会社設立時には、金銭による出資の他にもモノによる出資が可能です。モノによる出資は現物出資と呼ばれます。このモノには不動産も含まれることから、不動産による出資を行うことも可能です。ただし、会社設立時に現物出資ができるのは会社の発起人に限られます。この記事では、不動産による現物出資について解説します。
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株式会社を設立するときには、資本金が必要になります。資本金は全額を現金で払込するのが一般的ですが、現物出資として資産価値のある現物を資本金の一部に充てる方法もあります。現物出資とは、金銭でなく、不動産、債権などを出資して会社の設立や増資を行う方法です。
ただし、株式会社の設立に際し現物出資できるのは、会社の発起人に限られます。(会社法34条、会社法63条)。また、現物出資に関する事項は、必ず定款にその記載をしなければならないとされており、記載が無い場合は現物出資の効力が生じません(会社法28条)。
現物出資に関する事項として定款に記載する事項は次のとおりです。
会社に対する出資は通常はお金で実施されますが、一定の手続きを経れば、金銭にかえて「モノ」を出資することも可能です。この「モノ」を出資する行為は現物出資と呼ばれますが、この場合の『モノ』には、車、パソコン、機械、備品、土地、建物、有価証券、金銭債権、特許権、ソフトウェアなど、様々なモノが含まれます。金銭出資と現物出資を混合させることも可能で、金銭出資100万円、現物出資100万円の合計200万円の出資とすることもできます。
この記事では、現物出資のなかでも、不動産による現物出資について説明していきます。
個人の法人に対する不動産の現物出資は、資産の譲渡と見倣されます。したがって、不動産による現物出資は、譲渡所得として所得税の対象となります。
資産の譲渡する際に、その対価として受け取った金銭以外のモノを収入する場合について考えて見ましょう。その場合、収入の金額は受け取ったモノの価値となります。つまり、そのモノの価値は、取得等時の価額(時価)になるというわけです。したがって、現物出資した不動産の収入金額も、取得したモノの時価になります。
このモノには、不動産・株式などが含まれます。
以上は、「モノ」を現物出資したケースの原則的な考え方となりますが、次は不動産による現物出資に焦点を絞って説明していきましょう。
不動産による現物出資について、税法には明確な規定があります。それは、不動産を現物出資した場合は、資産の譲渡と見倣されるので、所得税の課税対象になるという規定です。
不動産を現物出資した場合、その不動産を譲渡したと見倣されます。したがって、出資した不動産の時価ではなく、現物出資してその対価として受け取った株式や出資持分の時価が収入となり、この収入額が所得税の課税対象になるというわけです。
たとえば、土地や建物を売ったとき、実際の売却価額を収入金額として、譲渡所得が計算されるのが原則です。取得原価1,000万円、時価1,500万円の土地を現物出資して、3,000万円という対価を株式で得た場合、3,000万円が譲渡所得になります。
ただし、土地や建物の売却先が法人であり、しかも売却価額が時価の2分の1を下回っている場合は、売った土地や建物の時価が収入金額として譲渡所得が計算されます。この但し書きについて具体的な数値を用いて説明すると、会社の代表者(個人)がその会社に時価1億円の土地を4,000万円で売った場合は、売った金額(土地の価値)4,000万円ではなく、1億円(土地を譲渡した結果として受け取った額)が、譲渡所得になるというわけです。
すでに説明したように、株式会社の設立に際し現物出資できるのは、会社の発起人に限られます。(会社法34条、会社法63条)。したがって、会社設立時には、会社の発起人以外は不動産による現物出資を行うこともできません。
そして、発起人は、定款に500万円を超える現物出資についての記載又は記録がある場合には、定款の公証人の認証の後遅滞なく、不動産による現物出資について調査させるため、裁判所に対して、検査役の選任の申立てをしなければならないことになっています(会社法33条)。また、会社の設立時の取締役は、その選任後、遅滞なく、500万円を超えない現物出資財産等を調査しなければならないことになっています(会社法46条)。
なお、検査役(弁護士等)は、出資財産の価額が適性か否かの調査をします。調査手続きは、非常に煩雑で長い時間がかかるのが普通ですが、下記のいずれかの条件を満たす場合には、この手続を省略することも可能です。
なお、すでに説明したように、土地、建物などの不動産・有価証券・自動車などの現物出資は、所得税、消費税法ともに売買 (個人から新設会社に対する譲渡)として取り扱われ、個人に課税される場合があります。
会社設立時には、不動産による現物出資を行うこともできますが、その場合、会社法上、様々な規定があることをきちんと認識しておく必要があります。特に、会社設立時においては、不動産による現物出資は、発起人しかできない点には注意が必要です。