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中小企業で起きる粉飾決算とは?

公認会計士・税理士 金森 俊亮
中小企業で起きる粉飾決算とは?

ニュースで粉飾決算の報道を見たことがあるという方は多いのではないかと思います。
しかし、ニュースで取り上げられるような粉飾決算は、いわゆる株式市場に上場していて、売上高も数百億円をはるかに超えるような大企業の粉飾決算であることがほとんどです。

一方、それ以外の中小企業では粉飾決算が起きていないかというとそういうわけではありません。日本企業の99%は、中小企業です。これらの企業においても粉飾決算は残念ながら発生しています。

ニュースになることは、ほとんどありませんが、本日は中小企業の粉飾決算がどのようにして発生するのかについて解説したいと思います。

粉飾決算には2種類のパターンがある

粉飾決算には、2種類のパターンがあります。経営者が行う粉飾決算、従業員が行う粉飾決算です。
立場が異なる2者では、置かれた環境やプレッシャーが異なるため、実行する粉飾決算の内容が異なります。本日は、その2パターンを見ていきます。

経営者によるもの

中小企業は銀行からの融資を受けていることが多いです。銀行から融資を受けていると、決算の報告をする必要があります。また、新規の融資を受けるために、決算書を見せます。
その際に、決算書をよく見せるための粉飾決算が行われます。
決算書をよく見せるというのは、主に利益状況をよく見せるということになります。
そのため、粉飾決算では以下が行われることが多いです。

売上の架空

これは大企業でも行われますが、実際には計上していない売上高を計上します。
ただし、対外的に売上高を公表する必要のない、中小企業では大企業と比較すると発生頻度は高くないといえます。

そのような中で、中小企業において特徴的な粉飾としては、循環取引に巻き込まれるということがあります。循環取引とは、複数の企業が結託して、商品を循環させて、売上高を計上していくというものです。この際に、取引先の大企業から誘われると、力関係上断れないことがあります。

棚卸在庫の過大計上

売上原価は、ご存知の方も多いかと思いますが、「期首棚卸資産+当期仕入高▲期末棚卸資産」にて算出します。
そのため、期末棚卸資産を過大計上することで、売上原価を減少させることができます。
実際には、手元にない在庫を計上して利益を過大に出すということが行われます。

減価償却を止める

減価償却は、基本的に毎期計上する必要があり、利益調整のために減価償却を止めてしまうことは、会計上は違反です。
しかし、中小企業では、利益が出ない場合、減価償却を止めることで経費が未計上となり、黒字化するということもあります。

減価償却は、現金が流出するわけではないのでやりやすいというのもあります。
こういった粉飾は、公認会計士による会計監査が入れば必ず発覚されます。会計士監査を受けることが少ない中小企業特有と言えると思います。

減価償却を止める

従業員によるもの

中小企業では、経営者だけではなく従業員による不正も発生しやすいです。
発生しやすい要因については、次の見出しにて解説いたします。
中小企業の従業員による不正で、発生する可能性が高いのは現金の横領です。現金の横領を見ていきます。

現金の横領

典型的な不正です。よく数千万、数億の横領事件というニュースを見るなぁと思う方も多いのではないでしょうか。
やり方としては、架空の経費を発注して、会社の現金を支出することが典型です。その現金を自身で受け取って私的に使ってしまいます。

本来、会社が負担すべき経費でないものが損益計算書に計上されているため、粉飾決算となります。
これは、お金の管理を1人でやっている際に発生しやすいです。振込先や内容を確認されることが少ないために発生しがちです。また、社長が、経理の方を信頼しているということも多いでしょう。

中小企業では、従業員の給料が十分でないことが多いです。そのため、現金を横領して派手に使いたい、私生活で作ってしまった借金を返済したいという動機から発生することが多いようです。

大企業と中小企業における環境の違い

中小企業において発生する粉飾決算は大企業との環境の違いを比較すると、特徴が見えてきます。

内部統制が脆弱である

中小企業では、慢性的に人手不足の企業が多いです。慢性的な人手不足では内部統制を構築し、運用していくことが難しくなります。
経理周りにおいては、経理処理を実行する人と内容を確認する人の2人体制でやっていくことが内部統制上では理想です。

また、定期的に担当者を変えるというローテーションも不正の発生防止策として有効です。
しかし、これらの施策を行うには、経理に2人以上を割けるだけの人数の確保が必要になります。また、ローテーションを行うというのも、人的余裕がないと中々難しいです。

そういったことから、不正を防止するための内部統制を構築するのが、難しくなってしまいます。
さらに、研修等で不正を行った場合、どういった影響が企業に生じるかを研修で学習することも内部統制では重要です。しかし、中小企業ではそういった研修を実施することも予算等の理由で実施するのが難しいのが実情ではないでしょうか。

外部からの監視が少ない

大企業であれば、公認会計士による会計監査が実施されます。
一方、中小企業においては、監査役による監査は実施していたとしても外部が会計に関する監査をしているということは稀です。
外部から監査が入るとなれば、一定程度の抑止力になります。

例えば、先に紹介した減価償却を意図的に止めてしまうというのは、公認会計士の監査が入っていれば、必ず見つかり、修正を求められます。
また、税務調査が入るというタイミングで経理の方が自身の横領を自白するということもよくあります。

最後に

中小企業で発生する粉飾決算の内容や動機について理解していただけましたでしょうか。
さらに、中小企業で粉飾決算が発生しやすい環境を理解するというのも大事です。
自社で粉飾決算を防ぐには、体制を作るというのが最善の策ですが、実際は人手がいないので、難しいでしょう。
そのため、どういった粉飾決算が起こりやすいのかを理解し、社内で共有することで、社内で起こさないという風土を作るようにするのが良いのではないでしょうか。
この記事が少しでも中小企業の粉飾決算発生の抑止になれば幸いです。

粉飾決算についてはこちらの記事も参考にしてください。
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この記事を書いたライター

公認会計士・税理士。大手監査法人で10年、監査とアドバイザリー業務を経験し2020年7月独立開業。現在は会計コンサル業務を中心に業務を行い、徐々に税務業務を開拓中。小規模監査法人パートナーも兼務。多摩地域を盛り上げたいと思っている。
カテゴリ:コラム・学び

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