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支払調書に記載する金額の消費税は税込・税抜どっち?例を用いて詳しく解説!

税理士 川口拓哉
支払調書に記載する金額の消費税は税込・税抜どっち?例を用いて詳しく解説!

原稿料、弁護士報酬などの支払調書の記載金額や提出義務免除について、消費税込で判定すべきか消費税抜で判定すべきかを悩んだ経験のある経理担当者も多いのではないでしょうか。原則は「消費税込」で記載や判定しますが、例外として「消費税抜」で記載や判定をすることもできます。この記事ではこの点について紹介します。
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はじめに

給与や原稿料、弁護士報酬などの支払者は、原則として、その支払の明細を記載した源泉徴収票や支払調書(これらをまとめて「法定調書」といいます)を一定期限までに税務署長へ提出することが必要です。例外として、たとえば原稿料の支払調書の場合、支払額が年5万円以下の場合はその提出義務が免除されます。

支払調書と消費税

原稿料、弁護士報酬などの支払者は、①その支払を受ける者の氏名または名称②住所若しくは居所または本店若しくは主たる事務所の所在地③個人番号または法人番号を記載した支払調書を税務署長へ提出しなければなりません(所得税法施行規則84条1項)。

もっとも、少額の原稿料をスポット的に支払うケースまでそれを義務付けると支払者の事務負担が重くなるため、同一人に対するその年中の報酬等の支払金額が5万円以下である場合はその者に関する支払調書の提出が免除されます(所得税法施行規則84条2項)。

この「5万円以下」が消費税抜の金額か消費税込の金額かは所得税法に記載されていません。それだと実務に混乱が生じるため、消費税法施行時に、「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて」という法令解釈通達が発出されました。この法令解釈通達の要旨は次のとおりです。

報酬・料金等が支払われる場合において、当該報酬・料金等が消費税の課税対象に該当するときの源泉徴収の対象とする金額は、原則として、消費税及び地方消費税の額を含めた金額となる ただし、報酬・料金等の支払を受ける者からの請求書等において報酬・料金等の額と消費税及び地方消費税の額が明確に区分されている場合には、当該報酬・料金等の額を源泉徴収の対象とする金額として差し支えない国税庁ホームページ

つまり、「5万円以下」の判定は原則として「消費税込」で行いますが、請求書等によって報酬の額が税抜対価と消費税等に区分されている場合は、例外として「消費税抜」で記載や判定をすることもできます。

具体例

以上の点について、具体例をもとに解説します。
甲株式会社が個人A氏に原稿料5万円(消費税抜)を支払う場合を考えます。この場合、A氏から受ける請求書の記載方法によって、支払調書の提出要否が変わります。

たとえば、A氏から次の請求書を受けたとします。

請求書

甲株式会社御中                         A氏

X月分の原稿料として5万円を請求しますので、契約で定めた期日までにお支払いください。

この場合、A氏からの請求書では報酬(原稿料)と消費税等の額が明確に区分されていない(そもそも消費税額の記載がない)ことから、税込の5万5千円をベースに支払調書提出の要否を判定することになります。5万5千円は5万円を超えるため、甲社はA氏への支払について支払調書を作成して税務署長へ提出する必要があります。

一方、A氏から次の請求書を受けた場合はどうでしょうか。

請求書

甲株式会社御中                         A氏

X月分の原稿料として以下のとおり請求しますので、契約で定めた期日までにお支払いください。
請求金額:49,895円
(内訳)
原稿料(消費税抜) 50,000円
消費税          5,000円
源泉所得税      ▲5,105円
計            49,895円

この場合、A氏からの請求書では報酬(原稿料)と消費税等の額が明確に区分されていることから、税抜の5万円をベースに支払調書提出の要否を判定することができます。5万円は5万円以下であるため、甲社はA氏への支払について支払調書を作成して税務署長へ提出する必要はありません。

なお、この場合であっても、甲社が希望すればA氏への支払について支払調書を提出することは可能です(法令上も「提出することを要しない」となっていて、提出を禁じているわけではありません)。

実務上の留意点

原稿料や弁護士報酬などの支払いを行う際に留意すべき点をいくつか紹介します。

まず、支払調書の提出義務判定は、支払者が税込経理方式を採用しているか税抜経理方式を採用しているかは関係ありません。あくまでも相手先の請求書に消費税等の金額が区分記載されているかで判断します。この点は、誤って覚えている経理担当者がしばしばいますので、ご注意ください。

次に、源泉徴収義務と支払調書の提出義務は連動しない点にも注意が必要です。たとえば、税理士法人に税理士報酬を支払う場合、報酬支払時の源泉徴収は不要ですが、支払額が年5万円を超えると支払調書の提出は必要です。

まとめ

以上、支払調書提出義務の判定を消費税抜で行うべきか消費税込で行うべきについて解説しました。支払調書の業務は勘違いに起因するミスが起きやすい分野ですので、慎重に作業することをおすすめします。なお、記載事項は2021年9月時点の法令に基づきます。

この記事を書いたライター

税理士事務所代表。社会人5年目で経理職に転じ、以降は経理畑。事業会社に勤務しながら税理士試験の勉強を始め、官報合格。移転価格税制対応業務や、外資系企業日本法人の各種申告業務の経験などを有する。
カテゴリ:コラム・学び

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