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労働分配率とは?目安や活用方法を詳しく解説!

岡山 由佳
労働分配率とは?目安や活用方法を詳しく解説!

労働分配率という経済用語があります。これは企業の人件費に関する割合です。
これを理解し活用することで、企業経営がより良いものとなります。
今回は、労働分配率について、その計算方法や、産業別の平均値、産業別、資本金別の推移のデータのご紹介、活用の方法まで、詳しく解説していきます。

労働分配率とは

労働分配率とは、経済用語のひとつであり、企業の利益に対する人件費の割合のことをいいます
つまり、企業の儲けがどれだけ従業員に還元されているか、という指標であり、給与額の決定等の参考情報になります。

労働分配率の計算方法

労働分配率は、人件費÷付加価値×100(%)、という計算式によって導き出されます

詳しい計算方法については、下記のコラムをご確認ください。

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人件費とは

労働分配率の計算における人件費とは、従業員のために必要となった経費の総称をいい、具体的には財務諸表における下記のような勘定科目が該当をします。

・役員報酬
・給与
・賞与
・退職金
・雑給
・法定福利費
・福利厚生費
・研修教育費
・賞与引当金繰入額
・退職給付引当金繰入額

各勘定科目の内容については、下記コラムをご参照ください。

付加価値とは

労働分配率の計算における付加価値とは、企業が売上を生じた際に新たに生み出した価値、利益のことをいいます
例えば、10円で仕入を行った消費を100円で販売した場合における付加価値は、この差額の90円であるといえます。
付加価値の計算方法には、控除法(中小企業庁方式)と、加算法(日銀方式)があります。

控除法

控除法における付加価値は、売上高-外部購入価額、という計算式によって導き出されます。

加算法

加算法における付加価値は、人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+経常利益、という計算式によって導き出されます。

付加価値については、下記コラムをご参照ください。

労働分配率の目安

労働分配率の目安は、業種や企業の規模によって異なりますが50%であるといわれており、70%を超えると企業活動が人件費に圧迫されるといわれています。

労働分配率が大きい程、企業の利益が従業員に還元されることが示されるため、従業員にとっては給与額等が比較的高く好待遇である企業であるといえますが、企業にとっては利益を給与額等に大きく割いていることが示されるため、その他の企業活動に充てる資金が少なくなるため厳しい状況に陥りやすくなります。

労働分配率の実態

経済産業省企業活動基本調査によると、2021年8月に公表をされた最新の2019年分の各業種における労働分配率の平均は、下記のようになっています。

・鉱業、採石業、砂利採取業…11.3%
・製造業…50.8%
・食料品製造業…53.7%
・飲料、たばこ、飼料製造業…35.6%
・繊維工業…57.1%
・木材、家具を除く木製品製造業…50.7%
・家具、装備品製造業…54.2%
・パルプ、紙、紙加工品製造業…45.1%
・印刷、同関連業…58.7%
・化学工業…39%
・石油製品、石炭製品製造業…91.5%
・プラスチック製品製造業…51.1%
・ゴム製品製造業…49.5%
・なめし革、同製品、毛皮製造業…72.4%
・窯業、土石製品製造業…45.6%
・鉄鋼業…49.9%
・非鉄金属製造業…45.4%
・金属製品製造業…55.8%
・はん用機械器具製造業…54.1%
・生産用機械器具製造業…50.1%
・業務用機械器具製造業…53.3%
・電子部品、デバイス、電子回路製造業…49.6%
・電気機械器具製造業…56.2%
・情報通信機械器具製造業 …61.1%
・輸送用機械器具製造業…55%
・その他の製造業…39.3%
・電気、ガス業…21.9%
・電気業…21.4%
・ガス業…24.5%
・情報通信業…54.8%
・ソフトウェア業…55.5%
・情報処理、提供サービス業…55.5%
・インターネット附随サービス業…42.4%
・映画、ビデオ制作業…54.1%
・新聞業…61.3%
・出版業…57.1%
・卸売業…49.5%
・繊維品卸売業…51.6%
・衣服、身の回り品卸売業…56.2%
・農畜産物、水産物卸売業…54.2%
・食料、飲料卸売業…48.4%
・建築材料卸売業…55.2%
・化学製品卸売業…57.5%
・石油、鉱物卸売業…73.3%
・鉄鋼製品卸売業…49.3%
・非鉄金属卸売業…50.8%
・再生資源卸売業…58%
・産業機械器具卸売業…49.4%
・自動車卸売業…48.4%
・電気機械器具卸売業…44.4%
・その他の機械器具卸売業…52.4%
・家具、建具、じゅう器等卸売業…55.5%
・医薬品、化粧品等卸売業…41.6%
・紙、紙製品卸売業…53.3%
・その他の卸売業…47.3%
・小売業…50%
・織物、衣服、身の回り品小売業…42.6%
・飲食料品小売業…52.6%
・自動車、自転車小売業…56.5%
・機械器具小売業…49.3%
・家具、建具、じゅう器小売業…36.6%
・医薬品、化粧品小売業…48.6%
・燃料小売業…52.1%
・その他の小売業…46.4%
・無店舗小売業…48.3%
・クレジットカード業、割賦金融業…28.6%
・物品賃貸業…24.6%
・学術研究、専門、技術サービス業…60.5%
・飲食サービス業…64.4%
・生活関連サービス業、娯楽業…47.2%
・個人教授所…64.9%
・その他サービス業を除くサービス業…70.4%

