経理は身近な存在の方も多く、比較的安定して働けることから人気な職種の1つです。その一方で「経理はやめとけ」という助言を受けることもあると聞きます。そこで本記事では、なぜ経理が「やめとけ」と言われるのか、その真相と向いている人・向いていない人の特徴、経理職の魅力をご紹介します。
経理は、主に企業の会計・財務面の業務を担当する職種です。
具体的には、企業の収支や資産、負債などの財務情報を記録・管理する日次業務から、月次試算表の作成、決算報告書の作成、税務申告などを行います。
どんな企業にも経理職は必ず存在しており、企業が健全に経営するために不可欠な業務です。正確な財務情報を提供することで、経営者が企業の収益性や健全性を把握し、適切な経営判断を行うことができます。
また、経理が行う具体的な業務の内容は企業規模などによっても違いがあり、上場している企業や支店を複数所有している企業、海外展開をしている企業などで、一般的な経理の会計処理に加えて必要となる会計処理が異なります。そのため後述でも触れますが、自身がどのような企業で働きたいかを加味して、そこに必要な資格やスキルを身に着ける必要があります。
経理職の仕事内容についてより詳細に知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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そんな経理の仕事ですが、なぜ「やめとけ」と言われることがあるのでしょうか?
まずは、世間で「経理はやめとけ」と言われている原因について考えてみましょう。よく挙げられる理由は、主に次の5点です。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
決算期や月締日など、経理にも業務が立て込む繁忙期が存在します。その時期の経理担当者は長時間の残業が必要となり、場合によっては休日出勤も発生するという印象を持たれているようです。
とはいえ、繁忙期に業務量が増えてしまうことは経理に限った話ではありませんし、働き方改革の影響もありコンプライアンスへの意識が社会全体として高まっているため、休日出勤や過度な残業はなくなりつつあります。また、月末月初や年度末の決算期など、繁忙期のタイミングがある程度決まっているため予定が立てやすく、業務の調整もしやすいのではないでしょうか。
たとえば、営業職ではノルマや売上などによって仕事の成果を数値化しやすいですが、いわゆるバックオフィスである経理は仕事の成果を客観的に数値化することが困難です。
そのため、経理職全般に共通しているマイナスイメージとして、人事評価につながりにくいというイメージを持たれています。評価されないということは社内でポジションを上げることができないだけでなく、給料の上がりにくさや、さらには仕事に対するモチベーションの低下にも繋がってしまいます。このような背景から、評価制度の透明性や高い給与水準を求める方にとっては、魅力的ではないと映ってしまうようです。
ただし、最近ではバックオフィスの重要性を見直す流れが広がっているため、経理における業務レベル・達成度などが人事査定でしっかりと評価される時代になっています。「経理は出世できない」というステレオタイプの固定観念は現代には通用しないのでご安心ください。
経理は会社のお金の流れを仕訳したり記帳するのが基本の業務となるため、多くの時間を会社内で過ごすデスクワークがメインとなります。
また、営業職のように社外コミュニケーションの機会もほとんどなく、基本的には同じ部署内でコミュニケーションが完結することが多いというイメージが強いです。
しかし、閉鎖的な環境の方が良いという方にはむしろネガティブな印象かも知れませんが、実は経理業務のさまざまな場面において、他部署とのコミュニケーションが発生しています。
たとえば、営業部に不明なお金の流れや申請ミスについて確認しに行ったり、逆に売上データの確認をされるケースがあるでしょう。また、マーケティング職との予算に関する打ち合わせ、さらには経営陣との投資に関する相談など、重要なやり取りをすることもあります。
このように、閉鎖的なイメージとは裏腹にコミュニケーションを取ることが多い部署ともいえるのです。
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経理は、同じことを繰り返しやり続ける単調なルーティンワークだというイメージが強いのではないでしょうか。実際にある程度は業務内容が固定化されているため、単調な仕事の方が楽だという方がいる一方で、どうしても飽きてしまうという方も一定数いらっしゃいます。
特に近年は、クリエイティブな仕事や毎日変化のある刺激的な仕事がしたいという人が若年層を中心に増えてきており、単純作業はAIに仕事を奪われてしまうとも言われているため、よりやりがいのある仕事を求めている方にとっては「やめとけ」と言われる要因となってしまっています。
確かに、仕訳業務や経費精算のような一定のルールに基づいた単調な作業については、経理の仕事中でも将来的にAIに代替される可能性が高い業務とされています。
ただし、財務分析や監査対応など、情報に基づいて思考し判断を求められる高度な業務は今後も残り続けると考えられています。単調な作業がつまらないと感じる方やAIに仕事を奪われることが心配な方にとっては、積極的にスキルを磨いていくことでこのように高度な業務に就くことができ、経理としてキャリアアップを狙うことも十分に可能です。
