、選択肢は無限に広がります。
以上のように、経理職には、そこから発展する資格・専門職が多数存在します。ここからも、「幅広い可能性のなかからキャリアを自分で選び、着実に積み重ねていきたい」と希望する人にはおすすめの仕事だと考えられるでしょう。
なお、英語力があればさらに経理職の選択肢は広がります。以下のコラムで詳しく紹介しているので、あわせてご一読ください。
未経験で経理をスタートした場合、最初は領収書の整理などの日次業務で経験を積むことになりますが、仕事に慣れてくると、経営判断に必要な資料を作成したり、財務的観点で上層部と関りを持つ機会も増えてきます。
たとえば、多くの企業では、出世コースにかならず経理部門が含まれます。経理を経験して、会社のお金の流れに精通しているからこそ、会社の舵取りに関われるという判断に基づくものです。
つまり、経理としてキャリアを積んでいけば、経理を越えた業務にも携わるチャンスがあるということ。上昇志向が強い人のキャリアルートのひとつとして経理はおすすめです。
「ただ数字を整理しているだけ」「言われた通りソフトに打ち込んでいるだけ」でも経理の仕事は成り立ちます。
ただ、これでは仕事に飽きるのは当然のことです。仕事の魅力を見つける努力は最低限必要でしょう。
そして、経理は知識が増えるほど魅力が分かりやすくなる仕事です。たとえば、勘定科目の内容・意味を理解するだけで、会社のお金の流れ、どの部署がどれだけのコストパフォーマンスを発揮しているのか、どの経営判断が財政状況に悪影響を及ぼしたのかなど、俯瞰的に会社の状態を判別できるようになります。
毎日の仕事に意味・価値を見出すことができるようになれば、仕事はどんどん楽しくなるはず。「さらに知識をつけるために勉強をして資格を取得する、そして、キャリア幅が広がる」という好循環に身を置くことができるでしょう。
なお、経理の知識を増やすためにはスキルアップが不可欠です。以下のコラムで経理の知識の増やし方について解説しているので、あわせて参考にしてください。
ここまでの「経理はやめとけ」と言われる理由と、経理をやるべきメリットを踏まえどんな人が向いているのかについて紹介していきます。下記の特徴に少しでも当てはまっているようであれば、「やめとけ」という意見に振り回されることなく、チャレンジすることをオススメします。
経理は会社のお金の流れを見ることになるので、当然毎日数字と顔を見合わせる日々が続きます。数字の苦手な人が経理職を転職先の選択肢に入れることはほとんど無いと思うのですが、もしその目安が分からないという人がいれば、一度簿記の勉強をして確かめるのも良いかもしれません。
経理においては、日次業務は毎日行うわけですが、基本的に同じ業務をやり続ける形になります。また、様々な締めが発生するため、それまでにきっちり業務を終わらせる必要があります。未経験の場合は、このような業務からやり始めることが一般的ですので、漏れなく滞りなく毎日の業務をこなすことに適性があれば向いているといえます。
経理の仕事でミスは許されません。大きい会社であればあるほど、自分のミスが大きく影響を与えることがあります。場合によっては一円を合わせるために、原因を探すようなこともあります。決算業務に関わるようになれば、自分が作成した財務諸表が取引先や株主の意思決定に影響を及ぼすことになりますので、どの場面においてもミスはできないのです。
営業などのように何百万の売上をあげるといったような、目立つ仕事ではなく地道な仕事が多いですが、その一つ一つに責任を持って取り組める人が経理に向いている人と言えます。
「経理はやめとけ」という人の意見を全く否定するわけではありません。確かに、経理の仕事は単調な側面がありますし、「地味」なイメージは払拭しにくいでしょう。また、向いていない人には「やめとけ」と言わざるを得ないかもしれません。
しかし、そもそも仕事にはそれぞれ特徴があって、すべての業務にメリット・デメリットがあることを忘れてはいけません。
そして、どんな仕事にでも転職を考えるときには、「やめた方が良い理由」ばかりを粗さがしするのではなく、「やった方が良い理由」に目を向けてみるだけの余裕をもった方が、自分が納得できるキャリアを形成できるでしょう。
また、もし「やめとけ」と言われている部分に懸念があるとしても、転職先の選び方によってはそのポイントが存在しない場合もあります。どうしても懸念に感じるポイントがあったとしても、そのような転職先を選べば経理として前向きに働くことができるかもしれません。
例えば「繁忙期は激務である」ポイントに対して懸念を感じるのであれば、経理担当者が多く所属しているため残業が少ない傾向にある大手企業の経理職に転職するのがよいでしょう。
また、評価されにくいことが懸念であれば評価制度が明確にされている企業、年収が低いのが懸念であれば同じポジションでも高待遇が担保されている企業の経理職に応募するのがオススメです。
ただし、こうした条件を自分で情報収集するのは難しいでしょう。求人情報や面接時に、採用担当者がすべてを正直に話してくれるとは限らないからです。そこで、転職の際は求人元企業の情報収集がしやすい転職エージェントなどを活用しましょう。転職エージェントなどを活用すれば、見かけの求人情報だけでなく、企業の内情もチェックして、求職者に適した求人情報に出会うことができます。士業・管理部門特化の転職エージェント「ヒュープロ」は業界特化という特徴を活かして、ここでしか出会えない求人や情報を取り揃えています。ぜひご相談から、お待ちしております!
経理は、懸念に感じるポイントがあるものの、魅力もたくさんあふれています。一般企業への就職をきっかけに、税理士・公認会計士などのキャリアも見えてきますし、年収の増加幅も他業種とは比べものにならないでしょう。
仕事の魅力・可能性を見つけられるかはあなた次第です。自分が打ち込めそうだと感じる仕事・自分にとって魅力のある仕事に就けば、満足のいく日々を送れるでしょう。