出典:e-Stat 経済産業省企業活動基本調査

労働分配率の推移

産業別にみた労働分配率の推移

2019年の労働分配率は、2018年の労働分配率と比較をすると、全体平均が48.6%から50.1%へと上昇しています。
合計の労働分配率の上昇は、2018年と比較をすると付加価値額及び給与総額ともに減少したものの、付加価値額の減少率が上回ったことに起因しています。
主要産業別にみても、製造業は47.8%から50.8%へ、卸売業は48.6%から49.5%へ、小売業は49.3%から50.0%へ、それぞれ上昇の傾向にあります

出典:[e-Stat 経済産業省企業活動基本調査

資本金規模別にみた労働分配率の推移

厚生労働省の令和3年版厚生労働白書によると、労働分配率は下記のように公表されています。

・2013年以降の景気拡大局面では、全ての資本金規模において労働分配率は低下傾向で推移していたが、2018年には、資本金1億円以上10億円未満の企業で、2019年には、資本金10億円以上の企業及び資本金1千万円以上1億円未満の企業で、労働分配率は上昇に転じ、全規模では2019年第Ⅳ四半期(10~12月期)以降上昇傾向に転じた。

・2020年には、感染拡大防止のために経済活動が抑制された一方で雇用維持が図られたこと等の影響により、人件費の減少率のマイナス幅よりも付加価値の減少率のマイナス幅が大きくなった結果、全ての資本金規模において労働分配率は、特に2020年第Ⅱ四半期(4~6月期)に大きく上昇した。

・また、2020年第Ⅲ四半期(7~9月期)には資本金1千万円以上1億円未満及び1億円以上10億円未満の企業において、リーマンショック期のピーク(2009年第Ⅱ四半期(4~6月期)に近い水準まで上昇した。2020年第Ⅳ四半期(10~12月期)には、資本金10億円以上の企業で引き続きやや上昇したが、資本金1千万円以上1億円未満及び1億円以上10億円未満の企業では低下し、全規模でも低下した。
出典:令和3年版厚生労働白書

企業での労働分配率の活かし方

ご紹介しました通り、労働分配率とは企業の利益に対する人件費の割合であることから、この割合を活かすことで、より良い企業経営が可能となります。
産業別や資本金別の労働分配率の推移等をご紹介しましたが、あくまでもこれらは平均であって、企業毎に見合った割合を考える必要があります。

しかし、平均と比較をいて現在の労働分配率が高すぎる、あるいは低すぎる、という場合には、下記のような企業の問題を見直すきっかけになります。

労働分配率が高すぎる

労働分配率が高すぎる場合には、利益に対する人件費の割合が高すぎることを示すため、下記のような問題を企業が抱えている可能性があります。

・給与額と比較をすると従業員の労働意欲が低い
・利益を得るための業務に支障をきたしている
・業務効率が悪い

労働分配率が低すぎる

労働分配率が低すぎる場合には、利益に対する人件費の割合が低すぎることを示すため、下記のような問題を企業が抱えている可能性があります。

・従業員が給与額が少ないと感じている

まとめ

労働分配率についてご紹介を致しました。この指標を活用することで、より良い企業経営が可能となるでしょう。
是非ご参考になさってください。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
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