経理の仕事の将来性については以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
これは先ほどの「評価されにくい」というイメージに起因する部分もありますが、経理職は年収が低いと思われがちです。営業職のように、自身の売り上げがインセンティブのような形でダイレクトに給与に反映されるということもないため、年収が上がりづらいという印象がある方も多いようです。
しかし、国税庁の「民間給与実態統計調査(令和元年度)」によると、経理職の平均年収は450万円程度で、日本全体の給与取得者の平均年収が約436万円であることと比較すると、やや高いことが分かります。
専門性が高い割には金額が見合ってないという意見もありますが、一般的に見るとそこまで低いという訳ではないようです。
また、この金額はあくまで平均であって、スキルを積んでいけば大きく年収を上げることができます。実際に、役職やスキルなどによっては年収1,000万円を実現している経理マンも珍しくないため、「経理=年収が低い」というイメージは正しくないと言えるのではないでしょうか。
経理への転職をご検討中で年収に不安があるという方は、現在ご自身が転職市場の中でどのような立ち位置にあるのかと、そこから目指せる年収レンジがどのくらいなのかを調べてみると良いかもしれません。
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「経理はやめとけ」という意見を完全に否定するわけではありません。確かに、経理の仕事は単調な側面もありますし、若いうちから一気に成長して荒稼ぎできるような職種ではありません。
しかし、そもそも仕事にはそれぞれ特徴があって、すべての業務にメリット・デメリットがあることを忘れてはいけません。
そして、どんな仕事にでも転職を考えるときには、「やめた方が良い理由」ばかりを探すのではなく、「やった方が良い理由」に目を向けてみるだけの余裕をもった方が、自分が納得できるキャリアを形成できるでしょう。
また、もし「やめとけ」と言われている部分に懸念があるとしても、転職先の選び方によってはそのポイントが存在しない場合もあります。どうしても懸念に感じるポイントがあったとしても、そのような転職先を選べば経理として前向きに働くことができるかもしれません。
例えば「繁忙期は激務である」というポイントに対して懸念を感じるのであれば、経理担当者が多く所属しているため残業が少ない傾向にある大手企業の経理職や、コンプライアンスに対する意識が強い企業を探してみるのがよいでしょう。
また、評価されにくいことが懸念であれば評価制度が明確にされている企業、年収が懸念であれば同じポジションでも高待遇が担保されている企業の経理職に応募するのがオススメです。
ただし、こうした条件を自分で情報収集するのは難しいでしょう。求人情報や面接時に、採用担当者がすべてを正直に話してくれるとは限らないからです。特に未経験からの転職では、より分からない部分が多いはずです。
そこで、転職の際は転職エージェントを活用するのがオススメです。転職エージェントは、企業のリアルな内情も把握しているため、求職者に適した求人情報に出会うことができます。士業・管理部門特化の転職エージェント「ヒュープロ」は業界特化という特徴を活かして、ここでしか出会えない求人や情報を取り揃えています。ぜひご相談から、お待ちしております!
ここまでは「経理はやめとけ」という経理のマイナスイメージについて解説してきましたが、反対に「経理をやった方が良い」と言えるような魅力としてはどのようなポイントが挙げられるのでしょうか?経理に就くメリットについて考えてみましょう。
経理の主なメリットは次の3点です。
それでは、経理のメリットについて具体的に見ていきましょう。
なお、経理への転職をきっかけに年収アップを狙う人は、以下の記事も併せてご参照ください。
経理業界は慢性的な人材不足(「経理はやめた方が良い」と多くの人が勘違いしているため)です。つまり、経理職は売り手市場なので、スキルを伸ばせば伸ばすだけ選択肢が増える点が魅力です。
たとえば、実際に企業において経理職の通年業務を経験するだけで、「経理の流れが分かっている」と評価されるので、より良い条件の転職先を見つけるのは難しくはありません。また、日商簿記3級・2級を取得するだけでも、スキル証明に役立ちます。
さらに、経理業務をきっかけに上昇志向が強くなった場合には、税理士試験・公認会計士試験にチャレンジするという選択肢も見えてきます。監査法人・会計事務所に就職するのも良し、自分で開業するのも良し、ベンチャー企業に役員として携わるのも良し、選択肢は無限に広がります。
以上のように、経理職には、そこから発展する資格・専門職が多数存在します。ここからも、「幅広い可能性のなかからキャリアを自分で選び、着実に積み重ねていきたい」と希望する人にはおすすめの仕事だと考えられるでしょう。
なお、英語力があればさらに経理職の選択肢は広がります。そちらに関しては以下の記事で詳しく紹介しているので、併せてご一読ください。
未経験で経理をスタートした場合、最初は領収書の整理などの日次業務で経験を積むことになりますが、仕事に慣れてくると、経営判断に必要な資料を作成したり、財務的観点で上層部と関りを持つ機会も増えてきます。
たとえば、多くの企業では、出世コースにかならず経理部門が含まれます。経理を経験して、会社のお金の流れに精通しているからこそ、会社の舵取りに関われるという判断に基づくものです。
つまり、経理としてキャリアを積んでいけば、経理を越えた業務にも携わるチャンスがあるということ。上昇志向が強い人のキャリアルートのひとつとして経理はおすすめです。
