上場企業が上場廃止基準を下回った場合、上場廃止となります。上場廃止にはデメリットだけでなく、コストカットや経営スピードの向上などといったメリットにも注目。MBOなどによって戦略的に上場廃止をする企業もあります。
今回は上場廃止をする際の株式会社にとってのメリットについて解説していきます。
上場廃止になると証券取引所での取引が停止となるため、ネガティブなイメージを抱く方も少なくないでしょう。
たしかに、株式を非公開にすることにより株式市場での取引が制限されて資金調達の手段に制約がかかるというデメリットがあります。
しかし、上場廃止にはコストカットや経営権を支配しやすくなるというメリットもあり、企業の経営状況によっては成長を促進する効果も期待できるのです。
上場廃止に関する基本的な説明は、以下の記事も合わせてご確認ください。
株式を公開していると、投資家に情報を提供するためにIR情報を整備しなければなりません。
また、監査法人への監査コストや内部統制を維持するためのコストなど様々なコストがかかります。
株式会社が上場廃止した場合、これらのコストをカットできるというメリットがあります。
また、これらの作業に充てていた人員コストを他の業務に充てることができるため、新たなビジネスとなることも期待できるでしょう。
株式公開をしていると株式、つまり企業の経営権を自由に売買できる状態にあるため、企業買収のリスクが付きまといます。
株主の権利には議決権がありますが、株式公開をしていると議決権を社外の人間が持つリスクがあります。
上場廃止によって株式を非公開にすることで外部から経営に関与されるリスクを排除することができるのです。
株式を公開していると、株主総会等により株主の意向を問わなければならないため、企業の意思決定の足かせとなる場合があります。
独自の戦略などで反発が予想される事業を拡大したい場合を想定してみましょう。
上場しているよりも株式非公開をしてスムーズな意思決定ができる状態が好まれる場合があるのです。
このように、上場廃止によって経営権を支配することによって企業の意思決定がスムーズになるというメリットがあります。
上場廃止のメリットを紹介していきましたが、上場廃止には注意点も付きまといます。
上場廃止を判断するべきかどうか、メリットとデメリットを比較しながら決断する必要があるのです。
あらためて上場廃止の注意点を見ていきましょう。
上場を廃止することによって株式非公開となるため、株式市場における株式売買に制約がかかってしまいます。
本来、株式公開は資金調達をスムーズにするために行われます。上場廃止によって株式を非公開することによって資金調達に制約がかかることで、企業の財務戦略面でも不具合が生じるでしょう。
上場廃止と聞くと取引先や顧客に対しての影響も少なくありません。
世間的な信用やブランドイメージを失墜することにより、取引先との交渉や金融機関からの融資に影響が出ることもあるでしょう。
上場廃止をする場合は、こういったイメージ戦略が経営に与える影響も考慮に入れて経営を進めていく必要があるでしょう。
一度上場廃止しても、その後再上場するという戦略をとることもできます。
企業がおかれる状況は日々変化するものであり、変化する状況と共に上場廃止をするべきか、上場するべきかという判断をしなければなりません。
MBO(マネジメント・バイアウト)とは経営者が株式会社を買収して経営権を握るという財務戦略です。
上場していると複数の株主が経営の議決権を持つことになりますが、MBOによって経営権を集中することで自由な経営を実現できます。
MBOは経営権を集中することでスリムな企業経営を行うことが目的の1つです。
MBOによって事業を成長していき、更なる資金調達が必要となるタイミングで再上場するという選択肢もあります。
MBOなどにより上場廃止をした後に再上場を果たしたというケースも少なくありません。
再上場を果たした企業の代表例として挙げられるのが「株式会社ワールド」の事例です。
アパレルメーカー業界大手の「株式会社ワールド」はMBOによって上場廃止(株式非公開)した後に再上場しています。
1959年に創業したワールドは国内アパレルメーカーの大手企業として活躍していましたが、2005年に経営陣による株式買収(MBO)を行いました。その後、2018年に東証一部へ再上場を果たしています。
ワールドは再上場の際に「MBOの目的であったプラットフォームの確立を成し遂げた」と述べ、再上場することによって更なる成長ステージへ挑戦することを示しています。
参照元:2018/09/28 株式上場のご挨拶|株式会社ワールドHP
上場廃止によるメリットについて見ていきました。
上場廃止はネガティブに聞こえるかもしれませんが、企業戦略においてメリットになることもあります。上場廃止によるデメリットと比較検討して適切な企業戦略に繋げていくことが重要です。