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貢献利益とは?CVP分析を使って事業部ごとの貢献利益をだしてみよう!

HUPRO 編集部
貢献利益とは?CVP分析を使って事業部ごとの貢献利益をだしてみよう!

その事業部は全社に寄与しているか?

みなさまの会社もきっと様々な事業を行っていることかと思います。日本ではそのような複数の事業を営むための組織構造として、経理や人事労務などバックオフィス業務を担う「コーポレート部門」と、現場で実際に売上を獲得する役割を担う「事業部門」として構成する場合が多いようです。
そうすると、管理会計に興味のある皆様は一つの疑問が生じるかと思います。「どの事業部が一番儲かっているのか?」それを考えるためのツールの一つが「貢献利益」という考え方です。

貢献利益の考え方

貢献利益とは何か。そこまで難しい概念ではありません。以前ご説明しましたCVP分析(損益分岐点分析の考え方)を活用したものです。CVP分析は、費用を変動費・固定費に分解して、限界利益がいくらか、どれだけ売れば黒字になるか等を分析するものでしたね。
さて、それを踏まえて貢献利益の定義です。「貢献利益=売上高-変動費-個別固定費」です。別の言い方をすれば、「貢献利益=限界利益-個別固定費」です。個々の製品単位で採算を考える限界利益をもう少し広く捉えて、会社目線で整理するイメージです。
貢献利益では、固定費を「個別固定費」と「共通固定費」に分類します。どちらも売上高と関係なく発生する意味では同じですが、各事業部に直接紐づくものを「個別固定費」と定義づけします。個別固定費は各事業部所属の従業員に関する給与賃金、共通固定費はコーポレート部門の本社建物に関する減価償却費、などが挙げられます。
それでは貢献利益の出し方・見え方について、数値例を用いて確認してみましょう。

貢献利益を出してみよう

さて、あなたはA社経営企画部1年生です。A社はファミレス、居酒屋、喫茶店チェーンを営む中堅飲食業です。顧客ニーズの多様化もあり売上高は頭打ち、利益は下降気味。今回あなたは各事業の採算性を可視化すべく、貢献利益に基づき各事業の評価を行うよう指示を受けました。

1) 貢献利益の算出

先ほど申し上げた通り、貢献利益を算出する考え方は実際にはCVP分析と殆ど同じであり、固定費の分け方が少し細かくなるだけと思ってもらって大丈夫です。恐れるに足りません。
具体的には、①費用を売上高との相関性に従い固定費と変動費に分解する、②固定費を事業部門との関係性から個別固定費と共通固定費に分ける、③限界利益(率)・貢献利益・営業利益を算出する、といった流れです。
一部繰り返しになりますが、この固定費と変動費の分解についても、個別固定費と共通固定費の分解についても、会計基準等に明確なルールが定められているものではありません。定義を満たす合理的な方法を決めて社内でコンセンサスを取り、継続適用すれば問題ないわけです。

2) A社各事業部の貢献利益

A社の場合、①勘定科目の分類に従い固定費と変動費を分解し、②ファミレス等各事業部で発生する費用のうち変動費以外を個別固定費、各事業部とは独立した本社部門の費用全般を共通固定費、と分解しました。③算出された結果は以下の通りです。

色々な利益や費用が算出されましたね。この各事業部の損益をどのように評価していけばよいか、次に考えていきたいと思います。

3) 事業部の損益をどう評価すべきか

A社の事業部別損益について、参考までにアプローチを2つ申し上げます。管理会計の枕詞になりますが、分析の考え方は一つではありません。ポイントは「社内のコンセンサス」「継続適用」です。
まず一つ目は、「限界利益率」です。当然のことながら限界利益率が高いほど売上増加による限界利益増加幅が高いです。この結果、増販がより利益に寄与する(=より利益の伸びしろがある)事業部はどこか、を捉えることができます。成長局面において、どの事業部の成長にリソースを注ぐべきか検討するとき等に有効と考えられます。
たとえばA社で考えれば、喫茶店事業部が限界利益率63%と最も高い水準であり、より拡大戦略を推進すべきと評価できます。
そして二つ目は、「貢献利益額」です。こちらは「率」ではなく「額」を見ています。すなわち、貢献利益額が大きいほど、現在のポジションとして全社的な利益獲得に貢献しているといえます。シンプルですね。成長の止まった縮小局面において、事業のリストラクチャリングを検討する際にどこから着手すべきか考える指標となると考えられます。
たとえばA社で考えれば、ファミレス事業部は貢献利益額が最も高く、限界利益率は低いですが利益規模を維持する上では重要と評価できます。

貢献利益に照らした意思決定

貢献利益の見方はなんとなくイメージつきましたでしょうか。ではA社の場合、売上高が頭打ちの中で全社の利益を再び成長させるためにどうするか。基本的な考え方を下記します。

1) 限界利益率を上げる

原材料調達先や外注先を見直すなどにより、限界利益を底上げするというアプローチです。各事業部において対応可能であり、店舗レベルのカイゼンの他事業部全体としての取組みとして推進することが考えられます。

2) 個別固定費を減らす

店舗の賃料を見直したり、店舗当たりの標準的な人員配置を見直したりすることで、各事業部に管理責任のある個別固定費を削減するアプローチです。上記(1)と同様、各事業部において検討可能です。

3) 共通固定費を減らす

本社機能を集約し建物を処分することで減価償却費を削減し、各事業部の管理外である共通固定費減らすアプローチです。こちらは各事業部の貢献利益は改善させませんが、営業利益を改善させるものです。上記(1)(2)とは異なり各事業部には意思決定の権限はありません。

最後に

会社の属する業界の動向や各事業部の状況に応じて、どのアプローチが適切かは異なります。A社においても、居酒屋では店舗人員が過剰である一方、喫茶店ではワンオペ状態が蔓延しているかもしれません。数値に囚われすぎず、各事業部の実態のつかむためのツールとして距離をおいて眺めるようにしてください。

この記事を書いたライター

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