予実管理とは、予算と実績を管理すること。すべての企業において必要な業務です。予算に対して、実績がどれくらいの達成率にあるのかをきちんと把握することで、その企業の営業活動における問題点を可視化できます。この記事では、予実管理の方法とそのポイントについてなるべくわかりやすく解説します。
予実管理とは、企業の予算と実績を管理することです。しかし「予算」と「実績」のビジネス上の意味を把握しているでしょうか?
まずは「予算」「実績」それぞれのビジネス上での意味を見ていきましょう。
予算とは、企業が経営方針に基づいて設定した目標値のことです。
例えば、達成すべき売上目標や、かかる経費などを指します。
一般的な意味だと、例えば旅行の予算といったように、計画のために「必要な費用」やその「見積もり」を差し、辞書を引いても以下の意味しか掲載されていません。
よ‐さん【予算】 の解説[名](スル)
1 ある計画のために、あらかじめ必要な費用を見積もること。また、その金額。「予算を立てる」「建築予算」
2 国または地方公共団体の一会計年度における歳入・歳出の見積もり。議会の議決を経て成立する。
3 あらかじめ見積もること。あらかじめ考えておくこと。
「細君はちゃんと主人の寿命を―して居る」〈漱石・吾輩は猫である〉
出典:デジタル大辞泉(小学館)
しかし、ビジネスの場合はそれに加えて目標としての意味で使われることも多いため、この部分を混同しないように気をつけましょう。
ビジネス上での「予算」については、売上予算、費用予算、投資予算というように、その種類ごとに分類して管理されます。
予算に対して実績の場合は、一般的に使われている意味と一緒であり、実際の功績・成果を差します。
売上予算に対しては、実際の売上高 費用予算に対しては、実際に使った費用 投資予算に対しては、投資の結果の収益
などが実績となります。
予算と実績の意味を押さえたところで、予実管理について見ていきましょう。
予実管理とは、予算管理とも呼ばれます。
営業年度や半期、四半期、月ごとの一定の期間の売上などについて、企業が設定した予算(目標)を達成できるように実績を見ながら管理していくことです。
管理という工程には、以下の内容までが含まれます。
・実際の業績と当初の予算を比較して分析をする
・経営目標に対して、どの程度の進捗で進んでいるのか、あるいは進んでいないのか、達成度を把握する
・結果を現場にフィードバックして営業戦略の見直しを促したり、より強化するなどPDCAサイクルを回し、組織をコントロールする。
予実管理を行なうことで、予算として設定した金額に対して実績がどの程度であるかを把握することができるだけだけではありません。
施策などをその都度見直すことで、軌道修正を行って予算を下回ること(未達)を防ぎ、より高い達成率へ到達させる目的もあります。
「予実管理」という言葉を初めて聞く人でも、ビジネスにおいて予算(目標)を立て、それを達成できるように施策を打ち、適宜見直すということは日常的に行っています。
予実管理を効果的に行うためには何が必要なのか、そのポイントを見てみましょう。
予実管理は、トップ層はその重要性を認識していても、末端まで必要と理解しているでしょうか。実際の営業活動を行う側からすれば、営業予算(目標数値)も手法も上から降りてきて、消化状況によって急遽施策変更など「押しつけ」になっていないでしょうか。
予実管理を効果的なものにするためには、予実管理の必要性とその方法を皆が理解している必要があります。
予算の設定は非常に重要です。
なにより重要なのは「絵に描いた餅」にならないよう、適切に設定することです。
高すぎても低すぎても行けません。高すぎればはじめから達成ができないことが見えていますので、どうせ未達ならとやる気を削いでしまいます。
逆に低すぎては簡単に達成できるので、やはり真面目に取り組みません。
企業の抱える問題点をしっかりと見つめ、それを改善することで達成可能となるよう案配で予算設定を行う必要があります。
予実管理をしたくても、予算、実績、両者の差異、という数値情報を確認できるシステムがない場合、経理部門からの集計を待たなくてはなりません。
効果的な予実管理を行う場合は、リアルタイムで予算と実績、達成率が確認できるシステム構築が不可欠です。
企業は、その規模や業種によって重要視する数値は異なります。
予実管理においては、様々な予算と実績を対比させますが、そこから得られる分析をトップマネジメント層が把握することで、より効果的な経営方針を打ち出すことを最終的な目的としています。
予算に対して実績がという単純な待避だけではなく、新たな生産拠点を作るべきか、どのような広報施策が良いのか、オフィスを拡大-縮小すべきか、社員を増員すべきかリストラすべきかなど、経営層が決定すべき内容は多岐にわたります。
企業が抱える課題を解決したり、経営の意思決定に役立てるために役立つ情報を提供する、そして経営層はその内容をしっかりと理解して経営に生かすという体制-すなわち管理会計制度が整っていることが、予実管理をより効果的に使うためのポイントなのです。
予実管理において、経理担当者の役割は大きいです。
勤務先が大手企業だったりすると、予実管理の進捗に対して、経営者に意見を言うことが難しいかもしれません。
また、中小企業やベンチャー企業の場合、社長は目の前の売上数字に力をいれ、予実管理までしっかりと把握できていないという場合もあります。
しかし、予実管理というのは経営において最も重要な要素の一つです。経営層はその内容をしっかりと把握する必要があります。
例えば売上目標は達成したけれど、経費をそれ以上に使っていたらどうでしょうか?各部門は自分たちの予実管理しかしていません。つまり全社的な数字を把握できるのは経理部門と経営層だけなのです。
経理とは経営管理の略でもあります。全社視点での予実管理を行い、経営層に助言することが本来の経理に求められる役割と言えるでしょう。