前述の通り、経理の仕事は単調な日次業務が一定数含まれます。
そのため、実際に「ただ数字を整理しているだけ」「言われた通りソフトに打ち込んでいるだけ」でも経理の仕事は成り立ちます。ただ、これでは仕事に飽きるのは当然ですし、勿体ないです。
先ほどご紹介した2点のように、その後のキャリアや自分がやっている仕事の意義を意識して業務に取り組むことで、仕事に対するやりがいや魅力の感じ方も変わってくるでしょう。
そして、経理は知識が増えるほど魅力が分かりやすくなる仕事です。たとえば、勘定科目の内容・意味を理解するだけで、会社のお金の流れ、どの部署がどれだけのコストパフォーマンスを発揮しているのか、どの経営判断が財政状況に悪影響を及ぼしたのかなど、俯瞰的に会社の状態を判別できるようになります。
毎日の仕事に意味・価値を見出すことができるようになれば、仕事はどんどん楽しくなるはず。「さらに知識をつけるために勉強をして資格を取得する、そして、キャリアの幅が広がる」という好循環に身を置くことができるでしょう。
なお、経理の知識を増やすためにはスキルアップが不可欠です。以下の記事で経理の知識の増やし方について解説しているので、あわせて参考にしてください。
ここまでの「経理はやめとけ」と言われる理由と、経理をやるべきメリットを踏まえどんな人が向いているのかについて紹介していきます。
経理に向いている人には下記の特徴があります。下記の特徴に少しでも当てはまっているようであれば、「やめとけ」という意見に振り回されることなく、チャレンジすることをオススメします。
経理は会社のお金の流れを見ることになるので、当然毎日数字と顔を見合わせる日々が続きます。数字の苦手な人が経理職を転職先の選択肢に入れることはほとんど無いと思うのですが、もしその目安が分からないという方がいれば、一度簿記の勉強をして確かめるのも良いかもしれません。
日次業務は毎日行うわけですが、基本的に同じ業務をやり続ける形になります。また、様々な締めが発生するため、それまでにきっちり業務を終わらせる必要があります。未経験の場合は、日次業務からやり始めることが一般的ですので、漏れなく滞りなく毎日の業務をこなすことに適性があれば向いているといえます。
経理は、完璧なデータの作成を求められる仕事です。大きい会社であればあるほど、自分のミスが大きく影響を与えることがあります。場合によっては一円のズレを合わせるために、原因を探すようなこともあります。決算業務に関わるようになれば、自分が作成した財務諸表が取引先や株主の意思決定に影響を及ぼすことになります。
そのため、一つ一つの仕事に責任を持って取り組める人が経理に向いている人と言えます。
経理で働くメリットは様々あるとはいえ、仕事に適性が無い人に無理にオススメはしません。具体的に以下のような特徴がある人は、他の仕事の職業の方が適正があるかもしれません。
基本的には経理職の特徴に反する方が向いていないということになりますが、ミスをしないことや勉強をし続けることは経理に限らず、仕事をする上で必要なことですので、最低限意識しておきたい社会人スキルと言えるかもしれません。
経理への適性については以下の記事でも詳しくご紹介しておりますので、併せてご活用ください。
最後に、経理特化の転職エージェントとして数多くの方の転職活動をご支援させていただいた中でも、経理を目指す時に身に着けておくことで、先ほどの懸念点を緩和して好待遇を受けやすい、もしくは待遇の良い人気企業への転職で有利になるような資格やスキルをご紹介します。
経理で最もイメージが強い資格といえば日商簿記検定ではないでしょうか?企業によっては経験や資格を不問としている企業も多くありますが、簿記を持っているかどうかで内定率が大きく変わります。特に簿記2級は取っておきたい資格です。未経験からの場合、資格や人柄、前職での経歴などが主な判断基準になるため、そこで簿記2級を持っていることで非常に有利に働きます。
簿記1級はかなりの勉強時間を必要とするため、社会人の場合は働きながらの取得は容易ではないかもしれませんが、簿記2級であれば働きながらでも比較的取得しやすい資格ですので、是非取得を検討してみてください。
簿記2級の勉強時間や、最短での取得を目指す場合の勉強スケジュールについては以下の記事で解説してますので、是非参照してみてください。
FASS(Finance Accounting Skill Standard)検定も簿記と併せて経理に役立つ資格とされています。こちらは経済産業省が経理・財務部門の人材育成を目的として実施している検定試験で、簿記を既に持っている方は次のスキルアップとして受けてみても良いかもしれません。
経理業務は決算資料の作成や日々の会計業務があり、基本的にはデスクワークでPCと向き合うことになります。また、様々な会計ソフトを使用することになりますので、基本的なPCスキルは身に着けておくと、未経験からのスタートだったとしても業務をスムーズにスタートできるでしょう。
今回は「経理はやめとけ」と言われる理由と、その真相について解説しました。経理の仕事は懸念に感じるポイントが全くないわけではないものの、、魅力もたくさんあふれていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
仕事の魅力・可能性を見つけられるかはあなた次第です。もし経理に興味はあるけど、挑戦への一歩が踏み出せないという方は、是非一度ヒュープロへご相談ください。
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