株式会社が上場し続けるためには一定の基準を満たしている必要があり、上場廃止基準を下回った場合は適切な株式の売買が行われなくなってしまいます。上場廃止基準は株式市場によって異なるものです。
今回は株式会社の上場廃止基準や上場廃止に関わる企業財務への影響について解説していきます。
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株式会社は東京証券取引所(東証)などの市場において売買が行われていますが、これらの取引所で定められた上場廃止基準をクリアしていなければ上場廃止となってしまいます。
上場廃止には取引所によって基準が定められていますが、具体的な項目を見ていきましょう。
上場廃止基準の主な項目としては、「株主数」「流通株式数」「流通株式時価総額」などのように、企業規模として一定の水準を求める事項、「上場契約違反等」のように企業として法令等を遵守している事項などがあげられます。
日本取引所グループにおける上場廃止基準は以下の項目の通りとなっています。
出典:JPX日本取引所グループ
上場廃止基準は株式市場によって異なるものです。
例えば、「東証一部」では株主数が400人、流通株式数が2,000単位と設定されていますが、「JASDAQ」では株主数が150人、流通株式数が500単位と設定されています。
このように、株式市場の規模によって上場廃止基準が異なるので、上場をする際には上場廃止基準を参考に入れるといいでしょう。
上場廃止基準が設定されている理由は、投資家が安全に株式を売買できることを確保するためです。
企業が法令などを遵守して健全な経営を行い、正常な株式市場で株式を売買するために上場廃止基準が定められています。
株式会社では株式を売買する投資家が安全に取引できるため、上場企業が健全な経営を行うことを監視します。
そのため、株主数や上場時価に一定の基準を設け、適正な企業内示の開示などを確保するために上場廃止基準を定めているのです。
株式市場の上場契約には「企業行動規範」が設定されており、その中には流通市場に混乱をもたらすおそれのある事項(株式分割、株式無償割り当て)を禁止することなどが設定されています。
健全な株式市場で株式を売買するべく、上場廃止基準が設定されているのです。
出典:JPX日本取引所グループ
経営成績の悪化などの事由で株式が上場廃止になると、該当する株式は売買停止の状態となります。こうなると、適切な資金調達ができなくなるというデメリットがあります。
上場廃止基準を下回った会社は「整理銘柄」あるいは「監理銘柄」として設定され、株式の売買に制約がかかるのです。
整理銘柄とは、上場銘柄が上場廃止基準に該当することが確認され、上場廃止が決定された銘柄のことです。
整理銘柄に指定された銘柄はその時点から1ヵ月間株式の売買が可能ですが、1ヵ月後に上場廃止となります。
監理銘柄とは、上場銘柄が上場廃止基準に該当する恐れがあるときに証券取引所から指定される銘柄のことです。
監理銘柄は整理銘柄に指定される前段階であり、投資家に上場廃止基準に該当する恐れがある旨を周知するものです。
そのため、監理銘柄に指定された段階では「整理銘柄」とはならず、引き続き株式売買は可能です。
株式が整理銘柄や監理銘柄に指定された場合、多くの投資家がネガティブな反応を示して株価が下がるというケースが多いです。
しかし、上場廃止が戦略的なものであった場合はこの限りでなく、必ずしも株価が下がるとは限りません。
上場廃止がすぐに株価に影響するわけではなく、企業の経営状況や財務状況などが株価に影響するのです。
上場廃止と聞くと、ネガティブな理由をイメージされるかもしれませんが、ポジティブな理由で上場廃止を選択する場合があります。
MBOなどの財務戦略によって株式会社を上場廃止することもあります。
MBO(マネジメント・バイアウト)とは経営者が株式を取得することで経営権を握るという財務戦略のことです。
MBOは企業の経営権をひとまとめに支配するなどの理由で行われるため、財務戦略の面でMBOという手段をとることがあります。
株式会社の上場廃止基準や上場廃止に関する財務への影響などについて見ていきました。
上場廃止基準は投資家が安全に株式を売買することを担保することを目的にするものであり、上場企業においてはこれらの上場廃止基準を遵守して企業経営を行わなければなりません。
しかし、MBOなどによる戦略的な上場廃止をする企業も増えており、上場廃止をすることにメリットを見出すケースも少なくありません。
自社の企業規模や財務状況を勘案して、上場廃止基準をチェックしましょう。